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クールベ展

勉強会の後、美術指南と仰ぐブログの記事に触発され、
大丸梅田店の「クールベ展」を観に行く。
軽いぎっくり腰に湿布と痛み止めで乗り切ったこの3日間、
少々無理してでも観に行きたい、今。
転勤したらこんな心の余裕は持てない。


最近とんとご縁がなくなっていた大丸ミュージアムだが、
リニューアルして16階という場所でのオープン。
なかなか力を入れた展覧会だった。
照明も内容も配慮されたものだったが、
作品案内・解説の表示板の取り付け位置が低くて読み辛く
傷めていた腰がやはり痛くなってしまった。


さて、クールベバルビゾン派と共に嫌というほど観てきたはずなのに、
今回非常に間近に作品を見ることが出来たせいなのか、
特別に今回の作品の展示内容のせいなのか、
自分の記憶の中のクールベ作品とは隔たりがあり、
その違和感と共に鑑賞することに。


こんな風に自然を描く人だったのか、
このように絵の具を塗り重ねる人だったのか、
こんな暗い色を使う人だったのか、
こんなに風刺の的になり、揶揄される人物だったのか、
こんな一生を送った人だったのかと、驚きながら鑑賞。


そもそも、私は彼のことを余りにも知らなかったのだ。
ミレー・コローと常にセットになっている印象が強いクールベ
おそらく以前から「ついでに鑑賞」してきたに過ぎなかった、
彼個人をまじまじと鑑賞したことなど実際無かったのだと、
改めて思い知らされた今回の展覧会だった。


輝くように見える絵の表面も、絵の具をよく見ればニスが悪いのか、
保存状態に問題があったのか、余りにも多くのひび割れが目立ち、
僅か100年、150年ほどでこれほどまでに傷むものなのかと感じさせるものも多い。
デスマスクや愛用のパイプ(その一つは中国製なのか漢字が描かれていた)、
パレットなどが展示され、絵画以外の品々に感慨もひとしお。


キュレーターの意図なのか、絵の点数・内容、彼と同時代の人々の作品、
様々なオマージュも含めて通覧してみると、
業績に見合う晩年を送れなかった悲劇的な境遇
(パリコミューンに関わり亡命せざるを得なかったことなど)に
焦点が当てられているようだった。


絵の解説もそれを反映してか、渋めで暗めなトーン、郷愁に彩られていた。
さて、展示期間ぎりぎりに観に行ったために、解説書は売り切れ、
手に入れることも叶わず、ちょっと残念。いや、かなり残念かな・・・。
でも、最近はカタログ、蘊蓄本を買ってもじっくり眺めることもせず、
読んでも頭に入らなくなってしまっている。
だから、仕方ないさと酸っぱい葡萄的諦めでもって、帰宅。


それにしても、久しぶりに空いている時間帯、作品を至近距離で
じっくり眺めながら時間を過ごしたような気がする。
主催者側には申し訳ないが、閉店間際の空いている時間帯は穴場。
ゆっくり鑑賞のし甲斐があった、リニューアル後の大丸ミュージアムだった。

ギュスターヴ・クールベ―ある画家の生涯

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