Festina Lente2

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戦前の昭和?

映画を観る前に読んでおかないといけないと、
何度もチャレンジしながらなかなか深く読み込めなかった。
話題作、『小さいおうち』。
戦前の昭和。それを知っている人は少ない。
戦前の昭和、それは両親の子供時代。
戦前の昭和、自分が生まれるよりも四半世紀前の世界。
戦争に跡形もなく壊さなければ、どれほど文化と教養の香りが、
庶民の生活が、豊かで楽しくあっただろうと・・・。


知識の上でしか知らない戦前の昭和。昭和はビフォーアフターの世界のように、
戦争で分断されている。何だか、決定的に違う世界になってしまっている。
軍国主義の世の中は否定したいけれど、大大阪の時代、
帝国大学のあった時代、文士が文士らしく、学生が学生らしく、
バンカラという言葉が活き活きしていた、そんな時代を垣間見たい気がする。
戦前の昭和? それが背景の「小さいおうち」の世界に、
どうやって入っていったらいいのか上手く感覚が保てず、
上手に本の世界に入っていけない。


どうにもこうにも、上手く入っていけない。
おそらく戦時中のことを、東北に生まれ育った両親から聞かされていたので、
そのギャップを埋めたり、共感できるところを探したりと、
構えて読んでしまっていたせいだろう。
昭和の一桁、東京という都会での暮らし、その雰囲気が、
主人公達の生活の煌びやかさ? そういったものに縁がない知識体験が、
頭の中に変な拒否反応を作るのか、上手く話題作の世界に入っていけない。


読み終わった後はなるほど、
自分の感性にしっくりくるところもあるなあとは思えたが、
それは戦時中のエピソードや会話を
どのように組み立てたのだろうという捜索じみた興味関心の方が強く、
感動とは別のところにあったような気がする。
昭和世代への自分なりのの思い入れのせいか。


映画公開前に作品世界を十分取り込むのが難しいのは、
読書に熱中などしていられないせいもあるのだが。
見たことも聞いたこともない時代に、入っていけないのは当たり前のはずだが、
それでは読書の楽しみも何もあったもんじゃない。


小さいおうち (文春文庫)

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