Festina Lente2

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小・中学生対象 医学部オープンキャンパス

世の中にはオープンキャンパスというものがある、らしい。
私は一度も行ったことがないので知らない。
私の時代にはそういうものはなかった。(あったのかもしれないが)
受験情報雑誌、昔懐かしの『蛍雪時代』を斜め読み。
色々書いてあったのかもしれないが、ずぼらな私の記憶には何も。
高校時代、憧れの先輩に案内して貰った第一志望は叶わず、今に至る。
そのトラウマというわけではないが、子どもの娘よりも親の私が、
大学というものを覗いてみたいという気持ちが強い。
インターネットの時代とはいえ、百聞は一見に如かず。
珍しくも家人の方が情報を仕入れてきたので、渡りに船。
というわけで、驚き桃の木山椒の木、入塾体験教室ではなく、
小中学生に向けてのオープンキャンパス。それも、医学部の。


思いの外お客さんが多いと思ったら、高校生・保護者向けの説明会と抱き合わせ。
駐車場出口では医学部専門の予備校がパンフレット配布。
いきなりテンションの高い滑り出し。アンケート用紙に、その他、
もらえる種類の書類冊子の多いこと。大学案内、学部案内は勿論のこと、
昨年の推薦・一般入試の問題集、付属の看護学校の案内、
地域にどれだけ貢献しているか文献的な資料集などなど。
例えば『地域密着型地域医療教育システム 平成20年度報告書』
『ライフサイエンス研究所年報』というものから、
『温かい心と優れた医療技術を持つ医師・医学者の育成を目指して』という
内容のDVDまで頂いた。まだ資料を紐解く時間は無いが・・・。


ホルマリン漬けの組織が入った瓶がずらりと並ぶ教室の前で、
小中学生用の1時間の講義が始まる。
なんと、「がんの予防」について。
説明して下さった先生は専門の知識を、それこそ工夫されたパワーポイントで、
図柄入りのわかりやすい解説でてきぱきとされていく。
仕事の疲れが翌日に出てきて白河夜船になりそうなかーちゃんでも、
練られたプレゼンだなあと唖然。小学生でもわかるように説明、
おまけにそれが一般の大人が聞いても「うーむ」と思う、
そして耳が痛い内容ばかり。


ガンの実態、そして現在どのような治療を行っているか、
ガンにならないためにはどうすればいいか、
要点を抑えて先生は講義を進めていく。
内容的には高校生物を履修している必要があるかと思われる、
遺伝子・DNA・RNA、4種類の塩基などについても、さらりと・・・。
おそらく何度も講義をされているのだろうが、
難しいことを難しいまま話すのお偉い先生方は多いが、
難しいことを易しく話す先生は、そうそういらっしゃらない。
(過去学生だった私の経験からすれば・・・だ)


1時間の講義はあっという間に終わり、次は解剖学実習。
ガンの組織片を実際に顕微鏡で見るばかりではなく、
実際に病変組織をゴム手袋着用で触らせて貰えるという、
滅多にない機会。かーちゃんもとーちゃんも目を白黒させながら、
一緒に触らせて頂いた。ガン化した腎臓は砂ズリのように硬く、
乳がんは皮膚がよじれ黒ずみ、組織が尋常でないことを、
触感から実感することができた。



子宮嚢腫の大きく異常な組織を見て、医学部生の説明を聞く娘。
あっさりと、「おかあさん、これってブラックジャックで、
ピノコが入っていた袋のことだよね」とのたもうた。
私もそうだだったが、先人・専門家には申し訳ないが、
堅苦しい読書ではなく、漫画から得ているものは馬鹿にならない。
興味関心の入り口としては、日本の漫画はかなりのものだ。
そして、手塚治虫の影響は娘にも・・・。
ありがたいことである。




娘は一昨年ここの文化祭で、電気メスで鶏肉を焼き切る経験済。
物怖じせずに実際の組織を目視、触って確認。
かーちゃんよりも鮮やかな手つきで、顕微鏡を調節、
視野を確保して、用意されたプレパラートを興味津々見入っていた。
半ばかーちゃん唖然である。娘曰く「実験(体験)は面白いね」らしい。
赤く着色された組織片は、肺や胃。乱雑に並んだ細胞が異常を示す。
頭で知ってはいても、親子で代わる代わる顕微鏡を覗く機会など、
滅多に無いし、ある意味娘の普段見ない姿を垣間見て、
かーちゃんはびっくり、胸ドキドキ。


その後、見学コースへ参加。まずは、ドクターカー
小学生たちは中に乗り込んで見せて貰える特典にいたく満足。
一人はベッドに乗せて貰い、救急車から外に運び出される実演モデルに。
あの細身のベッドがすらりと足長のベッドに変身。
「おお」という歓声ともどよめきが保護者からも上がる。
TVでお馴染みの心電図を測る所、様々な器具の保管場所、
救急救命センターの簡単な説明と共に、哀しい話も。
この立派なドクターカー、実は本格的な出番はまだ。
実は医師も看護士もはハード面・ソフト面様々な所が不足。
宝の持ち腐れ状態であり、何とも空しい。


看護師に関しても、すぐにドクターカーに乗れるわけではなく、
救急関係の看護師は、どれくらいのキャリアを積まなければならないか説明。
何人かの女の子たちと保護者が熱心に聞き入っている。
娘はひたすら車の中を覗き込み、どこに何があるのかきょろきょろ。
そうこうしているうちに、次の見学コース。シミュレーションラボへ。
何を試行するための部屋かというと、直接の人体ではなかなかできない練習。
採血、導尿、聴診、診断的なものから施術的なものまで、様々。
様々な人形、パーツ、心臓病を判断するコンピュータ。
人工的に病気を持つ心音を作り出し、それを判断。
耳鼻科眼科の領域に至るまで実習以前の訓練を行う場所。


何人かは救急救命の基礎。胸部圧迫に挑戦。
娘は「物凄く力が要るよ」とぜーぜー言いながら、
教えて貰った通り、「アンパンマンのマーチ」に合わせて頑張る。
えーと、私は「どんぐりころころ」でも良いように聞いていたけれど。
とにかく新しい施設で実習・訓練を積んで医師・看護婦の卵は育つ。
見学しながら費用は如何ほどと思わず考えてしまう私。
世知辛いようですが、医学も教育もお金を掛けずに何もかも、
万全を期して、理想に向かって突き進むのは難しい。


最後は本日最初に講義のあったガン関連。PET検査施設の見学。
普段は入れない、(ご縁は欲しくないけれど)豪華な家具、
検査装置を備えた別棟での説明・見学。
X線放射技師という響きも今では遠い時代を思わせる。
CT・MRI、そしてPET。主流はPETとCTが合体したものらしい。
ドイツシーメンス社の機械が鎮座まします部屋、
イタリアはカッシーニの椅子がある安静室。
無論何のために安静が必要か、薬液を施設内で作るのは何故か、
われわれはちゃんと説明を受けた上で、見学して回った。


何とも充実した午後。アンケートに答えて、大学グッズ、
娘が喜ぶ文房具セットをゲット。
小・中学生向けオープンキャンパスでもこの充実。
本番受験生高校生向けはどんな内容なのか。
予備校を始め、色んな相談コーナーができていたっけ。
娘が色んなものに興味を持ってくれれば良いなあという気持ちと、
自分はとうとう本格的に医学の道に進むことはできなかった悔しさと、
青春時代の屈折した様々な物思いが去来。


だからこそ、かーちゃんととーちゃんは教育ママではなく、
可能性だけは広がっていて欲しい、娘の未来。
何も知らないで済ませて大きくなってしまうのではなく、
色んな方向に開かれていて欲しい、娘の未来。
娘同様、今のご時世については知ることが少ない親の私たち。
できる範囲で興味津々の親でなければ、親子で不安倍増。
それとも、知れば知るほど余計に不安が掻き立てられる?
いずれにせよ、楽しく有意義な今日の午後だった。
親子ともども胸に抱いた思いに温度差はあれど。


ちなみに同じ催しは9月にもあるそうだ。
興味のある方はこちらへ

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