SEX and the CITY

抜歯後の避けられない憂鬱、迫ってくる痛み。
薬剤部で薬を貰って即、ロキソニン。効いているのか？
全くわからない。痺れと痛みで何だかへろへろ。
誰にも会わずにゆっくり腰を掛けていたい。
気分転換したい。地下鉄から降りて、とにもかくにも、
今から一番早い時間で始まる映画に飛び込むことに。
何とこれが、「SEX and the CITY」TVも原作も知らない。
題名だけは有名だから聞いたことはあるけれど、
今更これを見てもなあ･･･と思いつつ、
シートに深々と座り込んで、脱力。

何だ、これは？　の世界。さすがアメリカと言うべきか、
お馬鹿アメリカと言うべきか、動く女性週刊誌、
喋るファッション雑誌、NY限定版ハーレクインロマンス、
セレブ御用達恋愛ゴシップ飛び出す絵本、
何と形容すればいいのか。
まあ、頭を使わず画面を眺める分にはいいけれど、
ジェットコースタームービーでもないし、スリルも無い。
心の底から味わえる深い感動・友情・ストーリー展開でもない。

ただただひたすらお金を掛けた衣装･アクセサリー・ファッション、
お化粧からライフスタイルまで、庶民に全く関係の無い世界。
カラード・有色人種も殆ど出てこない。
これを見て何を得ればいいのか？　ちょっと悩んだ。
抜歯でもなければ、見ることが無かった縁の無い世界。
それを垣間見れただけでも、意義あったと言うべきか？
この映画を見て、TVシリーズのファンは、懐かしくて涙するのかなぁ。
それくらい俗物的な世界。

題名がちょっと？　って感じで気を引くけれど、
都会の中でキャリアを磨く話でもなんでもなく、
ブランドと結婚のバランス＋αキャリア？
とにかくお金に不自由しない人たちの話。
理解可能な生活感が感じられない。
この話の内容に血道をあげて、共感する人の生活に、
きっと自分は付いていけないだろうということだけが、
はっきりとわかった。
メロドラマっぽい友情・愛情は少しばかりカスルけれど、
久々に超感情移入しにくい映画。

Sex and the City

映画「セックス・アンド・ザ・シティ」オリジナル・サウンドトラック

オムニバス風・4人のエピソード同時展開がまずいのか、
一応主人公？的に存在するヒロインの、現実離れした生活に
ひたすら付いて行けないせいか。
結婚「式」で舞い上がる幼さも、キャリアのある年齢からすると、
ひたすら浮いているし、男性の躊躇も年不相応な感じもする。
要は恵まれて生活している人間の、灰汁（あく）すくいみたいな、
贅沢な映画で、憧れを刺激するよりもうんざりさせられてしまう。
これを、夢を与える恋愛･結婚・友情映画として作ったとしたら、
？？？　女の虚栄心と脆さ・愚かしさと依存を
ファッションを織り交ぜたセクシャル風味の映像としてお届けします、
なら納得できるような気がする。

アメリカ人の大多数がニューヨークでの生活なんて知らずに過ごす。
そういう人々に優越感を撒き散らしたいのか、
ティーンエイジャーに夢を与えるつもりなのか、
キャリア世代にはっぱを掛けて、エグゼクティブ・セレブへの幻想を
むやみやたらと掻き立てているだけなのか。
web週刊誌拡大版みたいに。

せっかくの映像美も、乙女チックな心のときめきも、
切ない恋心も、めらめらとした欲情も、
安っぽいドラマの構成から抜け出ていないような気がするのは、
私だけ？　どこに何にそこまで激しく共感して話題になったのだろう、
アメリカでは？　日本ではどうか知らないけれど、
周囲ではちっとも話を聞かないので、みんな見てないのかも。
それとも、10年がた若ければ興味がある内容なのか。

お肌のお手入れや脱毛を忘れて水着になり、友人に非難され、
「子供のいる家庭の生活がわかっていないのよ！」と喚く場面。
あれにはちょっと共感できたかな。
若い年下の恋人とのバレンタインの為に、女体盛りは唖然。
やってみたくてもできそうに無いあれこれを、夢見させるのが映画。
わかっていても、生々しいというか、練れていないというか、
どぎまぎ感だけは十分でも、付いて行けないのは、
やっぱり私の年齢のせい？

SEXも都会生活もお金に不自由しない生活も、
映画の中だけで味わっておけばいい事なのか、
なかなかしつこい歯の痛みでボーっとしながら、
映像は煌き続ける。老いも病も怪我も何もかも関係ないように。
ブランドをレンタルするように、映画の世界を生活の中にレンタルできない。
でも、人は映画を見る。一時の夢を見る。
その映画という夢が、苦いなんて。
私にとっては、物を言えば言うほど唇が凍えるような気がする、
能天気なアメリカの都会神話。そんな映画？
SEX and the CITY

そして帰宅して娘に見せた。お持ち帰り用袋に入った、
抜歯した割れた歯を。こうならないように、
しっかり歯を大切にしてねと。
長い長い金曜日の終わり。
SEX and the CITYとは遠くかけ離れた、私の日常。

SEX AND THE CITY:THE MOVIE

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