Festina Lente2

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シロの病気

老父が入院してしばらくすると、我が家の老犬の様子がおかしくなった。
ひがな、かわいがってくれる人間が居なくなると、
犬も調子が狂うのか、やはり忠犬なのか、
単に年のせいなのか、シロはがっくりと元気がなくなった。
しかし、誰に似たのか餌だけはしっかり食べる。
よかったと思いつつも、やはり父が好きなのだなあ、シロは。


のんびりと構えていられなくなったのは、シロが下血したから。
え? 我が家の飼い犬は、そこまで飼い主に似たのか。
律儀に一緒の病気になったのか? 吐血じゃないだけましか?
驚き焦る私。老父の入院中に私の世話が行き届かなかったのか?
あれ? 下血といっても我が家の老嬢に御しるしが?
そんなはずはない、今更そんなはずはない。
子を産み育てた頃は遥か昔。シロは既に14歳。
人間で言えばたいそうな「おばば様」なのだから。


そして入院中の父に報告すると、以前からそういうことが度々、
今回が初めてではないという。ええ!? そうなの?
予防注射時に健康状態をチェックして貰っているが、
今年も去年も獣医は「まだ生きてたんですか」と言ったとか。
体調不良で連れて行くと腎臓が悪いと言われ、薬を飲ませた。
今回は私が獣医に・・・、老父は俺が退院するまで連れて行くなという。
そんなあ。


ヨロヨロと、歩くのが億劫になりながらも、シロは持ちこたえた。
老父は自分が獣医へ連れて行くと言い張り続け、退院して翌日、
つまり、昨日すぐさま獣医へ。(幸い歩いていける近所)
血液検査をすると、はなはだよくない数値。
病名は「子宮蓄膿症」避妊手術をしていない雌犬のかかる病気。
子供を生んだ事のない犬や、中年老年の犬がかかる。
一番いいのは外科手術。しかし、シロは老体ゆえ手術を諦め、
服薬で様子を見ることになった。
病気になってもならなくても、年内持てばいいとまで言われたそう。
あんまりだ。

イラストでみる犬の病気 (KS農学専門書)

イラストでみる犬の病気 (KS農学専門書)


シロは水をがぶ飲みしていたわけでもなかった。
食欲も普通にあった。
ただ出血はなかなか止まらない。
犬にもこんな婦人病があるなんて、知らなかった。
今までこんな病気になった犬はいなかった。
(オスはもちろんならないけれど)
今まで飼った犬でシロほど長生きした犬はいなかった。
老衰や熱射病で亡くなった犬もいたし、
悪いものを食べたのかどうか、急に亡くなった犬もいたけれど。


でも、シロは・・・。避妊手術を受けていなかった。
何匹も子供が生まれて、その度に貰い手を捜して回った。
多くの子供たちのうち、一匹残したオスは、
私が娘を身籠っている時、どういうわけか肝臓病に。
一命を取り留めたものの、盛りの付いた時期に
繋いであった所から逃げ出し、それっきり。
なので、娘の思い出の中には少ししかいないチャー君。


シロはたった一人残された何度も母となり、
女傑として、我が家の安全を守る番犬として過ごしてきた。
飼い主と同じように年をとり、
実際、飼い主よりも年をとってしまったらしく、
後どれくらい長生きしてくれるか・・・というところまで来た。
今掛かっている病気を知っても、どうすることもできない。


ガレージに車を止める音がすると跳んできて、尻尾を振る。
門まで迎えに来る。当たり前のように過ごしてきた日々。
それがこの夏頃からなかなか出て来ない。
体を動かすのが億劫になってきたのは年のせい、
そう思っていたけれど、実は違っていたのだ。
涼しくなってきた季節の中で、
老いて抵抗力を失った愛犬の病気に気付かず、
老父の入院すったもんだの陰で、かわいがってくれる人の不在に
一気にシロは気落ちしたのか。
(かーちゃんは仕事なんだよ、シロ)


犬小屋の中でじっとして動かないシロ。
おしめは嫌がって取ってしまうシロ。
掃除して取り替えた新しい御布団。
コーヒーの香りが微かに残る麻袋の上が気にいったよう。
鼻の頭はまだ湿っている。ご飯を食べる元気がある。
よろよろ歩くとバランスがおかしい。腰から砕ける。
すとんとお尻をついてしまう。それは年のせいではなく、
病気が隠れていたなんて・・・。
まだ食欲があるからまし。獣医はそう言ったそう。
餌に混ぜられた薬を素直に飲んで、おとなしくしているシロ。
家族全員が揃ったのを安心しているよう。


シロ、シロ、おじいちゃんも帰ってきたからね。
安心して。家族みんなこっちの家にいるからね。
パパも美味しい餌を買ってきたよ。
大好きな鳥の骨も用意しているよ。
シロ、シロ。元気になろうね。

獣医からもらった薬がわかる本

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臨床獣医師が書いた老犬との暮らし方―痴呆・病気・ケアの正しい知識

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