Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

道の駅かがみの里と鏡神社

琵琶湖畔、近江八幡市、宮ヶ浜水浴場を目指してドライブ。
どこにも出かける予定の無い娘の夏休みを、
少しでも賑やかにしたいと日帰りで泳ぎに行くことに。
できれば海に泳ぎに行きたいという思いも空しく予定が立たず、
宿も取れないという状況の中、生まれて初めて湖で泳ぐため、
家族でドライブの土曜日となった。

さて、琵琶湖に辿り着く前に竜王町の「道の駅鏡の里」で休憩。
我が家は道の駅が大好きだ。とにかく新鮮な野菜が手に入る。
残念ながら徳島時代と異なり、すぐ近所に道の駅が無い今、
目的地まで後僅かと渋る家人に、ドライブの休憩名目で停車。

久々に見る新鮮な野菜に目を見張る。
このわくわく感、余り料理をしない人間にはわからないかも。
何しろ薫り高いスィートバジル、バジル、イタリアンミニトマトがどれもこれも一袋100円程度。
じゃが芋や玉葱の常備菜は勿論、UFO型や尺八型のズッキーニ、
デザート用のブルベリー、好きになれば病み付きの鮒寿司を買い込み、
米粉の焼き立てパンと辛いハバネロアイスで一服。


最近また辛いものブームなんだろうか。
町おこしの一環なんだろうか。
唐辛子関連商品が目立つ。それにしてもハバネロアイスとは。
あ、でも、学生時代、罰ゲームでじゃんけんして巻ける度、
パフェにタバスコ掛けられるというのがあったなあ。
それにしても、甘辛いこのアイスクリーム、何というか・・・
美味しい以前に個性的で忘れられない、癖になりそうな味。
食べたがる人はドMなのかも。


さて、この地に来てみるまで知らなんだが、
竜王町鏡の里は源義経が元服した土地で有名とか。
だから道の駅も斬新な烏帽子型の建物なのね。
内部には「とめはね」の書道選手権で書いたような
でかい紙にでかい文字が貼られ、義経と思しき人の絵も。
更にすぐ傍に鏡神社なるものが。だから鏡の里というわけか。

 



万葉集額田王を卒論に選んだ私としては、
その姉の鏡女王、父親の鏡王に縁のあるこの神社を見逃すわけにはいかない。
思うに大学生の頃、下調べをしてこの辺を歩き回るぐらいの
頭と気持ちがあれば、もう少しましな論文が書けたのだろうが、
その当時は何もわからないまま、やっつけ仕事のような論文。
自分の世界も何もあったもんじゃない、資料を継ぎはぎして、
上手に作文しただけで、なんら新しい知見があったわけじゃない。
ああ、穴があったら入りたいレベルの大人の作文。


そのご縁が四半世紀を超えて、こんな所で繋がるとはね。
それはともかく、古代から東山道中山道)の要衝の地として栄えたこの地が、
今は寂れて静かな佇まい。歴史ロマンは栄枯盛衰が似合う。
そして悲劇が、盛者必衰の理が。


渡来系新羅の血が流れていたかもしれない鏡王一族は
高い文化教養を以てして大和朝廷に仕えていたのだろう。
天智・天武天皇に仕えた額田王は巫女・歌人としても名高かった。その由緒ある地を偶然とはいえ、家族で訪れることができるとは。
夏草の中に埋もれる、まではいかないが、全く人気が無い。
残念ながら行事日以外、常駐の神官がいないらしい。
由来書も得ることは叶わず。


この神社では元服式なることも行っているよう。
万葉集の時代の歌人よりも、勇壮で悲劇の若武者、
ヒーロー源義経縁の地である方が、世間的にも通りがいいのだろう。
境内には義経を祭った寺社跡。背後には大正天皇が軍事教練で行幸した際、
命名された御幸山なる山が聳えている。

 

狛犬の横に立つ幟(のぼり)だけが目立つ神社の入り口。
義経が烏帽子を掛けたという松は落雷の為に折れて、
枯れ木となった幹の洞には蜂が巣を作っていた。
鳥居を改めて眺めると、その後泳いだ琵琶湖の水草が、注連飾りにそっくり。


本来神のいます場を知らしめる結(ゆい)としての注連縄、
神聖な注連飾りは、結界を表すもの。
稲藁を編み、特別な形にすることは日常(ケ)とは異なる、
ハレの場を示すことになる。
確か、稲藁を撚り合わせた縄、皮を脱ぎ捨て復活する蛇の象徴、
稲に必要な水神の化身、蛇だと言われている。


竜王と称するこの地に、水神、蛇は当たり前。
琵琶湖を控える地勢として水神の存在は欠かせない。
水と切っても切れない生活をしてきた人々にとって、
水草も藻も、神聖な形のモチーフだったのかもしれない。
そんなことを連想した神社の注連縄の形。


その鏡神社を後にして、目指すは宮ヶ浜水浴場。
海水浴場ではなく、水浴場。
この時の私は、自分が軽い熱中症でダウンしかけることなど知る由もなく、
無邪気に生まれて初めて泳ぐ琵琶湖を前に、はしゃいでいた。
米どころの平らな道を走る車の中で。


今から思えば、この道の駅でしっかりランチを食べて
休息していれば、大丈夫だったのかも?
レストランの近江牛ハンバーグに後ろ髪引かれながら、
緑のトンネルを抜けて湖沿いに走って行けば、
そこは芝生広がる宮ヶ浜水浴場が・・・。

額田女王 (新潮文庫)

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萬葉の花―小事典

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