Festina Lente2

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最後のランドセル登校姿

何もする気が起きない。余りにもに憂鬱な如月から弥生。
ただただ仕事に行くのが物憂い。
明日は娘の小学校の卒業式。


保育園を卒園してからこの方6年間。
殆ど先に出かけざるを得ない私は、娘を見送りながら、
「行ってらっしゃい」を言うことが出来なかった。
ゆっくりとした朝の景色、バランスの取れた朝食、
穏やかな朝の景色からはほど遠い、ばたばたの中で、
あっという間に大きくなってしまった娘の後ろ姿を眺める。
もう、抱きついて来ない、飛びついてこない。
シニカルな微笑みが板についてきた娘。
最後のランドセル登校姿を見送ろうとする私を、怪訝な目で見ている。


あの、お気に入りのランドセルを探し回った無邪気な頃。
写真館にあった撮影用のランドセルでさえも、
何だか大きすぎて重そうで、ハラハラした日。
桜吹雪の中で入学式を迎えた朝、
何もかもが怒濤のような6年間に押し流されてしまい、
毎日どんな服を着て、どんな風に出かけていったのか、
全く知らないと言っていいくらい、過ぎ去っていった6年間。


仕事仕事仕事に追われ、常に先に家を出る私は、
母親としてのまなざしをいつの間にかどこかに置き忘れ、
冷たい観察者であったり、小言を言うあら探しの達人だったりして、
何一つ、娘の愛らしい細やかな成長の歩みを見届けることなく、
ここまで来てしまったような、深い深い後悔ばかりを感じる。



今日は仕事を休んで、今日ぐらいは仕事を休んで娘を見送ろう。
仕事が私に何を与えてくれたのか、達成感にはほど遠い、この2月3月。
3年間でと任された仕事が5年に及び、娘と過ごすはずの大事な時間が
根こそぎになってしまったという思いばかりが募る、この2年間。
今日ぐらいはと娘のランドセル姿を写真に収める。


大きな背中の後ろで小さくなってしまった珊瑚色のランドセル。
赤と黒の2色しかなかった時代に育った私には眩しいほどの、
コーラルピンクのランドセル。
6年間、毎日背負っていった筈の娘の姿を、
殆ど見送ることが出来なかったかーちゃんが見る、
最後のランドセル登校姿。
あっという間に遠ざかっていく姿を、カメラの中で大きくして見送る。

さくらいろのランドセル

さくらいろのランドセル

ランドセルのはるやすみ (とっておきのどうわ)

ランドセルのはるやすみ (とっておきのどうわ)