Festina Lente2

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パティシエとの立ち話

偶然、全く別の業界の人とお話した。何とパティシエ。
そう、みんなが憧れるお菓子の世界。
2本の手で魔法のように美しい世界を作り上げる、
夢の世界を食を演出する魔術師、パティシエ。


レストランでは表立って姿を見ることは無いが、
コース料理を締めくくる〆の一品を創るという点で
お食事、デート、その日の思い出の縁飾り、
心にいつまでも留めておきたい甘い記憶の化身、
お菓子、お菓子、お菓子。
お菓子の王様、ケーキの世界。その主(あるじ)。


今までの経験を元に、作る側から教える側に回られるのだそう。
仕事上、色々と胸に温めた計画あり、悩みあり、
暗中模索の手探りの中、営業活動をされているご様子。
組織上の悩み、これから教える側としての思い、
様々な物思いを、ちょっとした雑談の中から話して下さった。

知りたがりの、お菓子レシピ―小さなこつも、大きなポイント

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おいしい!生地―スポンジ、パウンド、シフォン…焼きっぱなしで極上に

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そう、自由自在に素材を操り、自分のイメージで作品世界を作り上げる、
様々なシチュエーションに合わせて用意されるお菓子、ケーキ、
季節、セレモニー、ギフト、プレゼント、様々な場で
人の心と舌をとろかせる重要なアイテム、
洗練された芸術作品であると同時に、作り手の自己表現、
シェフが幾皿もの料理を創り上げ、披露するのに対して、
たったの一皿で、人の心を鷲摑みにするデザートの世界。


お菓子の世界の人の悩みは、それなりに深い。
自分の店を持つ持たない、経営・資金的な問題。
自分の腕前を維持する、向上させる、技術力の問題。
自分の味を伝授する、広める、後継者作りの問題。
好きなお菓子だけを創り続けることが出来れば、それが幸せ
むろん、それが理想だろうが・・・。


技術者として生きていく時、自分を磨いていく側面と、
家庭に戻る時、一生活者として抱えている問題と、
組織人、ある社会に属して役割を果たして対価を得る部分と
どれもを満足させられる、バランスを容易に取られる
などということは、どの世界でもありえない。
仕事を持って生活するものの共通の悩みだ。


5分ほどの雑談で、仕事上の悩みや個人的な家庭のこと、
話していかれたのは、余程そのことが心にわだかまっていたのか。
心の中に溜まっていたものが、ちょっとした拍子で溢れ出てしまった、
という感じで一気に話して行かれた。


そんな話の中で、差し出された名刺を見せて頂くと、
なんとも印象的な、一目見れば忘れられないお名前である。
思わず、「いいお名前ですね。親御さんの気持ちが溢れていますね」と
声をかけた。すると、「いやあ、子供の頃は名字が嫌いで、
嫌で嫌で仕方なかったんですけれど、大人になってから知り合いに、
お前の名字はいいなあ、縁起がいいなあなんて言われるようになって」
とのお答え。名前に関しても、お子さんを持たれてから、
親御さんの自分に託した思いについて、色々考えるようになったとのこと。


そんな話をしていたら、何か思い当たることがあったのか、
急に吹っ切れた表情になり、4月から頑張ります。
何だか急にやる気が沸いてきました、と。
名前にまつわる思い出話の中で、これからの方向性に関する
ひらめきを何か掴まれたのか、
とにかく、にこやかに去っていかれた。
それは、先月の終わりのことだ。


4月半ば、職場の花水木は薄ピンクに開いている。
自分の背丈ほどの若木である、柔らかなその枝振りを見るに付け、
お菓子の作り方のチラシを置いていかれた、パティシエは
今頃どうしているかしら? と思い出す。
そう、甘いお菓子の創り手が抱く様々なもの思いを、
ほんの少し想像してみる。
そんな、今日の午後。

お菓子作りのなぜ?がわかる本

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