まんがで読破
「読書の秋」というには余りにも申し訳ないのだが、
娘と2人で漫画を読んでいる。というか、改めて漫画で名作を。
せっかくの日本世界の古今東西の名作文学も、換骨奪胎が行き過ぎれば、
ただの悪趣味に堕してしまうかもしれないのだが、
絵の下手なのはご愛嬌。
解釈とデフォルメがいい加減なのは許せないが、
「漫画で読破シリーズ」を図書館から借りてきて、娘と読んでいる。
以前から色んな作品が漫画化されていたのは知っていたが、
最近、近所の図書館でとみに目に付くようになってきた。
無論、小学校5年生の娘はまだまだ原作には至らないが、
お互いの共通の話題の種には丁度いい。
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「たかが漫画、されど漫画」の漫画先進国、日本である。
名作文学を漫画で読むに如くはないが、夜の貴重な時間を、
このような軽い読書で過ごそうという訳ではない。
通院の地下鉄の中の読書にもってこいなのだ。
とにかく老眼となった今、読書用眼鏡等としゃれてみても、
小さい字の羅列は実に疲れる。しかし、私にとって自分が運転しない移動、
つまり公共交通機関内で過ごす時間は、貴重な読書タイム。
されど、肩が凝る読書や本格的な読書はもうできそうにない。
急いで読み飛ばす「(眼)リキ」が持たないトシなのだ。
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そんな時、漫画は実に便利だ。あっさりと読み飛ばし、
どんどん読み進み、あっという間に読み通すことができる。
無論いい年した人間が電車内で漫画の文庫本を読んでいるというのは、
甚だ勇気の要ることではあるが、そこは漫画大国日本。
大目に見てやって欲しい。
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というか、フランスでよもやプルーストの『失われた時を求めて』を漫画化したり、
イタリアでダンテの『神曲』をプラトニック恋愛漫画にしたり、
『若きウェルテルの悩み』を抑鬱傾向の強い青年心理に特化して、
自殺までを描く漫画にするなどと、ゲーテといえど、びっくりだろう。
重いテーマ、読みにくいテーマ、取っ掛かりの難しい大長編、
日本が世界に誇る古典『源氏物語』だって、大和和紀の漫画、
『あさきゆめみし』で読者を増やしたようなものだ。
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というわけで、トルストイ『戦争と平和』『カラマーゾフの兄弟』、
スタンダール『赤と黒』や島崎藤村『破戒』といったものまで、
漫画で読破シリーズで読んでいる。
自分が原作を読んだのは、人生の何たるかも知らぬ、
青臭い文学少女もどきの大昔の頃だ。
万博が終わり、バブルが始まるまでの10代から20代に掛けての、
子供の頃のように粗筋だけ追っていればいい読書ではなく、
少々悩みながら本を読んでは、気に入った箇所を抜き書きなどしていた時代の読書時代。
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背伸びしてショーペンハウエルやロマン・ロランなど読みつつも、
何をどこまで理解していたのかわからなかった時代。
それでも、いたくヘルマン・ヘッセには惹かれ、
同じような読書仲間を見つけては「我が同志」と惚れこんで、
文学談義、文学論まがいにうつつを抜かした頃の、
恥ずかしくも懐かしい頃の読書と重なる名作の数々。
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今となってはどんな思いで読み込んでいたのか、
思い出すのも恥ずかしいが、さりとてもう一度本を手に取り、
じっくり腰を据えて読むには時間が足りない、根気も体力も足りない、
そんな今日この頃の私にとって、安易にのめりこめる、
お手軽読書といえば言えるだろう。
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何しろ笑おうが泣こうが、怒ろうが拗ねようが、
何かにつけても身近に漫画があった世代、
アニメ世代よりは年を取っており、貸本世代よりは若い、
生まれた時から手塚漫画、アニメで育ち、
思春期をカラーで彩られたTV漫画にどっぷり浸かって、
少年マガジンや少年キング・サンデー、チャンピオン、
少女フレンドやマーガレット、りぼんや花とゆめ、
今も生き残る雑誌の創刊の頃から知っている世代なのだ。
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漫画が読書世界に文字と等しく食い込んで育った人間が、
腹ごなしにお菓子を齧るように、漫画を読む。
それが当たり前の私にとって、哲学や心理学と同等に、
心に響く漫画作品があるのも確かで・・・。
だからといって、古今東西の文学史に輝く名作を、
漫画で読もうとは思ってはいなかったが、
これは、これなりに面白い。
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私は落書きを書くような気持ちで気軽に読む。
しかし、このシリーズで読んだだけで、
一生の間にただの一冊もこれらの原作を読むことなく生きていく、
そんな人とは余りお近づきになりたくないことも確かだ。
というわけで、安易な読書ではあるのだが、
底の抜けたバケツにだけはなりたくない、
まだまだ水が汲める、役に立つ脳みそであってくれよと願いつつ、
かつての記憶を呼び覚ましつつ、新たに思うことはそれなりに、
安易な読書をしている、今日この頃だ。
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