Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

鈴木弦楽器にて


さて、最後のご紹介するのは100年以上前に作られた名器を取り扱う、
鈴木弦楽器。マンションの一室から始まった工房と店は、
いつの間にか知る人ぞ知る弦楽器の総合商社となった。
ヨーロッパに出かけ、その国・地域、数々の工房を訪ね歩き、
名器を探す旅。何だか憧れてしまうが、この世界は奥深い。
自分の耳と勘と出会いだけが勝負。弾き手であるよりも、
楽器を求める未来の弾き手のために仲人として働く、
そんな宿命というか運命を背負って生きていく世界。



楽器を扱う、楽器商を営むということはまことに大変。
何しろ、楽器の音色を育てるのは弾き手なのだから、
その弾き手がどんな名器に出会うか、名器を育てるか、
そこに介在する目利き(耳利き?)があってこそ。
さりげなく壁に貼られた写真のヴァイオリニスト達。
その影に、黒子として存在する楽器を取り扱う人々、
買い付ける人、修理する人、作る人、教える人、
色んな人がいて、一握りの名演奏家を支えている。


  


私は聞くのが専門。それも弦楽器は詳しくも何でもない。
むしろその昔、幼い頃の英才教育宜しく習い事を叩き込まれた世代、
家人はバイオリンをかじった口なので、興味心身だが、
あにはからんや、腕前の方はとっくの昔に錆び付いている。
名器と思しき楽器を目にして、如何なる音ならんと爪弾けど、
指も弓も思うに任せず、心に思い描く音を引き出すには程遠い。
悪戦苦闘をする姿も痛ましく微笑ましいが・・・。



私はただただ薄暗い部屋の中、所狭しと並んだ楽器の、
滅多に目にすることのできないバイオリンやビオラの姿に、
何ともいえぬタイムスリップまがいの気分を味わい、
ここが大阪のマンションの一室であることを忘れ果て、
ボーっとしているばかり。最後の訪問となったこの工房、
この店、この部屋の迫力に圧倒されているばかり。
何しろ在庫は4、500本というので・・・。


あんまり沢山並んでいて、何が何だか分からない。
楽器の良し悪しよりも、沢山あることに、
その数と存在感に、その楽器の背景にある世界に思いを馳せて、
眩暈がするくらい、クラクラ・・・。

はじめての 弦楽器メンテナンスブック

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弦楽器のイントネーション メロディーとハーモニーの耳をよくするために

弦楽器のイントネーション メロディーとハーモニーの耳をよくするために



さて、ご主人の鈴木さんの薀蓄を聞きながら
鑑定書や楽器の略歴を書いた紙など見せて頂き、
楽しい時間はあっという間、先ほどから気になってきた蓄音機。
聞かせて頂けることになって、とってもラッキー。
何しろ、最近の若い人は電気の線がないと音が出ないと思っている。
ワイヤレスだ無線LANだのは知っていても、
ぜんまい(ねじ)でまく蓄音機は知らない。
知らないどころか、若い見学者はレコードを聞くのに
針が必要だということも知らない。



さて、掛けて頂いたのはレアもの、ボレロボレロでも、
ラヴェル本人が指揮したボレロだ。
いまだに4スピーカーのステレオを捨てられずに実家に置いている。
そんな私にとっても久しぶりに聞く、レコード。
今ではレコード針を作っているのは一社だけのはず。
若かりし頃、必死の思いで買い貯めたレコードを捨てるに忍びず、
場所を取るまま残してきたのだが・・・。
とうとう娘に本当のレコードを見せることも、
針を下ろして聞かせることもせぬまま、来てしまった。


  


名残は尽きねど、そろそろ時間ですからと、
ナカノシマ大学のスタッフの方に促され、
後ろ髪惹かれる思いで鈴木楽器店を後にする。
この後、下のレストランの演奏会兼お食事会、惜しかったな。
でも、楽しいことはまだまだ先に取っておこう。
できれば娘も一緒に来られる時に、何かの記念に、
次の機会を大切に取っておけばいいよね・・・。



まだまだ覗きたい部屋は沢山あれど、タイムアウト
本当にこういう所は単なる見学者ではなく、
お買い物ができる上客として訪れることができれば、
申し分ないのかもしれないけれど、残念ながら不調法者でござい。
弦楽器は眺めるだけ、聞くだけしかできない私。


これにて数日に渡ってレポートしてきた、ナカノシマ大学。
楽器工房巡りの半日は終わりです。
お付き合い下さりありがとう。
新年度が始まって心がかさかさになっていた日々、
本当に久しぶりに未知の世界に触れてワクワクした午後でした。

バルトーク:管弦楽のための協奏曲,弦楽器,打楽器とチェレスタのための音楽

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ツィゴイネルワイゼン/ヴァイオリン名曲集

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