Festina Lente2

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Back to the Future

あのね、前の日でないと駄目なんだって。
ん? 突然何の話? 話が見えない。
マカロニグラタンをつついている娘が、繰り返す。
前の日でないと間に合わないんだって、ケーキ。
ははぁ、お誕生日のケーキの予約のことね。


小学校の町探検で、ケーキ屋さんに行ってきた娘。
家からは遠いので一度も利用した事の無い店なのだが、
自分が足を運んだので気に入ったらしく、
1度味見をしてみたいのだろう。
確かに物心付いてから、ずっと同じ近所の店のケーキだったし。


仕事を30分早く切り上げ、音楽教室の娘をピックアップ。
矯正歯科に連れて行き、18:30過ぎ、明日の分、おつまみも
久々に買い物を一緒にしたけれど、楽を決め込んだ。
車の中で娘は私に尋ねた。
「私を産んだ時って、お母さんお腹痛かった?」
こういう質問をする年齢になったんだねえ。


痛かったけれど、病気の痛さじゃないし、
お腹の中の赤ちゃんが頑張って生まれてこようとして
動いている痛みだから、勇気りんりんよー。
お母さんも頑張らなくっちゃって。
どうしてお腹が痛いかわかっていたから、
もうすぐ赤ちゃんに会えるってわかっているから、
我慢できる痛みなの。大丈夫だったよ。


「お母さん、私も母子医療センターで
 赤ちゃん産んだほうがいいかなあ・・・」
(小学校2年から心配? 随分気の早い質問だこと)
確かに、ここで産んだ方がいいかなあなんて、
不安な気持ちで知らない病院にいるよりも、
いつも診て貰っている先生のいる、安心・信頼できる病院で
産んだ方が不安もストレス少なくていいんだよ。
お母さんは、センターが近くてラッキーだったなあ。
○○ちゃん、こんなに元気に生まれてきたでしょう。


・・・9月は娘の誕生月。娘なりに自分が生まれてきたことに、
色々思いを馳せる月であるのだろう。
世間では救急車で妊婦を運んだの、運ばないのと
ニュースを耳にするから、不安になったのかもしれない。
それにしても、産みの苦しみをこんな年齢から心配?
いや、産むために必要なのは命を守り育てる知恵だろう。


もとい、かかりつけ医を持たない無知な高齢出産など、
自殺行為にも等しいと私は思っている。
確かに妊娠は病気ではないが、経過観察は必要だし、
病院ではなく自宅出産を望む妊婦だって、
助産院を定期的に訪れているはず。


仕事を持ちながらの超高齢出産、できる限りのことはしたつもり。
体重のコントロールはもちろん、マタニティスイミングも、
今のように葉酸が話題になる前から、海外の情報を集め、
サプリメント・服薬・偏った食事にも気を付け・・・。
それでも切迫流産になりかけて、6ヶ月目2週間自宅休養。

本日娘の通院日。歯の矯正は嬉しく無いけれど、虫歯は無い。
私自身が弱い歯、歯並び、歯磨きに苦労した分、
強い歯の子どもを育てることは意識した。
妊娠初期、胎児には既に歯(となるべき組織)が出来ている。
生まれる前から、大切な歯、大切な神経、大切な脳。


生物の進化を、妊娠初期に達成する我が子。
未来。いまだ見ぬ未来。我が子を抱く未来。育てる未来。
イメージした未来をこの手につかむために、行動した日々。
お懐かしや未来。母となった喜びは過去になったけれど、
夢見た未来、娘とあれこれこういう話ができるようになった。
そのことが、何とも言えず感無量の私。


折しも、PALM30巻目を手にして、過去と未来を行き来するオムニバスに
久しぶりに浸った昨日の今日。時間の織り成す未来。
BSでの映画はBack to the Future part3

バック・トゥ・ザ・フューチャー―名作映画完全セリフ集 (スクリーンプレイ・シリーズ)

バック・トゥ・ザ・フューチャー―名作映画完全セリフ集 (スクリーンプレイ・シリーズ)


part1も好きだが、今の年齢ではこのpart3が一番好きだ。
ドクとマーティンの掛け合いも、1から用意されていたかのような、
様々な噛み合わせ、使った偽名がクリント・イーストウッド
リメイク・換骨奪胎・パロディ、傑作決闘シーン。
主人公の成長過程も面白いが、ドクの恋愛、一目惚れが何とも楽しい。


老いらくの恋、いや、壮年思春期の恋は若者と違って、
残された時間にゆとりが無いから、即火が付き燃え上がるが良かろうの典型。
科学オタクは科学オタクを呼ぶという事で、
飛び切り美男美女でなくても、真剣に恋を全うする背景を
未来旅行に賭けて、暴走機関車を走らせるシーンは、
娘も呆気に取られて見ていた。もう、何回目かな、見るのは。


恋愛から結婚に至るまでは勢いが必要だから、
蒸気機関車の釜に爆薬を放り込む勢いで打ち上げ花火をあげないと、
恋の炎が消えてしまうかもしれない。
だから、景気付けも兼ねてあれ位の騒ぎでちょうどいいのだろう。


御先祖様にも会い、白紙の未来を手に入れ、
つまり、未来は自分達次第でどうにでもなるというメッセージを確認し、
物語はやっとエンドマーク。観客は自分達の未来を描こうと、
前向きな気持ちでスクリーンを後にする。
人生捨てたもんじゃない、世の中に1人の女(男)宇宙に1人の女(男)を
手に入れることができるような気持ちになって、ほのぼのとする。


20年前の映画でも、ちっとも古臭さを感じさせない。
今の若者が見ても楽しめるし、色んなメッセージを受け取れるだろう。
小2の娘でも楽しんで見られるのだから。
「お母さん、どうなっちゃうの、もう2人は会えないの?」
「結末を知っているからって一人でニヤニヤして、ずるーい」


まあ、知っていても見たくなる、空飛ぶスケートボードのラブシーン。
ロケットへと変身する蒸気機関車
ん、こんなふうに変形・変身できるんだから、よく考えてみると
トランスフォーマー型タイムマシンだなあ。
おまけの再会はお約束、子どもの名前はジュールとヴェルヌ。
いやはや、楽しい。いや、もとい、ジュール・ヴェルヌ
どんな未来を夢見て、小説を書いていたんだろう。
お懐かしや、未来。人類全体が抱く、デ・ジャ・ブ。

地底探検(紙ジャケット仕様)

地底探検(紙ジャケット仕様)

私は、かつての私の、未来への願望の産物と共に、
自分自身が、母親というものに位置づけられた日々を思い出す。
娘の誕生日のケーキは、新しい私が生まれた日の記念でもある。
現在の私が、私の在りようがかつての私の理想かどうか。
授かった子どもが、思い通りに育てられているかどうか。


残念ながら、意のままになることなど無いのだけれど、
ある意味「授かりもの」の未来を生きている現在が、
刻一刻と過去になることを思えば、
心の中で思い描いたイメージは、お懐かしや未来、
「ようこそここへ」のhere and now.
これを幸いと言わずして、何と言おう。

海底二万里 (上) (岩波少年文庫(572))

海底二万里 (上) (岩波少年文庫(572))