Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

再びお香体験 ― 組香

昨日の授業参観とマリンバに少し写真を載せました。
どうぞご覧下さい。

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さすがに今日は雑事に追われた。毎日出歩いている訳には行かない。
家事は滞る。処理すべき事柄は山ほどある。片付かない。
それでも今日は夕方一つイベントの予定。
先日も少し記事にしたが、泉州地域が誇る美術館、
久保惣美術館での[香炉―東アジアの香りの文化をたどる」展示に伴い、
先月に引き続きお香体験。前回は匂い袋を製作。
http://d.hatena.ne.jp/neimu/20081018/1224612110


今回は、香合わせ。
家族で組香初体験! 先月のうちに申し込んでおいたのだ。
今回も講師は泉山御流の栖瑲庵 神垣裕香先生。
本日は仙客(せんかく)香というもの。
香炉が順番に三つ廻って来るが、そのうち一つだけ違う香り。
それを当てるというもの。ただ当てるだけではなくて、
一つだけの香りが一番目に出たら 鶴
        二番目に出たら 田鶴
        三番目に出たら 仙客
と答えを書く紙に記す。


この辺りがなかなか風流で、古典の世界の旧暦に従い、
10月の鶴と残菊をあしらった香合や掛け軸など、
お道具にも趣向を凝らすものらしい。
目で見て、香りを嗅いで(お香の世界では聞くというが)楽しみ、
ただ答えるのではなく、紙に筆で暗号のようなものを使って記す。
そして、当たっていれば「叶」という文字を書き入れる。


香りを聞くのは作法として三度。香炉を傾けてはいけない。
それだけ注意されて、難しい規則・お作法は無しということで
今回家族全員、組香初体験。結果は如何、相成りますか。
乞うご期待。

香千載―香が語る日本文化史 (Suiko books (097))

香千載―香が語る日本文化史 (Suiko books (097))


二つの班に分かれて、自由な席で開始。
多少なりともお茶席でお香をたしなんだ経験。
お作法が最もよく見えるお正客の席に娘を。
私が教えることができないことは、周囲から学んでほしい。
器具を改め拭き清める、袱紗を用いる所作は茶道とよく似ている。


泉州、堺はお茶の世界の千利休で有名。
お香でも有名だったらしい。自由都市堺、
貿易で栄えた堺には香木や香料も沢山あって、
香道はそういう財力・経済力と古からの有職故実が結びついて発展。
遊び心というものは、凝れば凝るほど古来お金が掛かるもの。
わび・さび、優雅な古典の世界は趣味の世界。
夏炉冬扇の言葉通り、直接生活を支えるものではない。
現代社会では見落とされがちな価値観に基づいた世界だ。


裏千家のお茶を習った若かりし頃、「お茶」だけを習うつもりだった私。
本当に何も知らない浅はかな人間だった。教科書で古典を学び、
空薫(そらだき)薫物(たきもの)という言葉を知っていても、
それは単なる単語。辞書的な説明。
実際はどういうものか、どんな香りか、どういう道具や
所作が必要か・・・という知識は全く無かった。
母の引き出しの中の古びた白檀の香りの扇子。唯一、香木めいたもの。
当時は今ほど巷にお香グッズが売っているわけではなく、
その道の人の御用達のお店は、そんじょそこらには無かった。


今でこそ老いも若きも香りを楽しむ。
様々な香りのお香が癒しブームに支えられ、
東南アジアの様々な香り、欧州風の香り、とりどりに揃えられ、
線香・練り香・香水・芳香剤・スプレー、香りの在り方も多様。
しかし、香道で用いるお香は、下手をすれば漢方薬そのままの香り。
今風の香りではなく、お婆ちゃんの香り、お蔵の香り、
古びて鄙びた香りを連想させ、雅びというイメージには程遠い。

くらしを楽しむ四季の花結び

くらしを楽しむ四季の花結び

お香を楽しむ

お香を楽しむ

茶道・香道・華道・書道、歌道、その道を極めた者が趣味文化人、
真の教養人だとすれば、生きているうちに到底そうなることは叶わない。
一流のものを揃え、用い、一流のおもてなし。一期一会の為に。
そういう心映えを持って生きるということを貫く生活、人々。
一流を知るものは一流を知るの世界。生き方の姿勢の問題。
そういう趣味の世界に生きることは、現代社会では難しい。


経済的な問題ではなく、心の持ち方の問題。
余裕も余暇も、全て限られた社会で、時間を作り出すことは難しい。
習い事は難しい。戦国武将の茶の湯ではないが、殺伐とした生活だからこそ、
潤いが欲しい。下手な習い事と笑われようと、かりそめの体験とののしられようと、
その世界を垣間見てみたい。そういう気持ちが常に沸々と湧いている。


だからこそ解説付きで楽しめる、今日の組香。
娘が組香初体験でドキドキするように、かーちゃんもドキドキ体験。
言葉、専門用語、古典文学の中の知識、その中でぼんやりとした知識、
緊張と興味、目の前で見て、聞いて、知って、体感したかった。
何故なら、幼い頃の習い事に算盤やピアノはあっても、
習字やお茶・お花などは経験したことが無かったから。


小さい時に体験し過ぎると良くない、何にでも飽きっぽくなると言う人も。
感動が薄くなり、あれもこれも刺激が強すぎるという意見も。
確かにそれも一理。でも、我々家族はアウトドア派ではない。
どちらかというとインドア派。だからこそ、他の人が体験していない事を。
滅多に体験できない事を親子一緒にすることに意義があるのでは・・・。


幸いなことに、親子連れの参加者は私達だけではなく、ほっ。
おまけに先月も匂い袋の会に参加したので、匂い袋もう一つ御土産に頂いた。
お香体験皆勤賞というわけ。でも、嬉しかった。
市の陶芸教室の様々な香炉を見るのも、掛け軸や書を見るのも。
(草書体で読めないのですが、鶴と残菊の藤原定家の歌)
こうして関西文化の日二日目、久保惣美術館の片隅で雅びな時間。
写真は撮ってはいけませんということで、記録が残せずちょっと残念。

香三才―香と日本人のものがたり

香三才―香と日本人のものがたり

図解 香道の作法と組香

図解 香道の作法と組香