Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

説明は難しい

土曜の朝、新聞を読んでいると学童に行く準備をしている娘が、
「お母さん、代理出産ってなあに?」と、いきなり尋ねてきた。
え、代理出産か? うーん、なんて答えてあげればいいのかなあ。


えーとね、お母さんのお腹の中に赤ちゃんの素の卵があるの、
知ってるよね。
で、赤ちゃんを育てたいんだけれど、お母さんのお腹の中では無理な時、
卵を取り出して、別の女の人のお腹に入れて大きく育てて貰って、
お母さんの代わりにその人に赤ちゃんを産んでもらうことなんだ。


「ふーん、つまりお母さんが2人いるってことだね。」
(おい、いきなりそう来るか)
「お母さんが死んじゃった赤ちゃんを、別の人が育てることもあるし、
 赤ちゃんが死んじゃった人が引き取れば、お母さんになれるし」

うん、でもね、その時は赤ちゃんにとっての、
育ててくれるお母さんは一人きりなんだけれどね、
代理出産は赤ちゃんの卵のお母さんと、
お腹の中で赤ちゃんを育てて産んだお母さんは、
どっちも生きているんだよ。
赤ちゃんは一人しか居ないんだけれどね。
で、どっちが本とのお母さんかって、もめちゃうんだよねえ。
君の場合だと、君が卵だったときのお母さんと、
お腹の中で育てたお母さんと産んだお母さんはみんな一緒で、
かーちゃんなんだけれどさ・・・。

優生学と人間社会 (講談社現代新書)

優生学と人間社会 (講談社現代新書)

産む産まないは女の権利か―フェミニズムとリベラリズム

産む産まないは女の権利か―フェミニズムとリベラリズム


そう、子供を望んでいる人が誰でも、代理出産を行えるわけではない。
自分の遺伝子に固執して子供を持とうとすればするほど、
経済的な格差の元で、医療が行われる。
そこに利益追求が絡まない訳がない。
不妊治療は・・・、精神的には緩和ケア的なカウンセリングに近い。
子供を持つ生き方、持たない生き方、夫婦の在り方、
家族の在り方、親子の在り方、人の幸せ、
幸福感や人生観を抜きにして「本質的な不妊治療」ができないからだ。


産みの親より育ての親、氏より育ち、
そんな言葉が昔からあるというのに、
実子ではなくて、養子でも構わないと思い切れる人が少ない日本社会。
腹は借り腹、そうやって産む女性は貶められ、
つなぎの存在となり、
血を継いだか、継がなかったかで養子の格が変わってくる。
正室の子供でなくても、一族の血が流れていれば養子から実子扱いに。
流れていなければ、あくまでもつなぎの存在、格下の養子に。


遺伝子に固執しているからなのか、
自己を複製化することに、夢を託しているのか。
子供を持とうとする時、何を伝え何を共有したいと願い、
何を託そうとしているのだろうか、人間は。


どうやら消滅する自然免疫ほど、潔くなれない人間の行動。
もっとも獲得免疫に情報を与えられるからこそ、散ってこそ華の自然免疫。
裏を返せば将軍になる歩兵、アナログだからこそデジタルにもなれる。
目の前の血の繋がりに固執して遺伝子レベルで親子であるか。
卵の提供者=母親であることが第一義か。(子宮提供者は道具化される)
家族として生活し、思い出・記憶を共有する、あるいは、
伝えるべき技術・伝統を分かち合い、繋げていくことが重要か。

「豊かさ」の誕生―成長と発展の文明史

「豊かさ」の誕生―成長と発展の文明史


たまたま、今日土曜の夕方にやっていた
娘と共に「サイエンスzero」を観ながら思った。
今世界で最も注目を集めている研究者、
大阪大学微生物病研究所の審良(あきら)静男教授の
世界・生命の防御システム研究の最前線で行われている研究。
家人の病にも無関係ではない、免疫学の世界。
生命の世界で論議される、自己非自己の世界。
トル様受容体を探ることで、生物の進化の謎が解明される可能性
自己免疫疾患治療への可能性・・・。
免疫そのものの在り方を追及していく、重要な手がかり。


どこまでが自分なのか。どこまでが他人なのか。
守る自分、攻撃する他者。攻める自分。守る他者。
どこまで受け入れられるのか。
どこまで過敏にならずに受け入れられるのか。
見過ごすことと受け入れることは違う。
清濁併せ呑むことと、肚におさめることが微妙に異なるように。


独り歩きしている言葉、テーラーメイド・メディスン。
本当に長生きすれば新しい薬や治療に巡り会える?
イメージの定まらない「自己への執着」を
感じさせる癒しフェア的なドクターショッピング
そんなものを引き連れて来ないかしらん・・・


自分探しにも似た、自己非自己の境目を要求する医療。
利益に繋がらない医療の元で、命を繋いでいくこと。
毎月の家人の血液検査。真っ先に見るWBC
体の中でも外でも、自己非自己のせめぎ合い。
ぐるぐる回る、頭の中。説明は難しい。


ちなみにサイエンスゼロ、子供にもわかりやすい免疫学でした。
再放送は 3月27日(火)午前0:50〜1:34 教育(月曜深夜)
     4月6日(金)午後7:00〜7:44 教育

恐怖の病原体図鑑―ウイルス・細菌・真菌(カビ) 完全ビジュアルガイド

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