Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

再び『マディソン郡の橋』

去年も今時分、見たような気がする。そうそう、
ビデオを持っていて、いつでも観ようと思えば観られるのに、
BSで『マディソン郡の橋』。
職場の先輩に、「女の人はあの映画好きだねえ」とからかわれるけれど、
やっぱりウルウル来てしまう。私ってこの年でも単純?


「あんなかっこいい中年はおらんぞ」とひやかされるし、
クリント・イーストウッドも『ダーティー・ハリー』の頃に比べたら、
随分と枯れてしまっていても、まだまだ素敵。
雨に濡れた姿なんて、髪が無いよーと嘆きたくなるものの。
でも、「今まで君に会う為に人生があったんだ」なんていわれた日にゃあ、
くらっ来てしまいそうです。駄目ですか?(笑)


去年見た時の感想はこちら http://d.hatena.ne.jp/neimu/20081111


師走の声を聞くと、何だかあっという間に気ぜわしく。
一日の今日からは気を引き締めて「おいっちに」と
駆け足で動かなくてはならないような気が。
つくづく貧乏性だなと思うが、気持ちだけ駆け足。気持ちに掛け声。
哀しいことに、体が付いていかない。とにかく、眠い。


BSで去年この映画を見た時は、しみじみ映画の世界に入っていけたけれど、
それはまだ11月だったせい? 日にち的にはそれほどの差ではないのに。
まだロマンチックな秋で、人恋しさに浸れたから?
今年は老父のこと、老母のこと、秋口から何かとばたばた。
自分の歯の治療も一進一退、あっという間に時間が過ぎた。


両親の年齢ぐらいになると、昔のことをどんな風に思い返すのだろう。
そんな思い出に浸ることさえ笑止千万となるのか。
いつもは主人公の気持ちに浸ってしみじみするのだが、
老父が吐血して入院騒ぎのあったこの秋の事件があり、
主人公の死後、遺言書を見てあたふたする子供たち、
中年となった「兄と妹」のやりとりを見て、
残された子供の立場・・・というものを改めて考えさせられる。

マディソン郡の橋 特別版 [DVD]

マディソン郡の橋 特別版 [DVD]

マディソン郡の橋 (文春文庫)

マディソン郡の橋 (文春文庫)


親の「恋バナ」(最近の若い人はこういうらしい)を、知る。
そして、自分の父親とは違う人と熱烈恋愛、でもそれは、
まるで三日麻疹の如き情熱と期間。
母親が恋愛を持続できなかった理由は、自分たち。
そう、子供がいるから。
夫のためでもあったかもしれないけれど、
一番の大きな理由は子供、そして夫なのだろう。


自分の人生を家族の為に捧げた。
死後、残りの人生は愛する人の灰が眠る上に、自分の灰を。
「火葬なんて」と気色ばむ兄と、母の日記を見つけてショックを受ける妹が、
映画の終わりには、主人公である母の日記を読み終わって、乾杯。
実際本当にこんな風になるかどうか、わからないけれど。
遺言の遂行にあたり、大人になった子供たちはそれぞれの人生を歩んできて、
納得できる年齢になっていたということか。
母のような人生もあったのだと、その残された書付から真実思えたならいいが。


誰をどんな風に愛するか。
その迷いの中にある中年になった子供たちに、
再び人を愛するということはどういうことか、示す形になった母の人生。
妻に対しての思いを新たにする兄、離婚について考え出した妹。
何度も同じ映画を見ると、しみじみさせられる場面がその度に違う。
見る時の気分や立場によってこうも変わるのものか。
だから、好きな映画は繰り返し見るに限るのだが。


さて、今回主人公が「彼」から言われたせりふの中で気に入ったのは、
「君はシンプル(単純)じゃない」というひとこと。
農家の主婦だから、ありきたりの判で押したような日課をこなす毎日、
そういうものに埋没して生きている女性ではないと、
人間性を認める一言に、ちょっとしびれた。
「君は複雑だ」と言われるよりもずっといい感じ。


それにしても、生活に埋没して新しい服も香水もお洒落も、
何も楽しまなくなっている自分にちょっと反省。
12月だから華やかな気分に浸りたいものだが、仕事は修羅場を迎える。
年度末は追い立てられる季節。公私共々、物理的にも精神的にも。
そんな中で、しばし心の潤いになったか、『マディソン郡の橋
ロバートとフランチェスカのような恋は無いだろうけれど、ときめきは欲しい。
生活を支えてくれるような、ささやかなものでいいから。


映画俳優、女優であるクリント・イーストウッドメリル・ストリープ
張り合うことはできない。でも、その仕事振りは尊敬できる。
あれから、あの映画の公開から15年ほど経つのにまだ頑張っている。
その、生き方に引かれる。年を重ねながらも、よい仕事をしていることに。
15年、この間に伴侶を得、家庭を得て、子供を育て老いた両親と共にある。
この自分の変化を、今も変わらぬ映画の中にどう反映させていくのか。
少し、立ち止まって考える夜。

マディソン郡の橋 [英語版ルビ訳付] 講談社ルビー・ブックス

マディソン郡の橋 [英語版ルビ訳付] 講談社ルビー・ブックス

"マディソン郡の橋"の心理学