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かわいくない新しい洗濯機

古い洗濯機よさようなら。新しい洗濯機よ、こんにちは。
実家に新しい洗濯機がやってきたのだが、如何せん、今時の製品。
あまりにもメニューが多すぎて、操作が複雑。
古い洗濯機と交換に新しいものを設置して貰ったまではいいが、
年寄りにとってはよくわからないらしい。性能がいいからと勧められたようだが、
今更老父に多機能なメニューを操作して、洗濯三昧する気力は無かろう。


下宿する学生が使うような安手の簡単なものでよかったのに、
電気屋の愛想が良くてもタチの悪い営業に負けたのか。
最近の機械は、白物家電でも当然コンピューター内蔵、
一見賢そうに見える。しかし、却って煩雑。
取り扱いが面倒で使い勝手が悪い白物ならぬ代物に成り下がっている。


見た目は綺麗な洗濯機だが、多分デザインしたのは余り洗濯を自分でしない人、
おそらく滅多に洗濯機を回さない人。毎日の掃除洗濯に追われていない人。
確かに綺麗、デザイン性には優れているように見える。
しかし、あれやこれやと小うるさいこと甚だしい。
年寄りがいちいちこのマニュアルを読みこなして使いこなすとでも?
客の身になって商品を勧める気のない店員は困る。
押し切られてくる客も客と思うかも知れないが、
家電には詳しくない年寄り相手に強引な商売をしたのが見て取れる。


毛布やタオルケットなど、私が干すのならばともかく、
大物洗いが出来る洗濯機があったとしても、干すのは大変。
力も弱くなり、物干し竿を上げ下ろしして干すのは難しい。
乾燥機能も付いているものの、その設定がまた鬱陶しい。
いちいち乾燥する時に設定。普段は使わないでいい機能。
お日様に干さないと洗濯物とは言えないと信じている世代には、無駄。
洗濯物に合わせてしょっちゅう設定を変えては、機械を動かす。
そんな洗濯の仕方を世間の家では毎日やっているの?


お任せ設定以外、どうもこれは老父には使いこなせそうにない。
お湯取り設定をした上で標準にしておけば大丈夫かと思いきや、
これをもってして、新性能と呼べばいいのいかどうか
よく洗い、よく脱水している証拠なのか何なのか、
この間までの先代洗濯機と違って、やたら糸くず洗いくずが出る。
傷みやすいもの、それなりの品物はネットに入れて洗ってはいるものの、
糸くず取りのたまり具合が半端ではない。これは一体どうしたことか?


以前の洗濯機は洗い屑取り用のネットは一つだけ。
シンプルな筒型のもの。長年の使用に破れて糸くずネットを取り替えたが、
かちっと差し込むデザインなので、着脱は至って簡単。
ゴミを捨てるのに時間も手間も掛からない。
なのに今回の新しい洗濯機と来たら・・・、小さな親切余計なお世話の典型。
糸取りネットは小さく、しょっちゅう捨てないとすぐに溜まる、
はっきり言って小さすぎる大きさ。それが2カ所もある。
おまけに着脱は難しく、年寄りの手が届きにくい下の奥。


外して、その内部の装填されているネットを外し、ゴミを捨て、
ネットを装填し、装填した部品を更に洗濯槽下部の奥に戻す。
それが2カ所。同じ事を2回繰り返さないと行けない。
以前は1度で済んだ糸くずネットの掃除の回数と手間が増える。
これを毎日1年間繰り返す手間と時間は半端じゃない。
何でこんなにすぐにゴミの溜まりやすい、扱いにくいものを?
物理的に2カ所付けた方が、沢山糸くずを取ることが出来るから?
ならば、何故ネット収納部分を大きく作らなかった?
デザイン上かっこわるいから? 
これがインスパイアー何とかのポリシー?

電気洗濯機100年の歴史

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無機物擬人化コレクション 1 (FEELCOMICS) (ボーイズDuoセレクション) (Feelコミックス ボーイズDuoセレクション)

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アホ臭いほど見てくれだけよく、扱いにくい白物家電
売り手は白と青を基調にしたかっこいいデザインと思っている?
マイコンで水流制御の乾燥機能もついた、お手軽洗濯機だと。
布地が傷むので、乾燥機能は極力使わない我が家だ。
梅雨時でもないのに、そんな不経済な電気代を使わない老父。
太陽に干せば乾くものを、雨の日に洗濯などできるだけしない家族。
そんな我が家にとって、何時間も掛けて穏やかに乾かしますは不毛。


糸くずが取りにくく、扱い勝手が悪い所まで老父はチェックせず、
(つくづく男の買い物だなあと、ため息が出る)
店員の機能説明と予算だけ照らし合わせて、買い物してきてしまったのだろう。
私が元気であれば、自分で出向いて買ってきたものを・・・忌々しい。
スイッチが入る度にクラシックのメロディーを奏で、
一旦停止にして再度スタートを押すと、曲の続きを奏でる。
仕事をしていることをアピールし過ぎの、いよいよ「かわいくない洗濯機」。
ユニバーサルデザイン機能のために音楽が鳴るのであれば、
この音楽を切る設定を探さなくてはと思っているが、マニュアルを見るのも面倒臭い。
単純に、ピーピーピーでもいいのに。


老眼になってものぐさ街道まっしぐらの私は、
インフルの物憂さも重なって、何もかもにやる気を失っている。
その神経を逆なでするように、小賢しい新しい洗濯機が小憎らしく気にくわない。
この新参者は、マニュアル通りにしか動けないくせに、
今までの洗濯機とは違います、みたいな顔をしてのさばっている。
たかが洗濯機のくせに、マイコンが壊れたら粗大ゴミになるのに、
本当に先代のように15年近く壊れずに、実家に鎮座ましますことが出来るのか?
そういう目で見てしまいたくなる、真新しい洗濯機。


習い始めの下手なピアノのような電子音を声高に立て、
仕事始めを知らせる新参者の甲高いメロディーを聴くと、
静かに仕事を始めていつの間にか終わっていた、寡黙な先代洗濯機が懐かしい。
一度でネットの糸くずを捨てて、さくっと装着できた簡便さ、
べたべた媚びないあっさりとした「作り」が懐かしい。
そう思う私は、前世紀の遺物、頭の固い「今時の機械」に弱い人間?


そう、我が家は単機能でOK世代。複雑な機能を欲してはいない。
パンはオーブントースターで焼き、レンジは温め機能もっぱら。
複雑なダイヤル操作は一切無い。ボタンを押すだけ。
製氷機付きの冷蔵庫でさえも、すぐに壊してしまったくらい。
氷はなくても困りはしない。夏場の氷に不自由しても知れている。
年寄りは氷を入れて飲むようなものを好みはしない。
鏡面仕上げのガスコンロもスチールたわしで磨いてしまうような、
何度言ってもわかってくれない年寄り相手の生活に、
最先端の機能付きの小じゃれたデザイン優先の使い勝手の悪いものはいらない。


老母はダイヤル式の電話ではなく、プッシュホン式に変わってから、
自分で電話を掛けられなくなってしまった。
新しいものに慣れるのに間に合わないで、脳が機能低下してしまった。
それに反比例して「もの」だけが賢くなり過ぎてしまった。
世の中の年寄りみんながみんな、ケータイやパソコンを使いこなせる、
「ハイカラ」で意欲的な年寄りばかりではないのだ。
人の集まる場所で話したり、お遊戯や歌など歌いたがる訳ではないのだ。


この洗濯機のお陰でまた家事を疎んじるようになるだろう老父を思い、
設定を標準・お湯取りは洗いとすすぎ1回に設定して、
あとのボタンは触らないようにねと念を押す。
ああ、賢すぎる家電なんていらない。
作り手は消費者が賢くなればいいと思っているかも知れないが、
これ以上賢くなれない消費者だっている。
単機能でいい。複雑すぎなくていい。
マニュアルを全て読んでマスターする年寄りが、
年寄りでなくても人間がいるなんて、絶対思っていないはず。
そんな複雑怪奇な白物家電なんて、いらない。

別冊Lightning87 男の洗濯 (エイムック 1976 別冊Lightning vol. 87)

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近代ニッポンの水まわり―台所・風呂・洗濯のデザイン半世紀

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