Festina Lente2

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10歳まであと一ヶ月


本日は宮沢賢治の誕生日。


月誕生日。娘が零歳児だった頃、意識して27日に写真を撮った。
でも、この頃はそんなことはしなくなってしまった。
気が付けばはっとするのだが、月誕生日が過ぎていく。
あ、今日のこの日を撮っておくのだったと思うのだけれど、
最近は後の祭り。思い出したように忘れずにいるのは27日だから、
お菓子でも買おうか、ケーキでも買おうか。
ちょっと甘いものでも・・・。
そんな口実にされる、27日だったりする。


娘があと一ヶ月で10歳になる。10年か。
10歳になる。自分が10歳の時を思い出す。
あんまり幸福じゃなかった。
小学校時代っていい思い出が無いから。
特に、余りにも早く読書やピアノ、
一人でその辺をほっつき歩く、そういうものに目覚めてしまうと、
子供世界のモブシーンの一部にはなれない。
むろん主人公にもなれない。


どこまでも、1人きりの世界。
背伸びを早く始めてしまうと、周りの景色が頼りない。
周囲の話題に興味が持てない。
SFの中のパラレルワールドを行ったり来たりするように、
現実と非現実の間を往復する子ども時代。
尊敬できる大人、そんな者はいなかった。


いじめや、さっぱりも教え方がわからない、
へたくそで、化粧の匂いばかりの先生、
そういうものに辟易していた、かわいげの無い小学4年生。
友達付き合い以前に、3年生から4年生にかけて、
ギャングエイジのグループ争いからはみ出して、
いじめられることになったあの頃の自分を思い出すと、
娘の小学4年生、今で言う二分の一成人式の年齢はどんなもの?

臨床心理学 (第6巻第4号) 10歳のころ:世界がひらかれるとき

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臨床心理学 (第6巻第5号)対人援助職のこころの健康

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夏が終わりに近づくと、私達夫婦はダイエーホークスが優勝した時、
あの暑い暑い夏を思い出す。スーパーでガンガンに掛かっていた音楽、
大安売り、ざわめきの中を何時も大きなおなかでえっちらおっちら。
その想い出を反芻して、自分達の関係の中に子どもが現れた日を思い起こす。
夏は、その歳の夏は私が私とだけ向かい合っていた最後の夏。
それ以降、毎日の生活の中には常に娘の姿がある。
あっという間の一昔、10年が過ぎていこうとしている。


何を娘に伝えられただろう。何を娘に託す事ができただろう。
何を娘に授ける事ができただろう。
もう、後は離れて行くだけの日々が始まるというのに。
聞く所によると、10歳前後が大切な時期だと言う。
脳科学でも、脳細胞の複雑な絡みは10歳までに完成されるそう。
今までの刺激が大切で、今更慌てても遅いらしい。


体も心も、親がおよそ影響を与えずに子どもを大きくすることなど、
普通に傍において育てれば、あるわけが無い。
結局は遺伝的にも行動科学からして似て欲しくないところが似るのも、
親のせい。何とも情けない話。それほどいい手本を示せていない現況、
深く反省しても、過ぎ去った時間は戻らない。


夏が終わりに近づくと、ツクツクホウシの鳴き声が哀しい。
ミンミンゼミでもカナカナの日暮らしでも泣く、
夏の終わりを告げる泣き声のツクツクホウシが、哀しい。
でも、寿命の短い蝉と違って、私は娘の成長に責任を持ち、
付き合い続けなければならない。少なくとも、そう。
いつの間にか、どこでそんな知識を? ということを、
まだ語ってくれるけれど、そのうち何にも喋ってくれなくなったら?


超高齢出産で子どもを得ると、孫世代に風穴を開けて誰かと交わり、繋がる。
どこでもドアでは無いけれど、少なくとも若い世代を眺めるだけの、
大きな窓を開けてもらったのと同じ毎日。
食べるもの着るもの、読むもの全て娘モードに合わせて、
釣り合いを別のところで取って、ほっとしているのかも知れない。


気が付けば、それぞれの節目節目になるはずの夏を、
あっという間に通り過ぎてきてしまった。
4つなる年に徳島から埼玉へ、7つになる年に大阪へ、
行ったり着たりの中で、この間初めて質問された。
「何時になったら家族全員で暮らせるの?」
「その頃にはもう君が家を出て行く時だよ」


もう思春期前期に突入した娘が、あと一ヶ月もすれば10歳。
なんてこったい、かーちゃんしっかりしろよ。
娘は娘の人生を生きている。
私の小学生時代じゃない。
だから、ちゃんと傍にいるべき時に傍に。
あっという間にすり抜けて大人になろうとしている、
この時間、この時、今もたったこの今の瞬間も。


私は、ちゃんと向かい合っているか。
自分自身に、そして娘に。
毎日、毎日過ぎて行く時間に。

臨床心理学 Vol.9 No.3

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臨床心理学 (第5巻第3号)

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