Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

匂いが消えた 香りも飛んだ

副鼻腔炎だと近隣の医師は言う。いつもの花粉症でしょうと。
しかし、この異臭と右の奥のつんとした痛みを
いつもとは違うと言っても軽く受け流された。
微熱や頭痛は副鼻腔炎の時もあるけれど、鼻詰まりもなく、洟も出ず、
焦げたような匂いや吸い込む時の違和感、
まるでずっと冷たい空気を吸い続けているような刺激、
この違和感を軽くいなされては、どうしようもない。


セフェム系の薬で薬疹があることを伝えてあるが、
投薬時に「薬の出しにくいい人」と何度か言われると萎える。
家人や娘、老父が「いい匂いだなあ。今日の料理」と褒めてくれるが、
たまにしかきちんと食事が作れない私へのねぎらいとお世辞だろうと思っていた。
しかし、出勤してもわざわざ豆から煎れてくれたコーヒーの香りがわからない。
今週気が付いたのは、油絵の具の匂いとドブの臭いだけだった。
さすがにおかしい。かなり強い匂いでないとわからないのか?
ある種の香りだけわからないのか? 不安は募る。


幸か不幸か本日歯科大通院日。こちらの耳鼻科にかかることにした。
折しも昨日人間ドックの結果が帰ってきたら、上顎洞炎の疑い、
口腔外科を受診せよ等と書かれている。
レントゲンが必要なら、午前中受診でなければ。
以前からそう言われていたので、迷わず職場を後にした。
幸い予定していたお客さんの方からインフルエンザでキャンセルの連絡。
渡りに舟とはこういうこと? いやいや、時間が出来てよかった。
人間ドックの検査結果を持って歯科大の耳鼻科に向かう。


駅前の喫茶店の前もコーヒーの香りがしない。
鼻も詰まっていないのに、風邪もひいていないのに、おかしい。
あの微熱と頭痛の続いた日、右足の先に強い痺れと冷感が走った日、
あの日からなんだかおかしい。
内科処方のメコバラミンとニチEネートで痺れはなくなったものの、
匂いは相変わらずわからない。日常生活の匂い、香りってこんな物だった?
そう言えばハーブ専門の雑貨屋の前を通った先週も、あまり香りががしなかった。
私は香りや匂いにはとても敏感な方だったのに。

嗅覚・味覚障害の臨床最前線 (耳鼻咽喉科診療プラクティス)

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嗅覚生理学―鼻から脳へ香りを感じるしくみ

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匂いと香りの科学

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鼻をくっつけて真正面から、顎を斜めに挙げて2方向から2枚。
シャーカステンの前の画像は素人目にもキレイだと思う。
鼻の周囲も炎症らしき物は見られない。医師もそう言う。
「検査をしましょう」静脈からアリナミン注射。
暫くしてのどの奥の方からニンニクのような匂いがもやっとしてくる。
それほど強くではないが、やや強くか? ぐらいで。
「匂いを感じる細胞は死んでいないみたいですね。血管が沢山通っている所で、
 これを試してもわからなければ、嗅覚を感じる神経が死んでいるので、
 どうしようもないのですが、治療をしてみても、すぐに治るわけではないのです」


若い女の先生はメガネの奥の目を光らせて、柔らかく優しく、でも淡々と続ける。
「急に匂いがなくなるというのは病気としてはよくあります。
 本当に突然匂いがわからなくなります。症状が出るのはいきなりなのに、
 治る時はゆっくりしか回復しません。服薬してもどれくらいで効くか、
 1,2週間なのか、半年1年なのか、とにかく長くかかります。
 ですから諦めてすぐに服薬をやめずに、長い目で見ることが必要です」


うーむ、そう来たか。更年期。あれもこれもの中で、目標ダイエットか?
いやいや、整形外科? 婦人科? 内科? 眼科? 耳鼻咽喉科
匂いがわかりませんと来たか。味がわからないよりましだ。
まだ、ごはんは美味しく食べられる。
「たいていの場合は風邪を引いて鼻が詰まって、
 気が付かないまま2ヶ月ぐらいあっという間に過ぎて、
 治療が遅れてしまうということもあります。 
 早く気が付けばそれだけ早く治療が始められて回復につながるから、
 余り落ち込まずに、治療を続けるようにしましょう。」


そうですか、全くねえ・・・。頭痛肩こり程度で済んでくれていればいいのに、
焦げ付くような異臭がした時から嫌な予感はしたけれど・・・。
「それは神経が何らかの原因で痛んで変調を来した
 前触れだったのかもしれませんね。さて、味覚と違って、
 嗅覚の場合はどの当たりで何の匂いをかいでいるのかということが
 わかっていません。ある匂いだけとうとうわからなかったり、
 ほとんど普通の状態に戻ってきたり・・・。」


まあ、体も心の一部、心も体の一部、一心同体だから、
今職場で方向性が曖昧で掴みきれない、あれもこれもやらざるを得ない状況で、
嗅ぎ分けられない現状、それがそのまま体に出たのか。
それともこれ以上刺激を受けたくない、何も聞きたくない、
晒されたくないという思いが、周囲を受け付けなくなったのか・・・。
心の状態が体にリンクするのはよくあることなので、あまり驚かないが、
急激に消えた匂いや香りは戻ってくるのだろうか。


色々言われたが、穏やかに話してもらえたので不安は強くはならなかった。
まあここでへこたれるような基礎体力ではないはずだとは思いつつ、
このオルガドロン点鼻薬、注す体勢が難しい。これがステロイドってかぁ。
本当に嗅覚を司る鼻の奥の粘膜に届いているのか?
あれ、ここで出されたメチコバールって、かかりつけ内科医が処方してくれた、
コバラミンと一緒だよね。


耳鼻科の処方カルナクリンCap25IU、このホルモン剤の効用、
内科処方のニチEネートと似ているなあ。
要は私は血液循環の悪い高脂血症や高血圧、更年期障害、末端障害・・・。
あの足の痺れは鼻に来ている? あちこちで感覚異常が起きている?
頭痛、足の痺れ、焦げた匂い、みんな繋がっている?
どっちにしろ、私の生活から匂いが消えた、香りが飛んだ。


「ストレスは厳禁ですよ、あ、お仕事・・・でしたね」
ストレス厳禁なんて軽々しく言うんじゃなかったなあと、
先生は言葉を捜すのに苦労していた。
まあ、何をストレスかと言い出したら、家の内外、どこにでもあるさ、
ストレスなんてどこにでもあるさの世界よ。
これでも昔より、いなすのは上手になったはずなのに、
一つ克服すると二つも三つも生えてくる雑草のようなストレス。
憎まれっ子世にはばかるのストレス。あーあ。


手と手を繋いで「色々」やってくる。困ったもんだ。
致命傷ではないけれど、とどめは刺さずとも嬲られている感じ。
職場に行けば、眼科の検査の呼び出しがいずれ来ますと言う。
やれやれ。まったくもう。
今度は嗅覚障害かぁ・・・。

昭和三十年代の匂い (学研新書)

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香りの科学はどこまで解明されたか―アロマテラピー・森林浴・嗜好飲料

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