Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

死を扱った作品の思い出

メモリアルカウンセリングになんぞ、片足を突っ込む前に、
現場ではやらなくてはならないことが沢山あって、
人はとっくに動かざるを得ないのに、
全く整備されていないのは組織だよなとぼやきながら
本日も出張。役目上、立場上、一応。


出勤、出張、新任の頃の同期に久しぶりに会う。
現場の仕事の傍ら大学院に顔を出している。
2年後を目標に博士論文に取り組んでいるのだという。
偉いもんだ。もっとも彼の娘たちは2人とも大学生。
「今、勉強しかしたいことが無いんだよ」
「書きたいことが沢山あるんだ」恐れ入りました。
夏にまた会おうねと約束して、別れた。


さよならも言わずに逝ったあなたへ―自殺が遺族に残すもの

さよならも言わずに逝ったあなたへ―自殺が遺族に残すもの

自殺の危機とカウンセリング―自殺念慮への対応とディブリーフィング

自殺の危機とカウンセリング―自殺念慮への対応とディブリーフィング


水泳教室の娘を拾って帰る。26級に進級。蛙さんだねえ。
そのまま、予約時間を少し過ぎて病院へ。再度、血液検査。
私のどうしようもないだるさは、「肝臓」それも「脂肪肝」と
狙いを定めたようで、(わかっているけれど、悪化したか)
白血球も1万弱、GPT・GOT更に上昇。
とうとう土曜日腹部エコー。


脂肪肝の治療なんて、ダイエットしかないのに。
できると思ってるの? あーあ。
それ以外に何か見付かったらどうする?
子宮筋腫に憩室炎に十二指腸潰瘍に腎膿胞に
もういいってー。
時々痛くなり時々しんどくなり動けなくなりの繰り返しは。


体重だのBMIだのを気にするどころか、
「痩せすぎ」と言われていた時代もあった、思春期の頃、
私に影響を与えた作品。文学作品ではなくて申し訳ないが・・・。
萩尾望都の「トーマの心臓」十代半ばでは、これが一番。


私に、いわば「喪の仕事」を意識させた思春期の名作。
ワークショップのせいか、「トーマの心臓」が懐かしい。
友に、父に、母に、限りない愛を込め、喪の仕事。
死と再生で彩られる青春。

トーマの心臓 (小学館文庫)

トーマの心臓 (小学館文庫)

11月のギムナジウム (小学館文庫)

11月のギムナジウム (小学館文庫)


「これが僕の愛、これが僕の心臓の音。
 君にはわかっているはず」


1通の遺書を残して自殺したトーマ。遺書を受け取ったユーリ。
トーマに瓜二つの転校生、エーリク。ギムナジウムの青春。
転校した途端、死んだトーマと重ねて見られて戸惑うエーリク。
ユーリとエーリクを見守りつつ、自らの出生に悩むオスカー。
エーリクの母の交通事故死、義父の片足を失う大怪我。
ユーリがかつて受けたリンチ、心と体の傷。


死を巡るオムニバス、オマージュ、レクイエム、
トーマの死をきっかけに明らかにされる過去、
関係を築き上げ、結び直し、ほどき、再構築する。
思春期の繊細でしなやかな心と体、迷いと憧れ。


トーマが愛したユーリ、エーリクやオスカーに愛されるユーリ。
愛を拒んで「翼を失った自分」を悼み続けるユーリ。
亡き父の黒髪を祖母に疎まれながら、経済的な負債を背負いながら、
病弱な妹を慈しむ兄として、母の期待を背負う息子として、
何よりも「理想としての自分」を守ろうともがくユーリ。
ユーリの愛と苦悩。


ぞっこんユーリに惚れたけれど、後からオスカーも渋いなと思った。
父との血の繋がりを持たないオスカー。父を間接的に殺した母、
母を撃ち殺した父、父を裏切って自分を産んだ母、
父を裏切って母と結ばれた実の父、ギムナジウムの校長。
心臓を患い、死にかけた校長。
自分の愛情が、誰にも届かぬもどかしさに悩むオスカー。


「気付いてほしかったんだ」
「愛していた? 許していた?」
「死ぬほどに 愛していた?」


こういう問いかけを、心の中に深く刻み込まれて過ごした。
感情が醒めていく過程を、死にまつわる様々な感情、
死を取り巻く状況、交錯する人の感情、
思えば、ある意味リリカルである意味現実的な作品。
無邪気で純粋な愛情、激しい憎悪、人の心の二面性、人種差別、
何と沢山の要素が盛り込まれていたことだろう。


多くの結び目をほどいて行くのは、今一つ好きになれない
子供っぽく純粋で我儘な存在エーリクだが、
そういうキャラクターでなければ、気難しい積み木を
崩す暴挙にも出られないのだろう。
「変化」は理詰めでは得られないから。

訪問者 (小学館文庫)

訪問者 (小学館文庫)

半神 (小学館文庫)

半神 (小学館文庫)

メモリアルカウンセリング、モーニングワーク、
グリーフケア心理療法ホスピス
そんな言葉を知らなかった頃に、
死にまつわる作品によって死を垣間見る。
肉親の死に出会う前に、間接体験をし、吟味し、比較する。


たかが漫画と侮るなかれ。
「死」を扱うことで、如何に生きるかを扱う。
「生」「再生」を扱う。読者は登場人物に投影。
「死と再生」は再体験・追体験され、
読了でもってカタルシス
いや、はまりましたねえ・・・。(遠い目)


死と生と性。キリスト教圏の男子校を背景に持ちながら、
様々な生き方、様相を描き切った力量を今更ながら尊敬し、
物語の背景にある死生観を思い遣る。
ともすれば、生活の中で流されそうになる。
心の中にある碇のように、思い出は鮮やかに蘇る。
私を私に至らしめたもの、その思い出が蘇る。


日常の中の小さな出会いと別れ、
様々な誕生、成長、老い、病、それなりの生存競争。
葛藤、混乱、懊悩。解答も解決もなく、
御想像にお任せしますの物語のその後を、
今、今でも読みたいと思いながら生きている。
我ながら、センチメンタルであるが。

ポーの一族 (1) (小学館文庫)

ポーの一族 (1) (小学館文庫)

マージナル (1) (小学館文庫)

マージナル (1) (小学館文庫)