如月に着替えたい

真新しい月を迎える。鋭い切っ先に触れるような如月。
冷たいひんやりした心地よさが、心を奮い立たせるような如月。
眠っていた私の何かを、起こそうとするような如月。
古いくびきから逃れ、新しい皮袋に新しい葡萄酒を注ぐような、
そんな日々の実りを大切に出来る如月であって欲しい。

昨日に続き、冷たい雨が降り続いている。
いつもと寒さの質が違うような気がする。
とはいえ、北国雪国の冬に比べれば格段の暖かさ。
しかし、しっかりした暖房設備の無い家の中は4度、5度の朝。
しっかり着込まないと寒い。石油ストーブが嬉しい。
布団から出るのに勇気が要る季節、すんなり起きられる自分に満足。

夜更かしする日曜の夜、それでも早起きし、気持ちを切り替える月曜。
その週の初めの月曜が、如月の朔日というのが嬉しい、
何だか分からないけれど、区切りがはっきりしているようで嬉しい。
カレンダーもすっきり気分転換をしているのか、
深い意味は無いけれど、潔い月曜日からの月の初め。
それだけで心から贅肉がそぎ落とされたような気がする。

アイノラ抒情曲集

ドビュッシー:ピアノ作品集

雨、一日中降り続く雨。暖かい室内、寒い屋外。
曇った窓ガラスに「へのへのもへじ」を書いてみる。
気持ちは穏やかなはずなのに、会議を経て午後になると胃が痛い。
いや、この場所は胃？　何だか違うような気もする。
それにしても、静かな月曜日。

話しても詮無い事を繰り返し。そんな事を思いながら、
あっという間に一日が終わる。甘いものが欲しい。
けれどプールに娘のお迎えに行く時間。
１km余りを泳いで来た真っ赤な頬の娘。りんごの頬の娘。
「駐車場に車を入れられたの、凄い！」
プールのあるビルの、いつもは満車で入れられない駐車場に、
わざわざ車を止めたのは、何のため？

氷雨に濡れながら歩いていくと、濡れた髪の毛から風邪をひく。
そんなことが無いように気遣っているのだよ、かーちゃんは。
お迎えに行くといつも髪を乾かしている娘。
でも、中途半端な乾かし方が気になって仕方が無い。
夏ならばいざ知らず・・・。
お迎えに気を遣っているのだよ、娘よ、これでもかーちゃんは。
外は雨、それも大粒の雨。何故ならば・・・。

雨は霙となり、雪を含んで大粒の爆撃となって
フロントガラスに張り付いている。
その、かすかに結晶が炸裂したように感じられる一瞬。
雨と一緒に胃の腑に痛みが走るような嫌な感じ。
1週間服薬しても、夕方に強くなるこの痛み。
何なんだろうなあ・・・。

娘を家に運んだあと、念のためにホームドクターの元へ。
四半世紀以上私のお腹に触れて来た医師は、「わからないねえ」。
こんな風に言われるのはとても珍しい。
「潰瘍にしろ、憩室炎にしろ、内蔵からくる炎症性の痛みは、
もっと深い所から痛みが来る物なのに、neimuさんはいつも、
浅い所の痛みが強い。内臓を包んでいる膜の部分に、
何かあるのかって感じだけれど」

痛む時間、痛み方、いつもより丁寧に問診し、
腹部の触診を終えてから先生は悩んでいる。
私だって先週から始まった痛みが、左下腹部から始まり、
ずっと上に上がってくるような感じで広がり、
左胸近く、背中まで広がってくるのに困っている。
肋間神経痛なのか、内臓の痛みか？
夕方痛くなるなら空腹のせい？
昔繰り返した十二指腸潰瘍みたいな痛みか？
私にも良く分からない。

胃腸薬に加えて1週間分のロキソニンが出た。
いつも飲む背筋有無は鎮痙剤になるから、お通じには良くない。
一般的な痛み止めで様子を見ようということらしい。
とりあえず、朝夕食後に追加。
12月末の仕事絡みで、思い出し落ち込みが続いているせいか、
独り言が増えている私。思い出し笑いならぬ、思い出し独り言。
一人責め、一人後悔、無意識のうちに会話を再現、いや、まずい。
そんなに尾を引いているのか。

ならば、すっぱりこの如月のうちに断ち切りたい。
心のしこりをすっかり溶かし、風を吹き込み、
ともすれば仕事から逃げて後ろ向きになりがちな、
モチベーションの低さから、自分を立て直したい。
寒さの余り重ね着する「衣更着（きさらぎ）」 、
しかし様々な物思いに翻弄され、着膨れしているのは自分の心。

草木の芽が張り出す月の「草木張月（くさきはりづき）」
陽気が更に来る月であるから「気更来（きさらぎ）」
そんな風に自分を新しくし、脱皮させたい今日。
今日見た写真の青空は心に痛かった。
今日見た写真の建物の赤さは心にしみた。
眠っていた自分を覚醒させるように。
そんな2月にしたい。

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