Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

還暦を迎えた正倉院展

第60回正倉院展。家人が期間限定招待券を貰って来た。
という訳で、早速初日から見に行くことに。
娘は3回目。1回目は家人が入院中の保育園年長さんの時。
2回目は去年。そして今回3回目。もはや慣れたものだ。
見る気満々、小学生用前売り券を近鉄奈良駅で購入。
9:40 早くも入場制限。しばし並んだ後、入場。
すぐに音声ガイドを借りて、3人3様のペースで鑑賞。

まずは「全浅香」というでっかい香木。
先週匂い袋を作っていたから、娘の反応もいい。
蘭奢待(らんじゃたい)が有名だけれど、これはまだ香木としては
熟しきっていない、香りが浅い仕上がりのものだとか。
こういうものがあったのねえ、ふむふむ。
そして、繊細な文様が竹の表面に彫られた刻彫尺八。
おめでたい法曹華の花々、鳥や蝶、女性の姿が今も美しい。
その音色も聞けるのが展示の楽しみ。(音声ガイドは演奏も)


そして今回の目玉、平螺鈿背発覚鏡。その綺羅綺羅しさに唖然。
娘は「おかあさん、どこに鳥が二羽ずついるの?」と訊いてくる。
うーん、結構見つけ易いんだけれど、クイズみたいなデザイン。
3時6時9時12時、時計の方向に一つ見つけると後は楽勝。
東西南北の方向にいるんだねと嬉しそうに納得。
また、その鏡が仕舞われていた箱が木製ではなく牛革に、
漆を何層にも塗って固めたものだと知ってびっくり。


更に、鉱物の美しい輝きが大好きな娘。
白瑠璃碗のガラスの輝きや、螺鈿、モザイクにうっとり。
シルクロードを越えて伝わった宝物は、このアジアの端っこの
小さな島国の小さな蔵の中に大切に仕舞われてきた。
世界のどこにも当時の輝きを伝えているガラスは無い。
この歴史ロマンにいつも胸はときめく。

正倉院の謎

正倉院の謎

東アジアの王権と交易―正倉院の宝物が来たもうひとつの道 (AOKI LIBRARY 日本の歴史―古代)

東アジアの王権と交易―正倉院の宝物が来たもうひとつの道 (AOKI LIBRARY 日本の歴史―古代)

正倉院文書の国語学的研究

正倉院文書の国語学的研究


正倉院展が毎年行われていても、それほど観たいと思わずに過ごしてきた。
3年前家人が長期の入院中、娘を連れて鹿を見せに奈良公園へ。
気分転換を兼ねて大仏殿から散策。その帰りに正倉院展へ。
小さな娘は思いがけず興味津々で御物に見入った。
何に魅せられ、関心を抱いたのか。
おそらく心引かれる美しいものがあったのだろう。


古(いにしえ)の物、古臭いものという先入観もなく、
ただ自分の感性で心引かれるものがある。
どんな価値があるかどうか、専門的な知識など関係なく、
ただただ美しい・綺麗・面白いと感じる物を愛でる。
そういう気持ちが持てる、共有できるというのは楽しい。
たとえ感じ方が異なるとしても、共に鑑賞できるのが楽しかった。
あれから3年。親子3人で去年に続き奈良に来ることができた。


古の衣装の佩飾品。小さな魚、彩色された鳥、
糸で編んだ網の中の水晶玉、瑪瑙玉、琥珀玉。
貴族はどんなふうにこのアクセサリーを楽しんだだろう。
小花の刺繍された帯の色鮮やかさに目を見張る。
その一針一針がどんなふうに刺されていたのか、想像する。
そして、小さく精緻なものとは対照的に、
その政治的な国家宗教としての仏教を支えたもの、
盛大な儀式に使われたであろう、天蓋や幡。
権力の座を強調する品々にも圧倒される。


幡(ばん)というものは、吹流しのように
きらびやかな布製のものばかりだと思っていた。
それが、金属製。大きな布のように縦長の透かし彫り。
鈴が沢山付いているデザインに意表を付かれる。
今回60回目の記念冊子の表紙にもなっている金銅幡。
4層に分かれているデザインの金属の幡が風に揺れ、
太陽の光を受けて輝きながら、鳴り響く鈴の音色。
きっと視覚的にも聴覚的にも効果抜群だったに違いない。


ユニークな展示物。人魚のミイラ? 
いえいえ、龍のミイラと称されたテンのミイラ。
人の顔の形をした椰子の実。ユニークな表情が笑える。
貝で作られた匙。南国で食事をしているみたい。
病気欠勤をする旨と許しを請う為の届出書を集めた巻紙。
これが古(いにしえ)の天平人とは思えない、リアルな内容。
親近感を感じてしまう。
いつの世にも病に苦しむ人がいて、仕事を全うできなくて、
忌引きやその他、家の普請、色んな理由が提出されている。
それがまた千年以上の時間を経て、公けになっているのも面白い。

日本美術のことば案内

日本美術のことば案内

娘が欲しいというのでみやげ物コーナーでは、
琵琶の模様の付いたタオルのハンカチ。
『日本美術のことば案内』という本も購入。
今年の正倉院展はファッションと食、本当に衣食住に焦点。
御物、宝物というよりも日用品。そして儀式用の品々。
例年より、内容的にとっつき易いものだった。
あっという間に2時間以上。昼ごはん時に。

 


さあ、今日はどうしようか。とーちゃんかーちゃんは天平の彩り弁当。
娘は柿の葉寿司(鮭・鯖)をつまみながら、ランチタイム。
他にも奈良100年バーガーや酒蒸饅頭を試してみる。
何でも10/26は正岡子規の俳句にちなんだ柿の日との事。
例の、「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」ですね。
農協がやって来て、柿生産量第2位の宣伝。
そんな店を冷やかしながら、かーちゃんが買ったのは干し椎茸。

 

さあ、どこへ行こう。午後の予定を考える。
まだまだ時間のある昼下がり。
古都、奈良で過ごす一日は続く。

西洋美術のことば案内

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シルクロードと世界の楽器―音楽文化の東西交流史

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