Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

初 天満天神繁昌亭へ

ここに一枚のチケットがある。
桂小枝の会
 桂小枝 桂三金 桂三四郎 ゲスト:松尾依里佳


入院前、家人は繁昌亭へ出かける予定だったらしい。
何も聞かされてはいなかったが、会社からも近い。
御ひいきの「探偵! ナイトスクープ」の新しい秘書のお姉さん、
バイオリニストの松尾依里佳とかいう人が出るらしい。
まあ、かつてバイオリンを齧ったことのある家人にとっては、
それはそれで興味があることなのかもしれないが、
吉本新喜劇やその手のお笑い番組が好きな家人が、
落語だけで選んだとは思われぬメニュー。


しかし、買った本人は全く動けぬ有様。
せっかく免疫値を上げるストレス発散の機会を失った次第。
されど、チケットを無駄にするのは勿体無い。
何しろ「見舞いに来るな」と衆人環視のもと面罵された身とあっては、
私の免疫値を上げるため、このチケットを有効に使う方が理に叶っている。


終業後、19時ぴったりに滑り込み開演のお囃子の中で上着を脱ぐ。
折しも雨、足元も悪い。そんな中での初めての繁昌亭体験。
ちりとてちん』のドラマをちらりと思い浮かべる。
さて、前座の桂三四郎、弱冠? 28歳はまだまだ下手で、
落ちをとちって焦っているし、かわいいから許したろうで。


桂三金、元銀行員というがどう見てもお相撲さんにしか見えない。
話の枕は骨折が話題。いやあ、とーちゃん向きだったねえ。
八百長で揺れている相撲業界が話題になっているこの落語、
創作落語なんだろうねえ。まあ、先ほどの兄ちゃんよりも、
遥かに喋り慣れている感じ。


そして、本命。桂小枝。実は余り好きではない。
探偵ナイトスクープ」の時の雰囲気、印象が強すぎて、
噺家さんには見えないというのが今日までの印象。
実際話の枕はTVの番組から振ってくるし。
まあ、それはそれで裏話だから面白いものの。

前半の舞台が終わり、幕間。
予想していた以上に桂小枝の話そのものは上手かったけれど、
(前座と比べるとそう感じてしまうだけか?)
何だか、変。この違和感は。
何か、引っかかる。

奇跡の寄席 天満天神繁昌亭

奇跡の寄席 天満天神繁昌亭



若い女性ゲストを持ち上げて、みんなの前でバイオリンを披露させ、
後半の舞台へ繋ぎ、こともあろうか最後の落語は、
まさに朝ドラ『ちりとてちん』を髣髴とさせる『愛宕山』。
話のストーリは知っているから聞きやすいこともあるけれど、
「その道中の賑やかなこと」の一説ではドラマを思い出して、
思わず懐かしさに涙ぐんでしまう私。


あれ、落ちが違うなあ、でもこれは落語ではよくあること。
掛ける話の題名が同じでも話の流れは異なる、
同じ噺家が話しても、毎回同じように話すとは限らない。
それこそが高座の楽しみ、ライブの醍醐味であるのだが、
今日の落ちではなあ・・・。
そんな風に思っている間に、幕が下りる。


・・・と降り掛けると見えてまた上がって来た。
桂小枝さん、挨拶を始めたが、先ほどの違和感、
ともすれば力みとも見えたあの雰囲気の正体が分かった。
何と、昨日父上逝去、今日の高座を掛ける19時からが本通夜、
芸人の辛さ、親の死に目にも会えぬとはよく言うが、
通夜と重なる今日の繁昌亭の高座とあっては・・・。


思えばドラマ『ちりとてちん』も、師匠の死後、
その家を毎日落語が掛けられる場所にしたんだったっけ。
常設の悲願、しかし、それは舞台に穴をあけられないということ。
誰か代わりにとはいかない、自分が本命のトリとあっては。
ちりとてちん』では奥さんの病気のショックで、
高座に穴を開けてしまった師匠だったが・・・。



家人に代わって高座を聞きに来た私。
特にご贔屓でも何でもないけれど、小枝さん。
今日こんな形で初繁昌亭体験もご縁でしたね。
今夜これから明日と、大変なことだなあと後にする。
久しぶりの南森町商店街で、家人に教えて貰った店で、
「鰻のひつまぶし」700円也の経済的晩御飯。
帰宅は23時過ぎ。ふう、お疲れ様でした。
さて、明日は歯科大の日。

ちりとてちんメモリアルブック 2008年 8/25号 [雑誌]

ちりとてちんメモリアルブック 2008年 8/25号 [雑誌]