Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

『はやぶさ』を見て

映画ハヤブサを見る。とりあえず、泣けた。
主人公を一人の学者が誕生するまでと重ね合わせて、
人間の方は成長期、ハヤブサの方は出発とその帰還を軸に、
「研究の世界」を垣間見せる。
子どもにも分かり易いように、人間の主人公を女性に、
そして、アニメイラストとナレーションを付け加えているのだろう。
それは、まあ、企画としては成功だったのだろう。


何故かわからないけれど、いや、当たり前かも知れないけれど、
日本の映画の役者、映画俳優というのは顔ぶれが限定していて、
ここぞというドル箱だと思われているのか、それが当たり役なのか、
人情家の上司の役所というと、西田敏行
ちょっと太めの体と更けてきて雰囲気が柔らかく見えるせいか、
探偵ナイトスクープ」の涙もろい所長のイメージが強いのか、
旭山動物園』の映画の時の園長さんといい、同じような役柄が多い。


実は、彼が若いことに演じていた『敦煌』の将軍、
おろしや国酔夢譚』の時のような青年、
陰を持った激しい、そして痛々しく傷つく、矛盾した気持ちに悩む、
懊悩・苦悩する青年像を演じている時の方が好きだったりする。
何だか『釣りバカ日誌』の浜ちゃんのような、
コミカルな部分だけがクローズアップされ、
彼の持ち味にされてしまっているのが哀しい。


おまけに、また、主人公は女性か、それも、竹内結子というのが・・・。
同じ顔ぶればかり、テレビでも映画でも。
海堂尊のバチスタシリーズも、映画版の主人公は彼女。
元々男性が主人公の所を、わざわざ変更しての映画作り。
まあ、TV版が一応原作に忠実に男性主人公で作っているものの、
どんな作品にも同じ顔ぶれが出るので、ちょっと食傷気味。


俳優の上手下手と言うよりも、それ以前の問題で、
もっと裾野が広ければいいのに、俳優の固定化されたイメージで、
役者の芸域却って狭まっているんじゃないの、
シリアスにしないために、コミカルな演技が強調されて、
それが落としどころ、泣き所なんて、
ちょっとねえ・・・と感じてしまったのは確か。


もっとドキュメンタリータッチでシリアスに描けば、商業ベースにはならない。
そういう判断が露骨に働いているので、学術的な面白さを前面に出して、
強調できなかった部分が気になって仕方がない。
まあ、JAXAはHPで情報公開しているからいいじゃないかと言われれば、
それはそうかも知れないが、予算、期限、プログラム、講演会、
ありとあらゆる様々な出来事が一つのプロジェクトのために必要で、
同時進行しながら、未来を目指しているプロセスが、
余りにも安易に描かれていて、ちょっと興ざめしながらも、
単純な脳みその私は、泣くべき所では泣き、笑うべき所では笑ったが。

小惑星探査機 はやぶさの大冒険

小惑星探査機 はやぶさの大冒険


レールに乗せられてストーリーを追っている感じで、
安心してみていられるかも知れないし、少々の長い時間も気にならずに
見られると言えば見られるけれど、何だか物足りない。
見終わった後の満足感よりも、こんなにあっさり?
そんな感覚が大きくて仕方がない。
佐野史郎の個性も、他の役者の個性も、
ハヤブサの前に太刀打ちできなかったわけではなく、
採算優先の無難路線の前に作られている、というのがどうにもこうにも。


巨大な2時間特集番組を、NHKドラマではない、良質の民放が作った、
ファミリーで楽しめる作品を、巨大画面でどうぞという、
そういうレベルの映画だったと思う。
ハヤブサの事実を、ちょっとドラマで漫画化されたような、
(本来だったら漫画のドラマ化が順当な手段なのに、逆の感じがする)
そんな作品だった映画、『はやぶさ』。


小説や、その他、漫画になったもの、いずれも見ていないから、
比較してみてどうこうと言うことは言えないし、
はやぶさ』について、詳しく知っていることはそれほど無いものの、
プラネタリウムまで出かけて、熱気を持って眺めた、
国が事業仕分けでごったに状態だったあの時に、
唯一科学の発展に賭ける牙城のような雰囲気さえ呈していた、
あの『はやぶさ』の一件が、映像化されるとこういう形で喧伝される、
そうなのか・・・と思うと、何だか気抜けがしてしまう。


子どもにもわかりやすく作ったということで、納得しておこう。
残念ながら娘は一緒に付いて来ず、見ること叶わなかったが、
本人曰く、「ビデオが出てからでいいよ」とのこと。
映画館の大画面で見るまでもなく、彼女の心の中を動かしたのは、
それ以前に見た、科学博物館のシアター映像であって、
余計な付属物が付いてくる画面は、ちょっと抵抗があったのかも。


いずれにせよ、大人二人で鑑賞。本日の土曜の午後の空き時間。
疲れがどっと押し寄せてくる週末。
肩の力を抜いてみる分にはいいかもしれない映画だった。
科学的な映画か? と言われると、違うという気がする。
でも、小学生向けにはいいかもしれない。
大人が見るにはツメが甘すぎる。単なる人情ドラマになってしまう。
肩が凝らない映画と言われれば、そうかも知れないが・・・。
何だかなあ・・・。

はやぶさ、そうまでして君は〜生みの親がはじめて明かすプロジェクト秘話

はやぶさ、そうまでして君は〜生みの親がはじめて明かすプロジェクト秘話

はやぶさ君の冒険日誌

はやぶさ君の冒険日誌