Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

ぬるくゆるびもてゆく

建物の暖房に守られているけれど、顔がぴりぴりして痛い。
肌が乾燥しきっているのがわかる哀しさ。
そして、どういうわけか会議が三つ。本来の仕事は細切れで、目鼻が付かない。
午前中、会議の資料を作るのに追われ、昼脱力、午後いちに会議。
そして、ぼーっと一服して15時半から会議。頭が回りません。
糖分が足りない。酸素も足りない。何よりもキャパシティが無い。
そんな感じで一日が終わる。


白い脳みそ、灰白質、何だか崩れてませんかって感じ。
頭がぐらぐらします。
――冬はつとめて。雪の降りたるはいふべきにもあらず、
霜のいとしろきも、またさらでもいと寒きに、
火などいそぎおこして、炭もてわたるもいとつきづきし、
昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、
火桶の火もしろき灰がちになりてわろし。――


昼行灯ではなく、燃え尽きて白い灰になった明日のジョーでもなく、
何だかもう、金属疲労のように、キャパシティオーバーというか、
これ以上このディスクに書き込み出来ませんというか、
そんな感じがする。結局私は8Gもあるフラッシュメモリにはなれない。
死ぬほど頑張っても、1GのSDカードほどには及ばない。
疲れてきました、これ以上読み込み書き出し出来ません。
ガガガガガ、って感じで脳内に異音が響くような感じがします。
・・・、耳鳴り。


更年期、心と体の波にもまれて年を取るっていうことは、
こういう感じなのかしら。
「ぬるくゆるびもていけば、白き灰がちになりてわろし」
かっかと勢い欲燃え盛る炭火でもなく、
しっかり火種を蔵(かく)し持つ熾き火でもなく
もはやフワフワと頼りない白い灰がちの、昼下がり。
人生の真昼時をどんどん過ぎて時計の針がやたら早く進んでいる感じ。
平均寿命まで生きられる気が全くしない。

鈍色の歳時記 (文春文庫)

鈍色の歳時記 (文春文庫)

脳みその研究 (文春文庫)

脳みその研究 (文春文庫)

歯科大の先生からは、創って半年も経たない義歯の紛失は、
作り直す場合全部自費で保険が利かないといわれました。
型取りから全て、自費かあ・・。こういう時、
何らかの保健に入っていれば良かったと思うくらい。
でも本人のうっかりミスで壊したではなくて、
紛失まではカバーできないか・・・。


時計、誕生日に買ってあげようと家人。
その台詞をもう何年も聞いているので、あてには出来ない。
スィートテンダイヤモンドも普段の誕生日プレゼントも、
クリスマスプレゼントも無かったのに、落ち込んでいる気休めに言われてもね。
貰わないとプレゼントする気合も、ときめきも消えるもの。
『賢者の贈り物』の時代はとうに過ぎ去った、私たち。


そんなふうに拗ねてしまう、今日。鬼やらい。
心の中に住んでいる鬼が多すぎて、隠れる場所が無いくらい。
本来、鬼は隠(おに)なのに、あちこちから溢れ出てきそう。
こういうのを、「呼んで来る」「当たり」「引いて来る」とも。
縁起物、運、アクシデント、ジンクス、重なる時は重なって、
本当に、どうして良いものやらって感じ。


まめまめしく働き、まめに動き、まめに気を配り、
まめで達者で年を重ねて生きていく。
年の数だけ豆を食べ、いわしの頭を門口に立て、
そんな鬼やらいが出来なくなってしまった、とうとう今年。
母は、今日が何の日かもわからない。


我が家の豆は、一夜飾りにならないよう、前もって準備しておいた豆は
依然として行方不明。全く持って、忽然と姿を消し・・・。
季節の行事一つとっても、家族で行えないと張り合いが無い。
娘としようとコンビニに走り「りらっくま」枡に入った豆を買った。
でも、何だか撒く気力がお互い湧かないまま夜が更ける。


家族であり続けることは、単に遺伝子の問題ではなくて、
いろんなことが一緒に出来てこそ、食べられてこそ。
みんながばらばらの食事、ばらばらの気持ち、
ばらばらの時間、ばらばらの活動。
生活を維持するための仕事が、充実した時間に繋がらない。


まく豆も無く、まめまめしく身の丈にあった生活も出来ず、
居汚く薄汚れて、白い灰になってしまっている、
ぬるくゆるびもていけば路線で、立春とは。
鬼は鬼らしく、暴れ回れるうちが鼻。
いつも泣いた赤鬼だったり、身を引く青鬼だったり、
成敗される鬼が島の住人だったり、
こんなふうに気力体力の根底がふにゃふにゃになったり。


元気に豆播きする家族がいる家、行事の出来る家。
そんなふうに今年は出来なかった。
残念。

せつぶんだ まめまきだ (行事の由来えほん)

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日本の古典をよむ(8) 枕草子

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