Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

渦の道10周年

徳島県で有名なもの。残念ながら、数少ない。
全国的に有名なのは、阿波踊りと鳴門の渦潮。
子どもの頃「なると巻」のナルトは、どうして渦巻きか知らなかった。
まさか大人になってからそのお膝元で暮らしてみる経験をするとは。
おまけにその橋の上を通って行ったり来たり、
しばらくそんな生活が続くなんて思っても見なかった。
ホント、人生何があるかわからない。


 


大潮ではないけれど、中潮、16時10分まではまだ時間がある。
まずは大鳴門橋架橋記念館、エディへ。
そう、これは私にとっては何度も乗り降りした徳島バス、エディ号の由来。
以前よりもグレードアップしたのか、私たちの見る目が変わったのか、
見応えのある展示で楽しかった。娘が遊べる子供向けのコーナーもあり、
アスティとくしまにあった祖谷の吊橋の模型も懐かしく、
橋マニアにはそれなりに満足できる解説も。


大鳴門橋の概要、大鳴門橋の仕組み、大鳴門橋のできるまで、
うずの詩、世界の渦、黄金分割とは、
世界の橋比べ、世界の名橋、日本の名橋、
橋を見るなら吉野川に行け、徳島県の主な橋、などなど。
様々なコーナーの中で私が思わずじっくり見てしまったのは、
「うずの詩」のコーナー。水茎も麗しい毛筆で書かれていたせいもあるが、
名だたる文人も鳴門の渦に思いを寄せたのかと、しみじみ。


渡りかけて鷹舞ふ阿波の鳴門かな  正岡子規
疑はず今大海(おおうみ)はかたむけり
           鳴門のしほを越す船を見よ  与謝野晶子
漕ぐ舟も下にたゆたふ阿波の門(と)は
          海をさながら大河にせり  中村憲吉
渦群れて暮春海景あらたまる 水原秋桜子
母の渦子の渦鳴門故郷の渦  橋本夢道


私としては秋桜子と夢道の句が好き。
今日の自分の気持ちにぴったりだから。
徳島県人じゃないけれど、親子でわずか一泊二日の旅。
娘が赤ん坊の頃の記憶に沿う、懐かしい徳島。
その思いと重なって、何とも言えない気持ちになる。 


もう何度も渦潮を見ているし、娘だって記憶にある。
なのにどうして帰りにこの場所に寄ったのか。
渦の道」10周年記念だったから。
大鳴門橋、勿体無いほどの立派な造り。
本来であれば新幹線を通して本州と四国を繋ぐ筈だった橋。
予算の影響でせっかくの技術の粋も、船関係の産業を弱らせ、
素通りされる県との噂をばら撒き、
近畿圏へのラブコールとの温度差が取りざたされる元となった、
大鳴門橋。そこに出来たのが、渦潮を観潮船に乗らずに見物できる施設。
出来てから四半世紀、ちょうど25年になるとは・・・。

 

 



もっとも色んな打撃の予想が、予想以上の大打撃、
直撃になったのは明石大橋が出来、車での行き来が便利になったと同時に、
物の行き来、産物輸送は盛んになれど、観光客の伸び悩み。
フェリーも高速船も航路も廃れて、海の国のイメージが一転、
鳴門の街の船着き場も姿を消し、初めて訪れた当初の姿を見出すことは
出来ないとわかっていても、色んな感慨もあって「渦の道」見学。


 

浜育ちの私、埋立地で消えてしまった幼少の頃の景色を、
潮の香りを、浜風を心に蘇らせるために、
海のそばに住む事が出来た新婚の頃の思い出の為に、
娘を連れ回している私たちだが、少々年を取っている親には
このくらい許されてもいいだろう。
記憶や思い出を俯瞰する、体の中の何かを揺り動かす、
そんな景色を堪能する時間を。
 
 


娘が私たちの年になるまでの時間は、
私たちの未来には残されていないのだから。
同じ景色を見た思い出の時間を共有して欲しい。
それは人よりも遅くに子どもを持った親の感傷? 
とにかく、一泊二日家人と娘を追っかけて始まったミニトリップは、
鳴門の街で美味しい魚料理を食べて、満腹になって終わった。


ゴールデンウィークまであと少し。
一足お先に家族旅行でした。

四国遍路パーフェクトガイド 徳島・高知編 (講談社 Mook)

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