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学研『科学』と『学習』休刊

学研の『科学』と『学習』が休刊になるという。ショックだ。
小4の娘に小学校入学時からずっと購入し続けてきたのに、
来年春からの5年生と6年生はどうすればいいのか・・・。
色んな付録で実験できるのが楽しみだったのに。


思えば小学生の頃、小学館の学習雑誌を持っている子は珍しくなかったが、
学研の『科学』は別格、持っている子はそうそう居なかった。
クラスで漫画が回し読みされても、『科学』は回ってこない。
読みたければ、直接持っている子の家に遊びに行かなくてはいけない。
これはこれで、子どもの世界でもなかなか敷居が高い。
ましてや憧れの理科の実験セットを触らせて貰うとなると・・・。
そういうわけで、とうとう数々の実験セットに触れることなく大人になった。


当時、本を買って貰えるというのは恵まれた環境。
利用したことはなかったけれど、貸本屋も残っていた時代。
立ち読みをしても、本屋から叱られたことは余り無い。
『りぼん』『なかよし』『少女フレンド』『週刊マーガレット』などは、
回し読みで、もしくは立ち読み、歯医者だのに通院する際、
置いてあればめっけもの、無ければ無いで大人の雑誌も読んだ。


活字に飢えている子ども時代だった。
何故か『少年マガジン』だけは「無用の介」を読む父が買っていた。
父の雑誌、谷内六郎が表紙を描いていた『週刊新潮』も読んでいた。
一度読めば次や続き、読みたくても新しい本が家にない、
親の筑摩の文学全集は難しすぎて読めない。そのジレンマの中で、
実験器具が付録という雑誌は、毎月宝物が来るようなものだった。 


一般の学習雑誌のおまけはちゃちで、付録の製作物も紙を組み立てて作る。
カラーの印刷も今ほどの技術が無かった時代、立体的な付録は魅力的、
ましてや、ビフォーアフターの過程と結果が楽しめる実験器具は、貴重。
ゆめゆめ弟妹に触らせるどころか、同級生でも見せて貰えない、
そして、授業中の実験など、「もう知っているよ」と説明されたり、
「家でやったのと変わらないから面白くない」なんて言われた日にゃあ・・・。
何だか訳も無く悲しくなったりした小学生の頃。

鉱物・岩石・化石 (ニューワイド学研の図鑑)

鉱物・岩石・化石 (ニューワイド学研の図鑑)

地球・気象 (ニューワイド 学研の図鑑)

地球・気象 (ニューワイド 学研の図鑑)



昔々の女学校時代、科学(化学?)部だったと豪語した老母は、
私の理科教育にはとんと興味を示さず、生活を支えるためにせっせと内職、
それよりも、貯めたお金でピアノを買って習わせたかったらしくて、
幼稚園の頃からY音楽教室に通うことになったのだが、その後習ったピアノも、
結局は高校受験でやめてしまい、中途半端なまま終わった。
毎月本屋から届けられる小学館の学習雑誌と、『少年少女世界の名作文学』だけが
読書に関する外界への出入り口で、図書室さえも小学生低学年は入れない。
読書の時間、1週間に1度きり。
今から思えば、『科学』と『学習』だったら、人文系に傾くことはなかったのでは?


中学校にも理科倶楽部はなく、理科の先生は何故か授業中に
二十歳の原点』の本を持ってきて説明したりする文系人間?
高校の生物の先生は、ラテン語、学術用語で授業をし、
物理の先生は何を言っているのか、さっぱりも分からず、
地学の先生は月よりも輝く「おつむり」が眩しく、
化学の先生だけはダンディで...、だから一生懸命頑張った?
理系に進まず、ではなく、進む事を断念した高校2年の夏。


中学生はなぜか学研ではなく、かつての受験雑誌の王者、
旺文社の『○○時代』のお世話になり、とうとう実験キットとは縁がなかった。
その時の恨み辛みではないが、心残りが大きかったことは言うまでもない。
高2迄は理系を夢見ていたが、致命的な数学・物理の能力の無さ、
生物・化学は解けるのに何故・・・? 結局軟弱に文学部に流れていった私。
家人は『学研と科学』を買って貰った恵まれた人間で、
一も二もなく娘には小学1年生から買い与えることに。


娘よりも毎月の実験器具に目を輝かせていたのは、かーちゃんだったりする。
娘も、5年生の春は「鉱物標本セット」だったのにと呟いている。
(娘はお気に入りの石ころをベッドに持ち込んで一緒に寝たりする)
ショックを受けているのは家人も同様で、もしかすると学研の販売戦略変更に伴い、
大人の科学』を買うようになるかもしれない。
郷愁と遊び心と、ちょっとした感動を持つ為に、大人買いするかも。


多様化する受験に対応なんて、色んな教育(御受験)雑誌が刊行され、
ノートの取り方特集なんてやっていたみたいだけれど、(むろん立ち読み)
昔々の『中一時代』にも載っていた、目新しくも何ともない特集。
頭のいい子のノート、なんて言うけれど、そんなにワーワー騒ぐほどのもの?
最近の先生はノートの取り方指導もしない。
また、取り方指導をしても生徒は言う事を聞かない。


私達の頃の学習雑誌にも、色んな先生の板書の仕方やノートの取り方まとめ方について、
特集があった。「小学校の先生とは違う」「各教科のノートの取り方の特徴」など、
ふむふむと参考にして、素直な私!?は、色んな先生の個性を観察したものだ。
引越しして、転校するのと変わらない隣の市の中学校に進学した人間にとって、
学習雑誌の情報はネットの無かった時代、とてもありがたく貴重だった。


それだけに楽しかったのだけれど、もはや情報は戦国時代、下克上、
本から読むか、ネットから拾うか、・・・。
親や子どもに適切な情報収集能力があれば・・・、の話だけれど。
何でも鵜呑みにしか出来ない人間が、意図的な編集を丸齧りするどころか、
消化不良を起こすんじゃないだろうか。
私が心配したとて、どうにもなることではないけれど。


どちらにしても、今まで買った雑誌は我が家の保存版として、
親が大切に仕舞うことになりそう。
アイスクリームを作るセット、かわいい顕微鏡、生物観察、
貯金箱、パズル、ゲーム、様々なものが溢れている娘の部屋。
それは、哀しいことに自分が果たせなかった夢のコレクション。
しかし、当たり前のように享受している娘には、
その実験器具の一つ一つや、読んではすぐに投げ出してしまう本の、
本当の素晴らしさがどこまでわかっているものやら。
・・・生まれたときからカラーの本を見慣れている目には。
色んなものが用意されて当たり前の環境では。


色んな複雑な思いに駆られながら、夫婦揃ってがっくり来た休刊ニュース。
娘などは淡々と、「休刊になったらもう廃刊と同じだねー」とあっさりのたまう。
かーちゃんの昔の夢を潰してくれるなよ。
何でそんなに諦めがいいんだ・・・。
『科学』と『学習』カムバック!(『シェーン』のように叫ぶ・・・)
昔からあるもの、色んなものが消えていくと、自分の思い出が風化するのに
拍車が掛かるような、そんな気がするかーちゃんだよ。

ポケット版 学研の図鑑〈1〉昆虫 (学研の図鑑 (1))

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プレミアム・テルミン

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