クレアと医療用ロボット、イブ

今日も20時過ぎの帰宅になってしまった。
いい加減な夕食を食べながら、ニュースを見ていると、
今年のロボット大賞のコーナー。
え？　こういうの毎年していたっけか？
ロボコンなら知っているんだけれどなあと、
画面を見て驚いた。いやいや、大賞のロボットではなくて、
ガラスのように透き通った人体が横たわっているのに。

血管内手術の技術トレーニングのための超精密人体ロボット イブ
ファイン・バイオメディカル有限会社　名古屋大学

名古屋大学福田研究室の技術を基に実用化した、血管内カテーテル手術（血管諸疾患に対する最先端医療）の技術トレーニングを目的とする世界初のテーラーメイド患者ロボット。体内には、CT/MRI像をもとに患者個人の血管が精密に再現（精度：0.01mm）され、疑似血液の循環による血管の脈動や医療器具の操作感覚をリアリティ高く再現されている。血管に加えられた応力等から手術の進行状況を分析し「アブナイ」などと声や映像で術者に状況をフィードバックする。動物実験に代替する、「身体再現性」と「機能性」に優れたシミュレーション環境を提供することから、2005年の万国博覧会（愛・地球博）への出展を機に、医師や医療機器メーカから高い評価を受け、医療技術の伝達、教育、評価のためのロボットとして現在広く活躍している。

愛知万博で沢山ロボットを見たけれど、これは記憶に無かった。
その頃、医療のイに無縁な能天気な生活をしていたからか、
何なのか。でも、知る人ぞ知るロボットなのだろう。
娘もテレビの映像を見て、「わぁ」とびっくりしていた。
ロボットから「痛い、変な感じがする」と声が聞こえてくるので、
「おかあさん、手術の練習ってうるさいんだね」とコメント。
うーん、何と答えてやればいいものか。

もっとも、私が連想していたのは、全く別の次元の話。
脳裏に浮かんでいたのは、「銀河鉄道999」に出てくるクレア。
列車の中でウェイトレスの仕事をしていた、
そう、透き通ったクリスタルガラスの体の美しい少女。
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暖かい血が通う体を手に入れるために、
銀河鉄道で働いている、美しいクレア。
光も影も私の体を通り過ぎていってしまう、・
お母さんが見栄っ張りでこんな体にしてしまったと嘆き、
冷たい機械の身体に強い劣等感を抱いているクレア。
自分の身体を発光させた時、
「こうすると少しだけ身体が暖まるんです」と寂しげに語る、
可憐で、可哀想なクレア。

何だか一つのキャラクターの向こうに、色んな物が見えますね。
母娘関係、透明、ガラス、冷たい、機械、暖かい、血の通った、
発光、亡霊、自爆、自己犠牲。キーワードの向こうに。

主人公哲郎を救うために自分を犠牲にして砕け散り、
後に残される、一粒の涙型の破片。
色んなクレアが脳裏をよぎって、短いＴＶ映像の中の、
医療用ロボットイブと重なった。

暖かい血が通っている訳ではないけれど、
血管内治療の練習のために、血管やセンサー内臓のロボット。
よりによって、イブと名付けられているなんてね。
いやいや、悪魔のそそのかしによって、エデンのリンゴを盗み、
その結果人間は知恵が付いたというエピソードはさておき、
とうとう神が泥から作った人間は、透き通った人体模型ロボットに
自らの治療を託すまでになったということで･･･。

「銀河鉄道999」の登場人物の中で印象的だった、クレア。
このロボット、イブは「痛い」を叫びながら、
血管の中を通るワイヤーを導き続けるのだろうか。
砕け散ることはなくても、体を張って人を守るために
頑張り続けていることには違いない。
イブだけではなくて、無数のロボットが、ものが、
哲郎を含む人間を守る為に日々作られ、壊され、砕け散っている。
思わず、そんな事を考えてしまう。

医療の世界では人体実験はできない。
今、様々なロボットが活躍して技術訓練の役に立っている。
たった１回の手技のために、どれだけの訓練が必要か。
多くの知識と技とが経験によって支えられ、一つの手術、
一つの治療、一人の人間の命に繋がる。

強いようで脆く、脆いようで強い、
しなやかなようで硬く、頑なに見えて柔らかい、
人の心と体の在り様を支えている、様々な出来事、
人の健康と幸せを支えている、知られざる世界。
ほんの少し垣間見せてくれた、思い出の中のクレア。
医療のの世界のイブ。

一瞬、透き通った体の向こうに見えたもの。
命と心を繋ぐ、切ない思い。

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