Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

味がわからない食事

人生には思い通りに行かないことがあって、他人の目から見てどうということは無い、
ささやかなことつまらないことが、当事者にとっては一日の気分を左右。
険悪な関係を作り出したり、憤懣やる方ない思いにとらわれたりする、
「きっかけ」「原因」になっていたりする。
先週から今週にかけて、親知らずが私たちの生活に少なからぬ影響を及ぼした。


親の心子知らず。親知らず。乳歯が無いのに生えてくる親知らず。
親の顔を知らない不憫な歯? いやいや最近の人は親知らずなんぞ生えないらしい。
当節の若者は、人類の進化は親知らずな世代は、「親知らず」なんぞ生えない。
親知らずが生えてくるのは原始的な口腔構造、遺伝的要素?
単に顎が細いだけ? それはともかく、親知らずの話でいい話を聞かない。
聞いたためしがない。物騒な親知らず談義ならいざ知らず。


歯医者さんをはしごした話、顎をトンカチで砕いた云々。
血が止まらなくて、顎から口が腫れて、幾つにも細かく砕いて。
本当かどうか、およそ歯科の中では親知らず関連は「外科」領域。
傷口を縫って云々もよく聞く。
まさか、家人がそんな目に。それが先週末。
よりにもよって翌日結婚記念日だから、家族で美味しいものでもと思っていた矢先。
何でこの日に抜かないといけなかったのかと、腹立たしくなるくらい。
絶対この日でなければ? と食って掛かりたい心境の私。



調子が悪いなんて全然聞いてなかった。
抜歯して縫ったので、痛みは無いけれど余り食べられない。
え? え? そうなの? いつから? 
いつ予約してそうなったの?
結婚記念日と浮かれて合流した週末、開口一番。
「親知らずを抜いたんだ」「え?}
家人の心配をするよりも、楽しみにしていた予定が潰れたショック。
狭量な私を笑って下さい。


記念日なんぞ大事にする気持ちなんぞ無いから、
特別な思い入れなんぞ無いから、明日明後日その先の予定なんぞ気にせず、
何の相談も連絡も無く、土曜日に会うと「昨日親知らずを抜いたんだ」と来た。
お陰で研修付けの楽しみ、家族で息抜きの食事もままならず、
味気ない土日。食事を作るのはいいけれど、「硬いものは駄目」
「辛いものは駄目」制約付きの食事を作るのは、気を使う。
前もって連絡されていると気にならないのだが、
面と向かってあった瞬間言われると、何で今日なんだと腹が立つ。


仕事絡みの出張や、授業参観・懇談会、ボランティアは勉強・研修、
出ずっぱりになると忙しい充実感とは引き換えに、心はささくれ立つ。
どこかでゆっくりしたいと思っているのに、できない。
自分で入れた予定、自分の仕事の予定、家庭内の予定、
さまざまな辛味の中でやりくりしながら、ほっと一息食事、
美味しいものと思っていた矢先、「親知らずを抜いたんだ」
予約して歯医者に行くならば、前もってわかっていたはずだろうに、
どうして何も前もって連絡して来ない・・・と荒れた。


健康上の出来事よりも、食い物の恨みに近い苛立ちが心を占める。
情けない私の精神構造。そのまま週明けまで持ち越し。
仕事、通院、その後出張の予定が・・・。
歯内治療科の先生曰く、「親知らずですが、まっすぐ生えているので、
かみ合わせの関係上神経を取って治療しましょう」「え?」
奥歯の治療に神経を取る話は聞いていたけれど、これは親知らずだった?

親知らずのはなし

親知らずのはなし

親知らずで蘇るあなたの歯―自家移植で入れ歯から解放!

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幸いなことに家人のように、横に生えて虫が食って抜かなくてはならないではなく、
詰め物をして長年使ってきた奥歯、親知らずが傷んだ詰め物の下から虫が食い、
更に幸いなことにあまり本人には痛みがわからないまま、治療となった。
・・・神経を取った歯は、根幹治療を行うが、結果的には長持ちしない。
歯としては死んでしまうので。でも、致し方ない。


何も夫婦だからって、親知らず繋がりの先週今週にならなくても。
最近の治療はわからないが、何か電極のようなものを当てて
「神経の長さを測っている」そうで、口元で「ピーヒョロロ」と音がする。
麻酔をかけて神経を取るための歯内治療。痛みもよくわからないまま、
次回の予約を取って終了。
「2時間後ぐらいには麻酔が切れますが、それまで飲食は控えてください」


どうせ出張だし、昼食抜きで出張はきついけれど仕方がない。
ぎりぎりの予定で動いているのだから・・・。
出張先に出向いて驚いた・・・。今日はいつもと違った。
これを仕事をしているご褒美と言っていいのか、
よりによってこういう日にといっていいのか。
パーティ兼仕事だったのか・・・?


いつもの私なら嬉しいが、仕事全般を終え、ねぎらいとともに供される
フルコースの食事、たおやかな音楽。味わうこともままならず、
口の中に違和感を覚えながら、何とか食べる。
アルコールも口にできないし。
ああ、よりによって、昼食抜きだからありがたいディナー。
しかし、噛み応えも味も、口の中の感覚もいつもと違う今日。
麻酔で味もよくわからないまま、ディナー。


家人をなじった報いなのか、膨れてむくれてぶーたれた報い。
食い意地の張った報いなのか。
親知らずは、ご馳走知らず。
親知らずは、ダイエットがお好き?
豪華な食事を久々に目にして、思ったこと。
自分だけ、こういうものを食べる機会に恵まれた空しさ。
親に、家人に、娘に申し訳ない気持ちで過ごす。


親知らず子知らず。親の気持ち子ども知らず。
家族の心、切なさを、今日知る夕べ。
親知らず子知らず、心知らず。
ご馳走に恵まれなかった先週、恵まれた週明けの皮肉。
そんなスタートを切った私。
味がわからない哀しさ。
贅沢を味わえない後ろめたさ。
親知らずは疼く。とーちゃん、ごめんよ。
娘よ、ごめんよ。

歯内治療学

歯内治療学

食い意地クン

食い意地クン