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スカイフォール

夜中近く思い立ってシネコンレイトショーに行く。
スカイフォール』を見る。
007シリーズ50周年を記念した作品。
なので、今までの作品に対する思い入れ、
オマージュ溢れる作品だった。


そのオープニングの緊迫感・躍動感、
ハラハラドキドキで見せるアクションシーン、
え? のっけからこうでどうなるの? という場面から歌が流れ、
映画全体をイメージした映像が見る者を異世界に誘う。
昔懐かしいサイケデリックな映像とは一線を画するものの、
BGMとして流れる歌声の肉感的な雰囲気が、あの年代を連想させる。


MI6本部で世代交代が起ころうとしている。
政治的な責任問題、年齢的な引退の時期、
職務職責への思い入れ、サイバーテロ
追い詰められるM。そこへ死んだはずのボンド登場。
渋い演出。錯綜する過去、人間関係、諜報活動の在り方、
諜報部員として問われる能力、「現場職員」として役に立つのか、
認めて良いのか、仕事を任せられるのか、
危ない橋を渡る一蓮托生のMとボンドの
一言では語りつくせないこれまでの年月、関係、そしてこれから。
そこに絡む事件の背景、人物。


ボンドガールがちらりと出てくるものの、甘い雰囲気にはほど遠く、
手強い敵の冷酷さ、しぶとさ、異様な執着の度合いが増していく。
安易に解決するように見えて、実は計算された内部への潜行、錯乱、
逃走、襲撃の、息つく暇もないほどの展開。


「最後の旅」とも言える逃避行にも似た囮作戦に、身を投じるMとボンド。
それは、係累を持たない、後腐れ無い捨て駒として養成された
諜報部員の過去、007の生まれ故郷の地。
自然豊かな湖沼地帯というよりは、
一歩間違えると凍った沼地に足を取られる、
自然のトラップに囲まれた殺伐とした世界。

何故か、幼少期の彼を知る留守番役が現れる所が渋い。
執事とまでは行かないが、
森番のような過去の守り役、家屋敷の管理人。
なけなしの武器、家にあるもので敵を迎え撃つ仕掛けを作る3人。
過去の全てを精算し焼き尽くすような炎、
死を暗示する墓碑のある古い礼拝堂、
怪我をして追い詰められた絶体絶命のM、
復讐を兼ねた心中を図ろうとする、かつての部下で諜報部員であった敵。
疑似母子関係のような愛憎を背景に、
最後に登場する真打ちジェームズ・ボンド


「私は正しかった(間違っていなかった)」と呟いて絶命するM。
涙を流しながら彼女の目を閉じる007。
この作品で高齢のジュディ・ディンチは役柄上の幕引きを行った。
女優業としてもそうするつもりなのだろうか。
デジタル世代とアナログ世代、若手と古株、才能と経験、
物語・作品の中でも映画の背景でも世代交代が進んでいく。


昔懐かしい思い出の小道具も華々しく活躍して壊されていくように、
演じる人間も活躍する役柄そのものも、
精神はそのままに、引き継がれることを祈りつつ、
消え去るもの、埋もれていくもの、しがみついて残る者。
新旧交代の狭間にあって思い悩む人間臭さを記念すべき作品に盛り込んだ意欲作だった。


失礼ながら20代程度の方にはこの作品の良さは分かるまい。
過去の一連の007ものを見ていなければ・・・。
最近の3,4作程度の007シリーズのファンでは掴みきれないだろう。
そう断言する自分が、この作品達よりも少しだけ長生きなだけなので、
大きな事は言えないかも知れないが。
スカイフォール』いい作品だった。


007/スカイフォール オリジナル・サウンドトラック

007/スカイフォール オリジナル・サウンドトラック

Best of James Bond 50th Anniversary

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