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海のトリトン

いや、これを音楽の分野に入れていいものかどうか。
でも、マンガ・アニメという項目と立てていないので・・・。
NHKBSアニメ夜話というものがあるのを知っていても、
見たことは殆どなかった。対象年齢が私よりやや若め。
知らない、それほど見ていないアニメも多い。
しかし、「海のトリトン」は別格
我が家にカラーTVがやって来た年に見た、中学1年の時のアニメ。
オリハルコンの輝きが白黒から赤に変わった時の衝撃!


どれだけ熱中して見たことか!
オープニングの主題歌をどれほど遠足の時に熱唱したことか!
友人はファンクラブに入り、雑誌を出していた。
セル画まで手に入れていた。ラミネート加工の無い時代、
好きなシーンの写真をビニールの定期入れに入れて、持ち歩いていた。
私たちの等身大の憧れの王子様、トリトン


ということで、偶然ではあったのだけれど、
今夜、この番組に付き合うことに。
いわずと知れたアニメマンガカルトオタク評論家、
いまやダイエットの星と化した岡田斗司夫が熱く語る。
ゲストも当時の作画担当者、羽根章悦。
当時中学2年でトリトンの声を担当、塩屋翼
彼はむっちゃ「おじさん」になっていて、正直夢が壊れた。(笑)
まあ、私も年を取ったから贅沢は言えない。(爆) 


懐かしくて涙が出そうなオープニングの画像をバックに
出演者がマイクを回し持って、主題歌を歌うという、
出だしからハイテンションで始まった番組、
本日はどんな蔵出し映像が拝めるのか。
心はもはや中学生。わくわくしながらTVに向かう。
ああ、全く、あんたは一体幾つなのよ。

海のトリトン DVD-BOX

海のトリトン DVD-BOX


手塚治虫の『青いトリトン』原作だったということは当時から知っていた。
新聞連載マンガだったし、単行本でも読んだ。そしてびっくり。
余りにも原作とアニメとはかけ離れていた。全く別の話。
そして、原作のトリトンよりも、アニメの方が断然素敵!
物語設定も、一話一話簡潔ながら深い!
子供心に熱く訴えてくるものがあって、文学少女萌え萌え。
確か、この作品を大学の卒論に書いたり、分析したり、
1冊の本にまとめたものを図書館で一度読んだ事がある。


きっと今の時代ならば、あちこちのブログに、
コミュニティに連日記事が立ち上がった人気番組だったろう。
海のトリトン』は、少女の心鷲摑みのアニメだった。
クラスの男子生徒がどうこう言っていたのを聞いたことはなかった。
岡田斗司夫が少年期の父性に対する云々、
オリハルコンの剣の威力は・・・、青少年の性の衝動、
ペニス云々というお話が続き・・・。岡田さんフロディアン!?
というフロイト的な性を土台にした解説には唖然・・・。
いや、論の展開は納得しましたが。
そういう目で見ることの可能なのか?
いや、男性自分の経験を重ねてそう見るの?


片や女性のゲスト、小谷真理は「何と言ってもヘプタポーダ」
懐かしい名前ですね、トリトン族と敵対するポセイドン族の女戦士、
深い海よりも青い空、明るい太陽に憧れていた女性。
トリトンに襲い掛かる敵の中で唯一正統派美人。
確かに人気キャラではあるよね。
この女性からポセイドン族に悲劇の影が見え隠れしたし。


トリトンの相方になるべき人魚のピピは、人気がなかった。
まあ、女の子同士から見れば生意気な我侭キャラ。
でも、お互い全く知らないもの同士がトリトン族最後の二人という
かなり悲惨な設定で好きになるもならないも、お互いしかいない。
これはかなりきつい設定。究極の恋愛と仲間。選択肢が無い。
後は、海豚やせいうちしかいないんだもの。
それを割り引いても、お子様でうざい存在のピピよりも、
中高生にとっては憧れの対象としてヘプタポーダ、
兜を被って戦い、戦士を辞めて殺された悲劇のヒロイン。


宿命の中、最終回で明かされるトリトン族とポセイドン族の秘密。
オリハルコンの秘密。迫力の最終回はハッピーエンドではなかった。
これは子供向けアニメにとっては、タブーを破った作品。
ある意味、『フランダースの犬』よりも凄い。
自分の努力や誠意が報われないばかりか、
大勢の人間の命を奪う結果になっていた、
ポセイドン族全員を滅ぼす結果に繋がっていた。
これではね・・・。


後にオリハルコンという物質が何を意味するのか、
この言葉に出会うのは光瀬龍の『千億の昼と百億の夜』。
文学少女はこれを原作にした萩尾望都の漫画の方にの熱中。
オリハルコンの神秘は、私を遥かSFの世界に導いたっけ。
そう、その頃には物語はハッピーエンドじゃないということが、当たり前。
人生は楽しくて夢一杯ではないとわかる年齢だったし。
エネルギーにはプラスもマイナスもあると実感していたし。


とにもかくにも、変化に不安を抱きつつ、未知の世界に憧れる思春期、
揺り返し、揺り戻しを日々感じている多感な時期に、
波に揺れながら危なっかしく白いイルカの上でバランスを取っている、
そのトリトンの姿に、自分の何がしかを重ねて見ていたのには違いない。
いやあ、中学生時代なんて・・・(遠い目)


それにしても初めて知った事もあった
後に「ヤマト」を生み出す西崎義展のプロデュースの下、
ガンダム」の富野由悠季が大胆にアレンジしてアニメ化したなんてね。
手塚治虫を目指した作品にしたかったということだけれど、
ここにも先駆者である手塚治虫と後進の者達の、父と子の葛藤、
構図が潜んでいるみたいだ。乗り越えようとするもの、
乗り越えられる為に存在するもの、世界の構図がアニメの中にも存在。


そして、私はガンダム世代ではない。
せいぜい『宇宙戦艦ヤマト』まで。
もはや私は高校から大学。TVの前に座る時間は余り無かった。
それに、ガンダムはより男の子の世界、だったような気がする。
ヤマトは女子にも男子にも人気があったけれど。
ああ、アニメ一つとっても時代の流れを感じる。
遥か昔々、今の若い人たちが生まれる前の話。
私たちにも少女や少年の時間があったころの話。


そんな時間を思い出させてくれた、BSアニメ夜話
トリトンへのメッセージはこちら
コンパクトに情報提供してくれているのはこちら。
http://www.kanshin.com/keyword/1187914
少し、思い出に浸りました。

百億の昼と千億の夜 (ハヤカワ文庫 JA (6))

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百億の昼と千億の夜 (秋田文庫)

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