Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

源氏物語ミュージアム

リベンジでございます。夏にドライブで出かけてみれば、
源氏千年紀で賑わっている宇治の地、博物館はリニューアル工事中。
まあ、宇治神社宇治上神社平等院と見て回ったものの、
私としては、ちょっとあてが外れた思い。
午前中サクサクと家事をこなしていたら、1時間ぐらいドライブのお誘い。
それではとおねだりして家人宅からミニドライブ。
大阪市内は込んでいたものの、高速に乗るとあっという間に、
京滋バイパスの方に向かって車は流れていく。
お酒とビールのサントリーで有名な山崎を横目に見ながら、
宇治に着けば、紅葉の季節なのに思いのほか人出は少ない。
平等院の方に、みんな流れて行ってしまっているのか。
すんなりと駐車場に車を止めた13時20分。
源氏物語ミュージアムは紅葉美しい、ガラス張りの館だった。

 

清楚な佇まいの館内に一歩足を踏み入れてみれば、
本日はお客さんが一杯なので、別室の方からと言われる。
そこでは『浮舟』のテーマで映画上映。館内見学の前に、
結構暗く不気味な演出の「橋姫」が解説する短編映画を見ることに。
思わず、うーん一緒に見ているのは小学3年の娘なのだがと、
母親らしく気遣ってしまった。
演出も構成も、なかなかにおどろおどろしい。


瀬戸内寂聴が説くまでもなく、『浮舟』のテーマは重い。
当時の女性にとっては今より困難な女性の自立を出家に求めて、
二人の貴公子の間を彷徨う女性、浮舟を配置する。
「宇治」は「憂し」と掛けられた、冥府の地。
今日の都が雅やかな建前の世界であれば、本音の地。
そこで繰り広げられる愛憎劇は、半端な昼メロどころではない。

        

元々『源氏物語』そのものが、古典文学かつ、
お子様には今一つではないかと思えるほど、
R指定が入ってもおかしくない小説。
高校の古典の時間、もう少し踏み込んだ授業ならば
面白いのだろうけれど、そうなると横道に外れてしまいそうだしと
感じたことは、一度や二度ではない。源氏物語は大人の小説なのだ。

歴史的な視点から組み立てても、純粋に文学的に解釈しても、
心理学的に分析しても、どこから見ても面白いのだけれど、
ハッピーエンドにならない物語というところに、
人生を達観した作者の洞察が窺える一大巨編。
そういえば最近では、万葉集のとある歌の解説でさえも、
TV講座で大胆に「女性の性的妄想ですね」なんて言葉をさらりと挟んで
朝っぱらから講義・放映している時代。


あさきゆめみし』の作者は漫画を描くに当たって、
少女マンガなので嫌らしくならないように工夫したらしいが、
元々がどうあがいても、運命や自分の気持ちから逃れられぬ、
人間というものの浅ましい生き方そのものを描いているので、
『宇治十帖』の部分だけが、俗気がない美しい世界になりようがない。
強烈なインパクトの映画を見終えて、やっと館内へ。

あさきゆめみし 源氏物語ナビBOOK

あさきゆめみし 源氏物語ナビBOOK


牛車や貴族の邸内を再現した展示室は、実物大の人形、
調度品のしつらえ、源氏の六条邸の再現模型など、
その世界に憧れる人ならば、それなりに浸れる展示。
どこをどのようにリニューアルしたのか、以前の様子を知らないので、
何とも言いようがないのだが、視覚的に「体感」できるのを重視したのか。
でも、「源氏物語のげ」も知らないと、ぴんと来ない世界。

 


子供連れはさすがに少なくて、圧倒的に女性客が多い。
旗を持った案内人に付いて歩く人、観光バスで訪れている人。
年配のカップル。家族連れは少々浮いた感じがしてしまった。
それでも、漫画で『枕草子』を読んで平安時代に親近感を持つ娘、
彼女なりに興味津々。『源氏物語』が世界的に有名な文学作品なのに、
枕草子』が、エッセイどまりの認識しかされていないのに、
大いに不満のよう。まあ、私小説大河ドラマの違いだしね・・・。


常設展示を見終われば、源氏物語絵巻の復元の様子ビデオ、
特別展示の、宇治十帖になぞらえた染色・着物の展示。
様々な紫を配置した、巻名を頂いた着物の美しさに見入る。
源氏物語の素晴らしさは、様々な分野の美意識に影響力大である点。
茶道華道香道、和歌は勿論、様々な文学に影響を与え、
平安文化を知る上での総決算的な位置を占め、
人間社会の縮図を、人の心、生き方を投影し続けている。


個人の感性で切り取られた評論的なエッセイである『枕草子』とは異なり、
読み手の側の感性が試される、幾らでも深読みのできる懐の深い作品は、
単なる文学作品異常の価値を持って、今日まで読み継がれてきている。
娘にとっては源氏物語はまだまだ早いけれど、
どこまでわかって今日は楽しんでくれたのかな・・・。
実家に仕舞っている『あさきゆめみし』を出してみるかな。

 

土産物店兼喫茶店は『花散里』そこで、あれこれ物色。
娘は干支の兎ストラップとトンボ玉、家人はお香、
私は友人へのクリスマスプレゼントになるものを買った。
休憩コーナーには、源氏物語クイズや、登場人物になるとすると誰?
パソコンで遊べるコーナーがある。
そんなこんなで時間を潰したら、あっという間に夕暮れになってしまった。
侘しげに揺れるムラサキシキブの実を眺めて、
この美術館の庭は、春ではなく秋中心だなあとしんみり。

        


晴れていたと思ったのに、帰路に付く頃には小雨模様の夕闇。
それでも、先週妙見山で見ること叶わなかった紅葉を堪能し、
錦模様の山々を眺め、人混みに紛れることなくのんびりと午後。
11月最後の土曜日は、しっとりと終わった。
仕上げは、21時からの『しゃばけ』(うそうそ)。
思えば古典にちなんで過ごした一日となった。

まんがで読む古典 1 枕草子 (ホーム社漫画文庫)

まんがで読む古典 1 枕草子 (ホーム社漫画文庫)

うそうそ しゃばけシリーズ 5

うそうそ しゃばけシリーズ 5