噛み締め過ぎ

ブラキシズム。クレンチング。
この言葉を知ったのは家人が初めて入院した前後だ。
緊張が続く中、過覚醒に陥った私は眠ることが出来ない。
なのに、体に疲労感が感じられない。
普通に疲れらしきものを感じるようになった時、
既に家人の入院から2ヶ月以上が過ぎていた。
その頃、いつの間にか歯を噛み締めている自分に気が付き、
これはいかん･･･と思っていた。

歯のお手入れには気をつけていた。特に娘には虫歯を作るまいと、
安易に削る、神経を取る、そんな先生に掛かることの無いよう、
娘の歯には気をつけていた。仕上げ磨きも点検も何もされず、
自分の歯が「人より弱い歯」などど歯科医に言われ、
抜かれ放題削られ放題、矯正だからと糸切り歯を抜かれ、
どんどん歯が弱っていく、そんな治療を受けさせたくないと。
殆ど削られ過ぎて弱くなった歯。新しい治療では抜かないとされる歯から、
どんどん抜かれた矯正。あの悪夢と同様・・・。

入院や治療で治らない病気と、「持ち直す」だけが望みの、
そんな家人の入院生活と向かい合ったあの期間、
私の歯はどんどん悪くなっていったような気がする。
「歯を食いしばって頑張る」という言葉があるが、
「石橋を叩いて渡る」よりも「叩きすぎて渡る橋を壊す」と友人に称された、
私の性格は、自分の歯も噛み砕いてしまったのかも知れない。
そのあと、次から次へと歯は折れたり、欠けたり･･･。

弱音を吐いてはいけないと、親に心配を掛けてはいけない、
娘に泣き顔を見られてはならないと思えば思うほど、
食いしばった歯はどんどん悪くなった。
治療を続けてきたけれど、結局半年余りでまた歯を食いしばっている。
仕事は、仕事は順調というよりも、責任過多で気苦労が多い。
年齢相応といわれるが、蚤の心臓には負担が大きい。
気にし過ぎず適当に流せといわれるが、その手加減がわからない。
そういうものだと心得ておけと思っても、さじ加減が。

自分でわかる。11月に入ってから頬の内側にくっきり線が入る。
いつの間にか噛み締めてしまっているのだ。
肩が凝るのも、首が痛くなるのもそのせい。
歯科医にも職場やパソコンの前に「噛まない」と張り紙をするようにまで言われた。
しかし、打診もせず薬剤塗布だけでこの3週間。
私の奥歯は既に響く。何故除外診断のためにレントゲンだけでも撮らない？

歯茎の状態は悪くないという。丁寧に磨けているし、虫歯も無いという。
磨き方も上手で問題はないという。
「あなたのように痛みを訴えてくる人は多い」ですと。
でも、被せもののしたに広がる虫歯は？　骨髄炎の可能性は？
急性の歯根の炎症では？　いや、既に慢性になっているような。
それとも、炎症が治まるまでつつかずに放って置いた方がいいと？
でも、それは根本的な治療にはならないから、
神経なのか、歯なのか歯肉なのか、それとももう顎関節症まで行っているのか。
気になって気になって仕方がない。

ブラキシズム―歯ぎしり・咬みしめは危険!!

ブラキシズムの臨床

歯間ブラシを使っていると、突然の激痛。
根っこ、どこか神経に触れたのか？
訳のわからない響き具合にますます気がかりでならない。
何故にこのような大きな衝撃？
噛む度に歯が、根元が疼く感覚。
こんな痛さが食事の度に襲ってくるとは・・・。

大きく口を開けることは出来る。でも、変な音がすることはある。
痛みは今までに治療した歯を追っかけるように、その周囲に出てくる。
まるで、今までのモグラ叩きのような治療が手遅れだったと言わんばかりに。
このまましばらく様子見、だと医師は言う。
でも、痛みを抑える薬は塗るだけで飲み薬はない。
鎮痛剤を手放せなくなっている私は、結局また内科的な病気に何がしか
ひっかかてくるのでは。

調べれば怖いことばかり書いてある病気の本。
歯の病気は高血圧にも良くない。円形脱毛症にも関連がある。
ストレスから悪化する。何でもかんでも関係あるように見えてくる。
痛みは中高年の女性に多い。閉経前後の・・・、また更年期との絡み？
何でもかんでもリンクして体に悪いことばかり。
歯に影響のあることばかり。

しっかり堅いものを噛んで生活することが出来ないのは、
嫌なことから逃げたいと、泣き言を溜め込んでやり過ごして来たから？
噛んでは駄目。噛み締めては駄目。
噛まないようにするためにはどうすればいいのか。
それが一番の問題。

どうしても無意識に、意識せずに噛み締めてしまう、
我慢して、飲み込んで、苛々して、気がかりで、やきもきして、
その気持ちを持て余しながら仕事をし続けている、
特に気の重い、人と会うことが辛い11月の今、
噛み締めすぎる杭縛りの11月をなだめ過ごすことが出来るのか。
11月はもう終盤だというのに・・・。

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