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マジック・ツリーハウスともののけ島のナキ

もう10日ほど前になるが、フリーパスがあるなら下見をしてきてと頼まれ、
マジック・ツリーハウス』なるアニメ映画を見に行った。
同僚の娘さんが原作のファンだが、映画が面白いかどうかと。
映画は安くはない。子ども連れで出かけるのは結構贅沢だ。
平日を切り詰め、贅沢な時間を楽しむのは、非現実の世界への逃避、
もしくはTVでは得られない、あの映画館独特の世界を楽しむため。



読書も同じで、字面や行間、挿絵から得るものは画像とは異なる。
自分自身の空想の翼を持たぬゆえ、映像ばかり見ると、
それはそれで問題というわけで・・・。
そんなこんなで、1月間のフリーパスで見たアニメ映画は、
前評判の高かった「泣いた赤鬼」リメイク『フレンズ―もののけ島のナキ』と、
この『マジック・ツリーハウス』二つだ。
一つは名作童話からヒントを得たもの。一つは外国の児童文学から。
共に骨子はオリジナルストーリーではないという共通点がある。


恐竜の谷の大冒険  (マジック・ツリーハウス (1))

恐竜の谷の大冒険 (マジック・ツリーハウス (1))


泣けるのは勿論、原題アニメ版「泣いた赤鬼」であり、
日本人の琴線に触れるようにしつらえてあり、絵柄も長寿アニメ、
おじゃる丸』を連想させる馴染み深いものだ。
かたや、少々抵抗のある絵柄なのだが、慣れればまあ大丈夫。
それよりも、魔法ファンタジーの世界を現代とリンク、
読書好きの少年が活発な妹と共に、本の世界を冒険。
異世界への入り口は不思議な「マジック・ツリーハウス」という設定。


friends もののけ島のナキ オリジナル・サウンドトラック

friends もののけ島のナキ オリジナル・サウンドトラック


片方が友情アニメなら、片方は兄妹愛アニメ。
それにしても、魔法の背景に魔術師マーリンやモルガン・ル・フェイとは。
冒険、異世界に移動する外国児童文学の名作は『飛ぶ船』だと思うが、
どう考えてもその亜流かなと感じながら、鑑賞。
小学校低学年には充分楽しい作品ではある。
本を通じての異世界探検、主人公の成長譚とリンク、そういうお約束。

friends もののけ島のナキ (ジュニア文庫)

friends もののけ島のナキ (ジュニア文庫)

泣いた赤おに (日本の童話名作選)

泣いた赤おに (日本の童話名作選)


2002年に初版されて350万部という世界的に愛された・・・。
娘から聞いたことはなかったが、彼女も読んでいるのだろうか。
それにしても、年々児童書の世界も魔法ものが実生活を浸食?
いや、この手の本が増えてきたなあと改めて思う。
ハリポタの影響? 児童書は元来そういうもの?
マジックツリーハウスの世界は、色々広がっているらしいが・・・。


アニメ技術的な面からいえば、明らかに『もののけ島のナキ』が上で、
大人でも泣ける作品。日本人には受け容れやすい設定。
でも、名作童話をこういう形にされると、これはこれで戸惑う。
異端を受け容れる過程はこのような犠牲を強いられるものだと、
子どもに植え付けることになりはしないか。
何か新しいものを得るためには、犠牲は付きものだと。


より友情に厚く、心優しいものの方が、弱いものを庇って傷つく。
恐れられる異形のものは、誤解されている。
集団は少数を圧迫する。
幼い無垢な心が周りを溶かす。
その公式が見事なほど使われているので、実写版と同じく、
「泣く子と地頭には勝てぬ」、「子どもと動物には勝てぬ」作品構成。
現実の問題に対処しているリアリティとしては、「マジック・ツリーハウス」か。
兄妹、友達、親子関係。学校行事に危機回避、役割獲得等。


いずれもお金の掛かった、道徳の要素が見え隠れするアニメ。
子どものことを思って作っているかも知れないけれど、
少々鼻につく仕掛けが、どうも。
映画館の画質を考慮するなら、見ておくべきは「もののけ島のナキ」。
ストーリーを把握するならDVDで充分なのが「マジック・ツリーハウス」。
大画面で見る必要のない画質。
そんなふうに感じた二作。


むろんフリーパスがなければ、両方とも映画館で見る気はしない。
従って娘とも見てはいない。
原作、原典を当たってくれる方が大切。
そんなふうに感じたかーちゃんだった。

とぶ船〈上〉 (岩波少年文庫)

とぶ船〈上〉 (岩波少年文庫)

とぶ船〈下〉 (岩波少年文庫)

とぶ船〈下〉 (岩波少年文庫)