Festina Lente2

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『チンチン電車と女学生』

だんだん声が出なくなる。風邪気味。歯科受診。
喉の痛みが酷くなる。出張後、駅ビルの耳鼻科受診。
チンチン電車と女学生』。舞台は久しぶり、刺激的。

本日今日から始まった『チンチン電車と女学生』を観てきた。
劇団往来・STAGE21・S.A.B.カンパニー合同公演
大阪ビジネスパーク円形ホール
久しぶりに木曜の夜、舞台を堪能。
たった一人で観劇というところが哀しいですが、
この所なかなか時間が取れず観る事叶わなかったご贔屓の劇団の
懐かしい面々にもお会いすることができて、満足。


舞台には大いに満足したが、それはとてもいい席を頂いていたから。
生演奏のピアノのまん前で、役者も良く見えれば演奏もばっちり。
ほぼかぶりつきの席で観劇。滅多に無い経験をさせていただいた。
ストーリーは先が見えているのだけれど、
戦争を知らない子供たちの私でも、泣かせられる場面にはホロリ。
女学生たちの恋と青春、そして、はかなく散った命。
沖縄の姫ゆり部隊の壮絶な話も戦争秘話として有名だが、
埋もれて消えていった尊い命の話は、そこここに眠っているのだろう。
発掘されることの無いまま、庶民の歴史、戦争の裏話として。


なぜ夜に3時間にも及ぶ劇を、出張後に観ているのか。
実は娘は今日から1泊2日の林間学校。
こんな梅雨時にと思ったが、
晴れ女のかーちゃんの神通力が通じたのか、
本日、呆れるほどの馬鹿っ晴れ。良いお天気と相成った。
(昨年のお母さん方は雨だったとぼやくことしきりだったので)


朝5時起きで娘の弁当をつくり、(粗熱を取らないと)
お茶を用意し、朝ご飯を用意して、7時30までに集合に送り出す。
いってらっしゃい。昔、自分が行ったことのある場所なだけに、
懐かしさ一杯、思いっきり背中を押して送り出し。(笑)
プチ空の巣症候群を癒すのは仕事、それも、お楽しみ付きの。


そんなかーちゃんは一人きりの夜を、ミュージカルで楽しんだ。
もっとも音楽劇とはいうものの、
「ミュージカル」と銘打つほどダンシングシーンはない。
どちらかというと女性を中心とした歌が主流、
男性陣のコーラスは・・・結構きつい。
初日のせいか、緊張もあったのか台詞の噛み、所作ミス、
致命的な台詞やナレーションミスもあったのだけれど、
ピアノの生演奏の迫力、
ストーリーそのものが持つメッセージ性に助けられ、
ばらばらになりそうな現代と過去との接点を
かろうじて繋ぎとめていた、そんな感じ。


今時の女の子が、昔の日記を読めるはずもないし、
(そんな学力と言うか、旧字体旧仮名遣いを読みこなす識字力を持つ
 若者は現実にはいないので、この設定からして非日常的)
ともかくも、祖父と孫との対話はありえない理想像として、
物語の外枠を作る形で存在。そして、部隊は過去へ。
祖父の手元に残された女学生の日記から蘇る戦争の日々。
若い世代に戦争を語り継ぐ為には、こういう非現実的な設定も
致し方なかったのだろう。


同い年の女の子が書いた日記だから、読めばわかるはずだ・・・
というような台詞もあったが、現実には精神年齢が低く、
恋愛関係だけは変に突っ走っているような今時の中高生に、
どこまで当時の恋愛観、友情を体感させることが出来るかは難しい。
観客層の年齢から見て、当時を懐かしむ世代、
もしくは出演者の両親に相当する世代、
ほぼ私と同世代課それより少し上観客の方が多いように感じられた。


何しろオープニングからして軍国少女一個大隊大合唱付き行進。
貧しくても学びたい、お国のお役に立ちたい、
家を離れ働きながら学び、女学生として頑張りたい、
軍国少女の健気な生き方を前面に押し出している。
そんな姿勢・願望は、今の時代の若者には通じない。
誰かに指図されるのが嫌で、楽して好きなことして生きたいだけの。
(仕事柄、いつの間にか若い人には批判的になってしまう私)

チンチン電車と女学生

チンチン電車と女学生

いしぶみ―広島二中一年生全滅の記録

いしぶみ―広島二中一年生全滅の記録



ニートからプアに転落しても、よくわかっていない、
自分の人生の痛みを抱えきれないまま、
かといって、「ゆとり教育世代」「自分探し世代」と
意味もなくもてはやされて、世間に通用しない自己主張、
肥大した自我を持て余した世代には、この劇の趣旨は通じるのだろうか。
安直な戦争反対原爆は駄目、
ノー・モア・ヒロシマだけで終わってしまわないだろうか。


戦争が続き、いつ終わるか先が見えない。
物資も人も足りない世の中。赤紙が家族を引き裂き、
徴兵は学生に及び、学徒出陣。
勉学はさておき軍事徴用の日々、白米のご飯を夢見つつ、
畑で工場で労働するのが当たり前。そんな青春を、
どうやって想像すればいいのか。


故郷を離れ、家を離れ、寮生活に耐えて車掌から運転手の訓練、
慣れない町で歯を食いしばりながら仕事を覚え、
広島市路面電車チンチン電車を動かしていた女学生たち。
ひもじさ寂しさ虚しさ悲しさ、そんな思いも未来に夢を託し、
明日を信じていたその日の朝・・・。原爆は落とされた。


その時代に観客を引き込むのに、
3時間の舞台が必要だったと言われれば、納得できないでもない。
が、結構きつかった。
俳優・役者にとっても観客にとっても、体力勝負の舞台。
終演時間が遅いだけに、子役たちの出演が気になった。
話の本筋以外の所にばかり気が行ってしまったが、
職業柄致し方ない。


もう少し話をコンパクトにまとめても良かったかと思うけれど、
美しい歌声を存分に堪能するためには、これも必要だったか。
しかし、これだけの人数を動かす舞台となると、
そして往来お得意の大掛かりなセットを生かすとなると、
なかなか公演する場所は限られてきそう。
こういう話こそ、中高生に見せたい内容。
もう少しスリムダウンして、私の娘世代にも見せたい内容。


そんな風に思いながら、円形劇場を出てマックで一服。
今週2度目の午前様。年食ったシンデレラは、一人帰宅する。
娘よ、林間学校初日はどうだった?
君は満天の星空の下でいい夢を見ているか。


かーちゃんは、広島で原爆の落ちるまで、
あの街を走っていたちんちん電車を動かしていたのは
女学生たちだったなんて、知らなかったよ。
「わたしがおかあさんになったら」のコーラス、
平和の夢、未来の夢を歌う女学生たちを襲う、
過酷な時代の波。泣けたよ。


戦争を知らない子供たちだった私、
そして私の娘よ。
いつか、君と一緒にこの舞台を見よう。
今の若い人たちにも見て貰いたい舞台だったよ。

ひろしま

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広島の原爆 (福音館の科学シリーズ)

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なみだのファインダー―広島原爆被災カメラマン松重美人の1945.8.6の記録

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