Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

思い返して見ると

先週、先代の作品、若狭塗り箸の名品を手に取る時に、
小草雀は指輪を外して、塗りが傷まないよう手に取って見ていた。
いいシーンだなと思った。


本当はこんな風に柔らかな子供の心に敬意を払って
傷つけないように、その子なりの個性を認めてやるのが
本筋だとわかっているのに、なかなか土壇場でできない。
思い返して見ると、失敗ばかり。


お腹の中にいた娘が、今、親と一緒の番組を楽しんで見ている。
それはそれでありがたい貴重な時間だ。
子供の旬は短い。いつも一緒に居られるとは限らない。
遅くにできた子供であれば、他所の家よりも別れは早く来るだろう。
だから焦って、あれもこれもと欲張りすぎて子供に嫌われる。
とんだ親だ。どんな親だ。こんな親だ。おやおや。


遅くに生まれた元気な娘。たいした病気もせずに大きくなった娘。
その事に感謝しよう。本が大好きで黙っていたら本を読む。
読書をしろと目を三角にしなくてもいいことを感謝しよう。
体育は特に球技は苦手だけれど、水泳教室に通って足掛け5年。
ダダもこねず、ズル休みも無く学校にも水泳にも出かけていく。
そんな娘に感謝をしよう。と、冷静な時は思えるのだが。

リフレクティア

リフレクティア

Forest of glass

Forest of glass


思い返して見ると、私も親には何も話さない子だった。
社宅の同世代の子供集団の中で苛められている事も、
体力自慢の友達と遊ぶのは楽しくないことも、
休み時間も外に出たくないことも。
担任の先生が苦手な事も。


思い返して見ると、自分と似ている所似ていない所。
娘にはそれぞれちゃんとあるのだが、
似て欲しい所は似てなくて、似て欲しくない所が似ていたりする。
こういうものだと頭でわかっていても、直面すると、ね。


思い返して見ると、娘には沢山幸せを貰っている。
母となれた喜び、楽しい子育ての日々。
先日の小学校の宿題で「0歳から2歳までで、お母さんの嬉しかった事」
色々ありすぎて、一つには絞りきれないのだけれど、
ハイハイが上手だった8,9ヶ月の頃、ペロッと服をめくると
おっぱい目掛けて一目散にハイハイして来て、
それこそ紅葉のような小さな手でよいしょよいしょと体を登ってきて
お母さんのおっぱいを吸いに来てくれた時は嬉しかったよと話した。


娘はハズカシー、そんな話、発表できないから別の話にしてーと叫んだ。
そういう年頃になったんだね。ついこの間まではもっともっとと、
「赤ちゃんの頃の話」に夢中になって、一緒に喜んでいたのに、ね。
条件反射とはいえ赤ん坊の力は思いのほか強い。握ったり吸ったりする力の、
驚くほどの力強さに畏怖の念を感じた頃。
クーイングから始まった息の漏れる様なかわいいかすかな音が、
リーロリロリロと小鳥の様なさえずりになり、喃語になり、言葉になり。


親の後を追い、トイレまで付いてきて片時も離れなかった子が、
無事に育った結果、親の愛着を振り切るように反抗し始める。
その寂しさ、その切なさ。頼もしいには程遠い、この思い。
自分の親はどんな気持ちで初めての子の成長を反抗期を見守ったのか。
むろん、8歳の娘の反抗は、反抗といえるほど過激なものではなく、
ほんのお試しにしか過ぎないささやかなものなのだけれど、
親に与えるダメージとしては、それなりに十分だ。


自立の一歩。親の価値観からはみ出すチャンス。
そういう成長を辿る娘を、これからどれだけ距離をあけながら
見守っていけばいいのだろう。
親に抱きしめられたり抱き留められたりした記憶が無い私は、
物心付いてからの、孤独な気持ちの持て余し方しかわからない。
赤ん坊の頃慈しまれた記憶なぞ、綺麗さっぱり抜け落ちているのだろう。


娘も忘れちゃったと言う。小さい時の事なんて忘れちゃったと。
そうだろう、執着しているの親なのだ。
だったら、思い出させるのではなく、これからも一杯一杯
抱きしめて囁かなければ。「ママの宝物」に。
何も言わずに抱きしめて頬ずりしなければ。
今朝、そっと後ろから抱きついてきた娘。
昨日叱られて、叱り倒されて、怖いかーちゃんの正面に回れず、
後ろから抱きついてきた娘に、何としよう。


何も言わずに抱きしめて抱きしめて。
ただ一杯一杯抱きしめて。
ごめん、かーちゃん昨日は叱り過ぎた。
でも、きっとまたかーちゃんの頭には角が生えるだろう。
毎日毎日、仕事の合間片時も忘れずに、
明日から3泊4日で顔も見られないと思うと胸が痛くなる。


物心付いてから、こんなに長く離れて暮らすなんて、
君のキャンプの時も切なかったけれど、
君を置いて行くかーちゃんは、仕事で離れるのでいっそう切ない。
若い頃好きだった仕事も、何かと大変。
特に体は言う事をきかなくなったので、宿泊勤務は避けたい年齢。
若作りしていても、からだは正直。
6年ぶりの飛行機に、心が弾むよりも何だか怖い。


こんなかーちゃんだからこそ、まだまだ鍛え方が足りないと、
天から仕事が降ってくるのだろう。湧いて出てくるのだろう。
切ない事が沢山あるのだろう。厳しいことが待っているのだろう。
君と暮らすために、君が大きくなるために、
かーちゃんがタダのかーちゃんであるだけではなく、
君にふさわしいかーちゃんになれるように、
かーちゃん「行」を積める様に、何だか色々あるのだろう。


何も言わないで本ばかり読んでいた娘を、
自転車で出かけたきりの娘を、煮ても焼いても食えない娘を、
自分の親はどんな眼差しで育てていたのだろうか。
生きていくのに食べていくのに必死だったろうに、
どんな思いで育てていたのだろうか。
そして、この歳になっても親を顧みる事もできずに、
「おやおや」な親のまま。


何も言わずに抱きしめて。
何も言わずに抱きしめて。
誰を? 


心寂しい雪空のもと、仕事もそぞろ、気もそぞろ。
思いばかりが切なく募る。

ぼくはくま(スペシャル・パッケージ)

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