Festina Lente2

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今日のオリンピックの結果に思う

おめでとう! 北島康介選手、平泳ぎ200m優勝、
オリンピック新記録で金メダル。
世界新ならず不本意とのこと、「蛙王」らしい。
でも、この偉業は、その後のインタビューで引退示唆となり、
複雑な思いに駆られた人も多かったはず。


行く川の水は絶えずして、久しくとどまりたるためしなし。
極めれば後は・・・。その気持ちを持たずして勝負には挑めない。
「全力を出して泳ぐのはこれで最期。寂しい」という思いを抱えて
試合に臨んだ選手とコーチ。二人別々に会場を出てきて、
同じ思いを口にしていたのを見て、何とも言えない思いに・・・。


「結果を出させ続けることで、自分を信じて付いてきてもらうしかない」
というようなことを話していたコーチ。
「求められた結果を出すのが、自分の役割」と言い切って、
大舞台に望み、自分の持てる力を出し切った金メダリストとなった選手。
涙がこぼれて仕方なかった。引退を見据えて泳いだ、この大会。
去ること、引き際を考えながら戦い抜いた彼。
水泳陣の最年長と言われるも、まだ25歳の若さ。
何とも勿体無くも潔い。

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朝6時半からプールに到着、試合まで3時間以上あるというのに。
にこやかに笑いながらプールサイドを歩く北島選手と、
水泳帽を被りプールを目の前に座る、厳しい顔の北島選手。
闘志を漲らせて、野武士のようなギラリとした眼(まなこ)で、
水面を凝視するその姿に、勝負を掛ける人間を見る。
泳ぐことは、自分自身に課した果し合いのようなもの。
そんな雰囲気が漲っていた。


特集番組では、彼の小学校時代から今に至るダイジェストを放映。
凡人にはなかなか出来ることではないオリンピック3大会連続出場、
そして平泳ぎでの金メダル、2連覇。
追随を許さない美しいフォーム、緩やかに伸びやかに水をかく泳ぎ、
もう見る機会がないかと思うと、本当に哀しく寂しい。


出先にいてライブで試合を見ることが叶わなかったが、
帰宅後のニュースで北島金メダル一色に、娘と歓声を上げた。
しかし、他のニュースは、お家芸とされる柔道関係は悲惨。
まさかの初戦敗退、悪夢の連敗と報じられて惨憺たる有様。
青い柔道着でうち伏したまま、男泣きに涙に暮れる鈴木選手。
主将のプレッシャーか、連覇の重圧か、
とかく土壇場で弱すぎると言われる日本柔道。


「精神一統 何事か為らざらむ」を基本とする日本武道の、
世界舞台での精神的な脆さ・弱さは今に始まったことではないが、
試合をする以前に、精神的な重圧から負けてしまっている。
代表に選ばれている、競技人生が掛かっている、
そのスポーツ業界を背負っているんだという気負いが、
勝ち負けのあるスポーツで勝って当たり前というシナリオしか
用意されずに書かれていることが、きつく厳しい。


何故か安心してみていられる水泳、勝っても負けても
「よし!」と思える余地が残っている水泳。
それに対して、もう何もかもありはしないのだ、
是か非か、勝つか負けるか、後は切腹みたいな悲壮感が漂う柔道。


勝つことで引退ではなく、負けることで引退。
勝つまで引退さえ許さない雰囲気。
オリンピックに出られる実力があることを認められるよりも、
負けたことで罵倒されるのでは、たまらない。
残念だとは思うけれど、勝者がいれば敗者は必ずいる。
実力を認められ称えられる以前に、次は次はと目標を設定され、
念押しされ、背中を押され、見えない手枷足枷で「選手」として
送り出されるのでは、たまったもんではない。
そんなふうにさえ見えてしまう、日本の柔道界。


体が成長しきっていない子どもが演じているとしか思えない、
日本女子体操。5位に入賞は快挙。選手が生まれるより10年以上前から、
記録は止まったまま。それを更新したのだから。
自分の娘と幾つも変わらない選手が、インタビューに答える姿に、
感情移入して切なくなってしまう。本当に良く頑張ったなあと。


男子体操。その現場を見ていないが、あん馬で落っこちたそう。
それでも銀メダル、19歳の内村選手。運が良ければ金メダルだった。
でも、神様がロンドンも頑張れよという切符に変えたのだろう。
世代交代が進むことが未来への勝利の布石と言われる。
それが顕著に現れた男子体操。
トラブル・アクシデント、そんな中で具志堅以来のメダル。


競技人生が長いことが、後進を育てる障害になるのはおかしい。
まして、経験者と過ごす若手がどれほどのものを得られるか。
矛盾せずにチームが組めれば、選手団を作ることが出来れば・・・、
素人がやきもきしても解決する問題ではないけれど、
年齢差のある種目をみていて、やはり複雑な思い。


1戦目を落とした野球、かろうじて2戦目で勝ちを拾う。
勝てば嬉しい、負ければ悔しい。でも、勝負は時の運。
自己ベストを出せずに失速する選手。体調も精神力も、
何もかも試合の日・時間帯に調整して、
最高の状態に持っていくのは至難の業。


TVで放映されるLIVEの文字を見るたびに、
「え? こんな時間に本番なの?」と思ってしまう。
完全に本来の生体活動時間からずれている。
商業ベースに組まれた試合と放映時間としか思えない。
1番大変な思いをする選手は、無視されているとしか。


自分が夜も7時を過ぎてから、朝は9時ごろから
「全力で臨め」と言われたら・・・。
仕事だから、プロだからと言っても嫌だなと思う。
そういう感情、感覚を遥か遠くに置いて、
自分の自己実現を、目標を定めて、納得のいく記録を創り、
賞を取り、メダルを手にする。
そういう選手たちに、心の底から拍手を送る。
スポーツを通じて人生を垣間見せてくれてありがとうと。


そして夢叶わなかった、思うような結果を出せなかった、
明暗を分けた「結果」に打ちひしがれている選手にも、
お疲れ様、よく頑張ってくれましたと思う。
何よりも次世代の目標として恥ずかしくない、
自分なりの努力・頑張りが出せているならば、
顔を上げて帰国して欲しいと思う。


記録や勝負の結果は残念かもしれない。
でも、この時代、自分の自己実現と夢と希望を、
国や業界の期待と重ね合わせて、一身に背負うのは至難の技。
結果を出せなければ意味がない。
代表に選ばれている時点で、ある一つの結果を出している。
そのことを忘れずにいて欲しい。
既に、後に続くものの目標、憧れ、尊敬の的であることを。


どこかの国のように、もし優勝できれば報奨金で大邸宅、
スポーツ年金、納税は優遇、人が羨む遊んで暮らせるような
有名人・著名人になるために、スポーツに打ち込み。
青春を掛けてきたのではないことを、私達は知っている。