Festina Lente2

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乗り遅れた夢

夜中に物凄い頭痛で目が醒める。
何と言うことだろう、寝ていて頭痛で目が醒めるとは。
首か? 寝違えか? ガンガンするのはどこ? 
後頭部? わからないが痛い、痛いがもう腹をくくるしかない。
これだけ痛ければ、何か取り返しの付かない頭痛かも。
自分がじたばたしても間に合わないだろう。
そんなことを朦朧とした頭で考えていたら、
手も動くし、足も動くぞと思い当たり、少しばかり体を動かしてみる。


夢の木坂分岐点 (新潮文庫)

夢の木坂分岐点 (新潮文庫)


気が付くと夢の中だ。
何度も来たことがある場所、強いて言えば大きなキャンプ場のような、
しかしながら街中からは離れてるものの、
安普請の瀟洒な建物のような、ホテルのような、
大宴会場のような場所に向かって進んでいる。
大勢の人が集まっているようだ。
きっと一昨日結婚式に出向いた影響から来る夢なのだろうと、
意識の底でチラチラ思う。


とにかく顔見知りが沢山いる。前の職場の、その前の職場の人間、
バスや自転車、自家用車、沢山乗り付けているようだが、天気は雨だ。
きっとこれは昨日の天気の影響かな。
いや、外に聞こえる雨の音のせいか。


雨の名前

雨の名前


夢の中でも外の音が聞こえている不思議な世界。
目で見えているものと耳から聞こえてくるものは、
別々の刺激なのだな。そんなことを思いながらも、
宴会場のような盛り上がりを前に醒めている夢の中の私。
ああ、ここでも誰も味方や仲間は居らず、独りで居るのだな。
妙に納得しながら、辺りを彷徨う。
景色は真っ暗。夜なのか夕方なのか、還るバスにみんな乗るはず。


自分もここにいつまでも居るわけにはいかぬ。帰らねば。
されどいずこへ? 帰らなければと焦るが、
迷路のようなその場所で、バス乗り場がわからない。
行けば自分の乗るバスがわかるだろうと思ったが、
あいにく、生半可な気持ちで、
自分の乗るべきバスを探すことは出来ないような、闇の深さ。


脳から「うつ」が消える食事 (青春新書INTELLIGENCE)

脳から「うつ」が消える食事 (青春新書INTELLIGENCE)


先ほどまで、沢山の食事がバイキング形式で供されていたと思ったのに、
夢の中の私は空腹。自分の食べたい料理はさっぱりも見当たらない。
というか、食い散らかされた残骸のようなものばかりが並んでいる。


食といのち

食といのち

 

ああ、そうか。
何もかも出遅れているのだな。私の食べる物はもうない。
何も私のために用意されているはずがない。遅れてきた人間に。
独りで居る人間に。存在価値のない人間に。
仲間はずれにされている人間に。
そんなこと、当たり前じゃないか。
お腹いっぱい食べたり飲んだり、そんなこと、
許されるはずが無いじゃないか。何を期待していたんだろう。
夢の中でも諦めと絶望がない交ぜになって、現実の仕事と変わらない。
何もしたくないし、誰にも会いたくない。
しかし、食べる物もないというのは。


旬を食べる 和食薬膳のすすめ

旬を食べる 和食薬膳のすすめ


こだわっているのは、私が食い意地の張った人間だから?
いや、一昨日の結婚式の時、私の前にお口直しのデザートが運ばれてこなかった。
私の席にだけ運ばれてこなかった。
「お口直し」が出来ないまま、次の料理を待つ?
どうしてこれだけ沢山の人間が出席していて、よりによって、
私の前に「お口直し」は運ばれてこないんだろう?
こういう貧乏くじを引くのはやっぱり私なんだなと、あの時も、
いつかも、いつもいつも思っていたら、
夢の中でもやっぱり食いっぱぐれる。
どんどんいじけていく私。


カフカ寓話集 (岩波文庫)

カフカ寓話集 (岩波文庫)


顔見知りの人たちが乗るバスを見つける。
もうとっくに発車して、どんどん遠ざかっているはずなのに、
何故かそのバスの中に乗っている人間たちの顔が一人一人、
はっきり見えてしまうの、嫌になるくらい。
そして、決してそちら側の人間ではないのだ、私は。
そう思ういながら、納得している自分が自分で哀しく、
これからもずっとこうやって、
こんな気持ちで生きていくのだろうなあと思うながら、目が醒めた。
頭痛は消えていたが、心は更に寂しく哀しいものになっていた。


虚人たち (中公文庫)

虚人たち (中公文庫)


当然、仕事が出来ようはずもない。
自分は必要とされていない人間、やって来たことは何もかも無駄だった。
そんなふうに思えて、「人間の振り」をして休みの連絡を入れ、
ひたすら寝直すことにした。これで今日一日、休める。
まだまだ休み足りない自分なのだと、心底実感。
人間どれだけ寝ても寝られるのだなあと、我ながら感心するぐらい眠い。
今までどれだけ眠っていなかったのだろうか。
インフルエンザの1週間、かなり眠ったと思ったのだが、
まだまだ足りなかったらしい。


免疫力を高める眠り方

免疫力を高める眠り方


昔、帯状疱疹が悪化して入院した時、余りにもよく眠るので、
周囲から「眠り姫」というあだ名が付いた、あの6人部屋。
あの時の隣のおばあちゃん、もうこの世にはいないだろうな。
生きていれば、90はとっくに超えているだろうから。
そんなことを思っていたら、結構こちら側ではなくて、
あちら側の方に近い感覚の自分に、納得していることに少し驚く。


f植物園の巣穴

f植物園の巣穴


とすると、バスに乗り遅れた自分は正解なのかな。
今、生きているということは。

異人たちとの夏 (新潮文庫)

異人たちとの夏 (新潮文庫)