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漫画の現場 一条ゆかり

それなりに創作現場の内輪話を描いて来た作家だから、
プライベートなことでもネタにし、笑いにし、マンガにもエッセイにもし、
逞しく創作活動を続けてきて、第一線に30年以上いる。
そういう漫画家の一人が今夜のゲスト、一条ゆかり
リアルタイムで読み続けてきた人間としては、その大家が
TVで観られるということを、喜んでいいのか悲しんでいいのか。
あんまり見たくなかったと思うのは、自分も彼女も老けたから?


年齢のことは、さて置いて、
デビュー作から知っている私としては、
思い出は小学生時代の雑誌『りぼん』に遡る。
当然親には買って貰えなくて、学校で借りて回し読み。
当時は豪華なラインナップ。弓月光山岸凉子も活躍していた。
最新作の『プライド』は途中までしか読んでいないけれど、
それ以外の作品ならば全部持っている。(もはや書庫の蜜柑箱だが)
デビュー当時からリアルタイムで読んでいる、
馴れ合いのファンだと思われても仕方の無い年齢だけれど、
仕事ということに関してみても、贔屓目ではなく、
いまだに第一線で描き続けていることが凄い、凄すぎる。


あの、『デザイナー』『こいきな奴ら』『砂の城』、
そして、娘も熱中、TVドラマ化もされた『有閑倶楽部』。
その他の小品も捨てがたいが、久しぶりに大作、連載中の『プライド』
目の付け所も、ストーリーの引っ張り具合もなかなかだ。。
『のだめ』関係も含めて、音楽漫画ブームの両輪って感じ。
でも、絵の丁寧さや迫力はやっぱり一条ゆかりだなあと、
最近の漫画の絵の雑さが苦手な私、昔からのファンはそう思ってしまう。


白亜の館の、カウンターがある部屋。
自らデザインした新居を惜しげもなくTVの前に晒し。
『プライド』のためにオペラ関係の取材でウィーンへ。
それは一条ゆかりにとっては、特別なことでも何でもないだろう。
かつて、社員旅行と称して海外旅行に行きまくり、
ニューヨークにマンションを買って住んだこともある彼女。
海外取材にためらいなどなかったに違いない。


パソコンで作画する所も見せてくれた。
目を悪くしたのをきっかけにということだが、
一流の人は、仕事道具を進化させることにも余念が無い。
年だから機械が苦手だなどとのたまうことも無い。
今や画面を自在に巨大化して細かな描写を丁寧に、
トーンも美しくあっという間に仕上げまでの工程を披露。

プライド 1 (クイーンズコミックス)

プライド 1 (クイーンズコミックス)

猫でもできる海外旅行 (ぶーけコミックス)

猫でもできる海外旅行 (ぶーけコミックス)



中3の時に貸し本屋でデビュー。このキャリアの長さ。
1968年、雑誌デビュー。『雪のセレナーデ』
作品の中の異国の景色に、小学生時代とても憧れた。
フランソワーズ・サガンの世界を知ったのも、彼女の漫画から。
お洒落で、我が強くて、欲望のためになりふりかまわず生きる、
自分に正直すぎる、そんな主人公達、登場人物のありよう。
1972年の『デザイナー』。そんな昔だったっけ。
雑誌から好きなシーンを切り抜いていて、スクラップしていたっけ。


実の母親と娘がライバルになり、競い合う。
プライドを賭け、人生を賭け、子どもも男も捨てて・・・
幸せを掴み取ろうとした時、明らかになる真実。
でも、運命はいつでも皮肉屋で、主人公に冷たい。
その影で糸を操っていたのは・・・。

デザイナー (集英社文庫(コミック版))

デザイナー (集英社文庫(コミック版))

こいきな奴ら 1 (集英社文庫(コミック版))

こいきな奴ら 1 (集英社文庫(コミック版))

かつて『プライド』にするか、『デザイナー』にするか、
悩んだというだけあって、今の作品に通じる迫力がある。
やっぱり、作者の持つ作品へのオーラ、源流って流れ続けているのね。
『デザイナー』を描いた後は明日のジョー状態で燃え尽きたという、
一条ゆかりの発言を聞くと、お子様だった当時、熱中した作品が、
作者にとっても思い入れある記念すべき作品だった事が嬉しい。


しつこいようだが、現役で描き続けるということは大変なことだ。
デビューから30年以上経っても第一線で活躍する。
これは、作家でも画家でも難しい。
普通の仕事でも30年以上同じ土俵で戦い続けることは難しい。
真剣に物事に取り組むのは大変なこと。


多分、仕事にこれほど思いいれできない自分に苛々し、
忸怩たる思いがあるから、彼女の世界、彼女の強さに憧れるのかも。
プライドをかけて、自分の世界を追求し続ける強さ。
女である前に、何であるべきか。
好きこそ物の上手なれと言うが、描ける強みは天賦のものだ。
その天賦の才能を生かすことが、生かし続けてきたことが素晴らしい。
並の人には出来ないことだ。


最近、NHKの『マンガノゲンバ』の取材が、誘導尋問が多過ぎると聞く。
確かにこの番組に限らず、イエスかノーかでしか答えられない閉じた質問、
予めシナリオがあって、その路線で話してくれるように持って行こう、
そんな雰囲気が濃厚だという批判は否めない。
自分のイメージ先行のインタビュアーも多いし、ディレクターの影も見え隠れする。
企画優先で、インタビューそのものを編集するつもりも無ければ、
インタビューという流れを真剣に追っていく根気も無くて、
必要な所だけ取捨選択して、番組に仕立て上げることを優先、
そんなやり取りが目に付いて唖然とすることもある。


実は今日の流れも、強引だなあと思わないでもなかった。
ただ、一条ゆかり本人が本人のトラウマを話しているのだから、
一読者がどうこう言うことではないなあとしか言えない。
好きなことだけやってきたというのは、謙遜の言葉。
成し遂げることの大変さを、人はどれだけ感じ取ってくれるだろうと危ぶんだ。
淡々と自分を語る余り、その反動は来ないだろうか。
そういう流れで話すように、仕組まれているのではないかと。


まあ、それを差し引いても貴重な一条ゆかりへのインタビュー。
ファンとして楽しめた深夜。
幾つになっても昔の漫画が
いや、今も描かれているものが好きよ。

恋のめまい愛の傷 (集英社文庫―コミック版)

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一条さんちのお献立て (集英社ガールズコミックス)

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