1200年の時を経て
関西に住んでいる人間にとって、高野山比叡山はちょくちょく耳にする聖地。
中学校の歴史の時間に習うばかりでなく、林間学校の場、避暑の地、観光地、
宗教のイメージはそれほど前面に押し出されているのではなく、
生活の中に自然に溶け込んでいて、普段意識することは少ない。
たまたま2大宗派の聖地が関西にある。そんな感じだ。
何しろ関西は奈良京都も含め寺社は多い。数多い神社仏閣の中で、
どういうわけか、比叡山延暦寺は滋賀県にあり、(よく京都府と間違えられる)
高野山金剛峰寺は和歌山県にある。(大阪府だと思っている人も多い)
関西に住んでいる人間も間違うくらいだ。
その比叡山延暦寺、天台宗の座主が高野山金剛峰寺を訪れ、
空海こと弘法大師の誕生日を祝う会(弘法大師降誕会)に出席した。
1200年の歴史の中で画期的な出来事。初めてのことなのだと言う。
ラジオから流れるニュースに耳を傾けながら家路を辿る。
「狭い日本、そんなに急いでどこへ行く」と言われる小さな国の中で、
そんな断絶、同じ仏教徒の中の断絶があったなんて驚きだ。
滋賀と和歌山、決して遠いという距離ではない。
北海道と九州ならいざ知らず。
遙か昔、唐と呼ばれた中国に出向いて学んだ高僧の開いた宗派、
その対立等についてのつまびらかな事は、庶民にはわかりかねる。
その庶民からかけ離れた理念・宗教上の見解の違いが1200年にも渡る
確執が存在したなどと、本当に信じられない。
イスラエルやパレスチナではあるまいし、「確執」ですと?
非公式の交流はあったようだが、記録には残っていないのだという。
お互い研鑽し合う中ではなく単に張り合っていたのだとしたら、
なんと勿体無い話。今回のニュースが大々的に報道されている、
そのこと自体がこの21世紀において不思議。
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天台宗座主が高野山参拝 1200年の歴史上初、相互訪問へ 2009.6.15 11:08
(産経新聞ニュースより)
15日午前、和歌山県高野町 (竹川禎一郎撮影) 比叡山延暦寺(大津市)の住職で天台宗の半田孝淳座主が15日、高野山真言宗総本山・金剛峯寺(和歌山県高野町)を訪れ、松長有慶座主らと「弘法大師降誕会」に参列した。天台宗トップの高野山への公式訪問は1200年の歴史上初めてで、金剛峯寺の役員は「今度は(参拝していただいた)お礼に訪問しなければならない」と話すなど、交流が深まりそうだ。
両宗派のトップ交流は、天台宗を伝えた最澄と、真言宗を伝えた空海がともに中国で仏教を学んだ間柄ながら、晩年に教えや修行の違いなどから絶縁状態になり、交流が途絶えたとされる。私的なトップ訪問はこれまであったようだが、記録には残っていないという。
今回の訪問は、半田座主と松長座主が宗教サミットなどで数回顔を合わせることがあり、半田座主が打診し、松長座主が高野山の最大行事に招待した。両宗とも「宗祖降誕会」があることから、金剛峯寺は「弘法大師降誕会」と名称を変更する気の使いようをみせた。
天台宗一行は、半田座主と濱中光礼・宗務総長ら13人。半田座主は大師教会大講堂の壇に上がり、読経が流れる中、花御堂にまつられた稚児大師像に甘茶ををかける灌沐(かんもく)作法を行った後、奥の院を参拝した。
真言宗関係者は「現在ではまったく確執はなく、今度はこちらがうかがうことになる。数年後には相互訪問できるだろう」と話し、天台宗関係者も「今回を機に交流が深まることは喜ばしい」と歓迎している。
宗教の世界、小難しいことはわからない。
比叡山と聞いても1度しか訪れたことが無い。あとは高校の教科書。
高野山は3度ほど訪れたことがあるが、そのうち1度は小学校の林間学校。
ちなみに昔習った『宇治拾遺物語』の「児の空寝」は、
なかなかユーモアに溢れる世界で、仏教めいた抹香臭さは無い。
今の時代はどのような日常が展開されているのか、知るよしもないが。
1200年の時空を超えてこれからどういう世界が広がっていくのか。
庶民の間に何が伝わるのか。仏教界の動きや如何に。
これも今は昔、比叡の山に児ありけり。僧たち、宵のつれづれに、「いざ、かいもちひせむ。」と言ひけるを、この児、心寄せに聞きけり。さりとて、し出さむを待ちて寝ざらむもわろかりなむと思ひて、片方に寄りて、寝たるよしにて、いでくるを待ちけるに、すでにし出したるさまにて、ひしめき合ひたり。
この児、さだめておどろかさむずらむと、待ちゐたるに、僧の、「もの申しさぶらはむ。おどろかせたまへ。」と言ふを、うれしとは思へども、ただ一度にいらへむも、待ちけるかともぞもぞ思ふとて、いま一声呼ばれていらへむと、念じて寝たるほどに、「や、な起こしたてまつりそ。幼き人は、寝入りたまひにけり。」と言ふ声のしければ、あな、わびしと思ひて、今一度起こせかしと、思ひ寝に聞けば、ひしひしと、ただ食ひに食ふ音のしければ、すべなくて、無期ののちに、「えい。」といらへたりければ、僧たち笑ふことかぎりなし。
[大意]
これも今となっては昔の話だが、比叡山の延暦寺に児がいた。僧たちが宵の手持ちぶさたに、「さあ、ぼたもちを作ろう。」と言ったのを、この児は期待して聞いた。そうかといって、出来上がるのを待って寝ないとしたら、(それも)よくないだろうと思って、片隅に寄って、寝たふりをして(ぼたもちの)出来上がるのを待ったところ、もう出来上がった様子で、(僧達が)わいわい騒ぎあっている。
この児は、きっと(誰かが自分を)起こそうとするだろうと、待っていると(ある)僧が「もしもし。目を覚まして下さい。」と言うのを嬉しいと思うけれども、ただ一度で返答するとすれば、(それも)待ってましたと思われたら困ると思って、もう一声呼ばれて返答しようと、我慢して寝ているうちに、「おい、お起こし申し上げるな。幼い人は、寝入ってしまわれた。」と言う声がしたので、ああ、困ると思って、もう一度起こしてくれよと、思いながら寝たまま聞くと、むしゃむしゃと、食べる音がしたので、どうしようもなくて、長い時間のあとに、「はい。」と返答したので、僧たちが笑うことはこのうえない。
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