Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

父の吐血

夜中も相変わらず仕事。ぼちぼちしか進まない。
いずれにせよ、娘は2階、両親は1階で別々の部屋。
気配がわかる程度に離れて孤独に仕事の丑三つ時。
母の様子がおかしい。何々、夜中なのに父の部屋に電気。
(まだらボケでも家中電気を消しまくる母はさすが?)
いや、夜中のトイレじゃないの。
とりあえず、様子と見よう・・・。どれどれ・・・。
起き上がろうとしてベッドから落っこちた? じーちゃん。


意識が無い? 体は温かい、呼んでも返事が無い?
口を開け他まま、顔面は蒼白。血の気が無い?
下血? 何だか変? いびきはかいていない。
ベッドからずり落ちている父、・・・とにかく電話。
えーと救急車、「こちらは警察」? 間違えた!?
焦って、焦り過ぎて110番じゃなくて、119!
特に行きつけの病院も無い、
掛かり付けで診て貰っている持病も無い。
真夜中2時過ぎに、受け入れ先はどこに?


部屋に戻ると!? 父が空ろな目をしてベッドの下に座り込んでいる。
気が付いた? 違う、気が付いた? 何? スプラッタ・・・。
咳き込むというよりも身をかがめようとしてもかがめられない、
そんな感じで次から次へと口元から血が溢れて来る。
パジャマは既にに真っ赤。傍にあったタオルをあてがう。
レバー状の塊、固形の真っ赤なものと液体、
次から次へと溢れてくる、これは一体?
鮮血? ならば、まずい。バスタオルで体を包む。


サイレンの音。近づいてきた。外で誘導して玄関まで。
救急隊員が玄関に。父の寝室、父の姿が・・・無い。
さっきまで倒れていた人間が吐血したまま、忽然?
血の跡、点々・・・。嘘でしょ、冗談でしょ。
そんな体で一人で浴室!? シャワー!?
朝シャワーを浴びる父はここまで律儀な昭和一桁!?
血の付いたもの一式ビニール袋に詰めて、父と母を救急車へ。


されど搬入先見つからず、車内で待つこと数分。
3度目の救急車故、夜中に見知らぬ病院で放り出されて、
タクシーさえもなかなか捕まらなかった以前の苦い経験、
保険証、その他必要なもの一式抱えて車で後を付いて行く私。
白血病の少女が苦しむ姿を映像の中で見たのは数時間前。
今は、自分の父親の血まみれの姿が現実に。

高齢者の容態で迷ったときの医師・救急車を呼ぶ新常識

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思えば、肩が痛い背中が痛いと疲れを訴えていた9月末から、
滅多に飲まない痛み止め、滅多に貼らない湿布。
食欲が減ったのは年を取ったから、
疲れたというようになったのも、言って当たり前の年齢だから。
マッサージをして欲しいなんて、孫にせがむようになったのねと、
体調不良を察知しながらも、数時間までは離れで謡の稽古の父が。


発見後、救急車到着まで何分? 実際に出発するまでは?
倒れてから1時間以内には病院へ到着、まだ3時前。
暗い夜道、明るい救急入り口。医師・看護師・事務方3人が出迎え。
ご家族の方はこちらへと待合室で、どれくらい待っただろう。
およそ30分後、点滴4本全開で落としている、
血液が到着したら直ちに輸血しないと危ない。
説明を受け書類にサイン。
若くて明るい先生だなあ・・・。
暗い冷たい感じの先生じゃなくて良かったか。


「どれくらい出血しましたか」
「大丈夫ですよ。救急隊の人は、下血吐血には慣れてますから」
「ああ、自分でシャワーねぇ。吐血した後は、
ものすごくハイになる人が多いから、動けるんですよ」
「とにかく血圧が落ちているので、点滴してますが輸血が必要です」
色々言葉を掛けてくれるけれど、大丈夫なのか。
本当に胃腸の問題だけなのかどうか、心配。
父の既往は35年前の胃切除。約半分は切っているはず。
元々は十二指腸潰瘍だったけれど、結局は胃を切った。
けれどもタバコも酒も切れることは無く・・・。


「とにかく貧血がひどくて輸血しないと死んじゃいますから」
そんな軽い口調で話さなくても大丈夫。
それでなくても男性は女性より出血には弱いはず。
いや、もう別にとある宗教団体でもなんでもないんだから、
早く輸血してよ。「血液が到着するまで点滴で持たせます」
急いでサイン、それから待たされること、約1時間。
その間再度医師からの説明。検査は朝にならないとできない、
食道の静脈瘤だったら、次に破裂すると助からない。
胃の出血ならば、出血しているところを防げれば大丈夫。
駆けつけた家人に先に母を家に連れて帰って貰う。


4時半、父の輸血はまだ始まらないまま病棟へ。
それでも意識は少しあるよう。良かった。
思い悩んでもこれ以上できることは無い。
「気を付けて帰って下さい」の病棟看護師の言葉が優しい。
白々と明け始めた朝5時の道を戻り、寝室の清掃、洗濯。
何も知らぬまま健康にぐっすり眠っていた娘は、
父親が部屋にいるのでびっくりのお目覚め。
ある意味、この子供らしさが本当に救い。


長い長い一日が始まる。休みを取ることを算段して、
準備しないといけないかも。いつもより1時間早く出勤。
長い長い一日になりそう。

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