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岸和田城公園の猿の死

新聞の片隅の小さな死亡記事。
朝から物憂くけだるい雰囲気の歌声とメロディーで始まるので、
私の好みではないNHKの朝ドラ『カーネーション』絡みの
話題作りが何かと多い岸和田のことだから、記事になったのか。
(ドラマそのものは戦争も扱い、コシノ三姉妹の母、
女の一代記で人気だそうだが、私の周辺は話題にもならない)


岸和田城公園の最後の猿が死んだそうな。
雄のキッキ。2001年に雌が死んだ後、ずっと一人暮らし。
最近岸和田城公園のの飼育場所から引っ越して、
市の中央公園に11月下旬に映ったばかりだったそう。
推定10歳代後半ということだそうだが。
もしかしたら、一度会っているかも知れないなあ。


そう、私も昔から知っている。
岸和田城公園には猿がいる。
幼い子どもの頃、よく岸和田に行った。
別に世間で有名なだんじり祭りを見に行ったわけではなく、
もとよりお城周辺はローカルな観光名所。神社もある。
子どもにとって、遠い動物園まで行かなくても、
身近にお猿さんが見られるのは楽しかった。


記憶があやふやだが、映画館か何かもあったような気がする。
何しろローカルな私鉄の急行・特急が停まる駅。
各駅しか停まらないような駅に住んでいた人間からすると、
岸和田は都会というか、大きな商店街があった。
親に連れられて親戚を訪問がてら訪れたお城のお堀端。
そこに猿が飼われている小さなスペースがあった。


猿山の猿。当時は随分沢山いたものだが、
年老いて、たった一匹になって、転居先での死。
人間でも住み慣れた所を離れるのは辛い。
ましてや、長年の一人暮らしで見知らぬ場所、土地。
慣れるどころか、弱るのを早めたのではないか。
年寄りに引っ越しはきつい。猿も同じだろう。

はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか

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お言葉ですが…〈4〉猿も休暇の巻

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娘が予定日を過ぎてもなかなか生まれてこない。
せっせと歩いた方がいいと、気分転換がてら岸和田城へ。
お城見学で階段を上り下りするついでに、お猿さんを見た。
それが最後の記憶。13年前の話。だから、記事に出ていた
お猿さん、キッキに会ったかどうかは不明。
でも、何となく寂しい。
子どもの頃から馴染んだ、あの景色はもうないのだなと思うと。


お城の側には高校もあって、大きなお腹を抱えた私が散歩している間、
のんびりとお弁当何ぞつまんでいる生徒たち。
お城が学校の外庭のような感じで、のどかでいいなあと思ったものだ。
今でも生徒たちは自由に出入りしているのだろうか。
普通お昼を校外に出て食べるなんて許されないのが当たり前。
でも、岸和田高校の生徒はお城を見ながら食事が出来る。
いいねえと思ったあの日を思い出した。


たった一匹の猿の死を報じた記事だけれど、
滅多に訪れない近隣の市の出来事だけれど、
小さな棘のように、目に飛びこんできた記事。
幼い頃の思い出の場所が、どんどん変わっていくのだと、
妙にセンチメンタルな寂寥感に包まれたひととき。

石の猿

石の猿