整骨院のメンテ後に

何故か朝から『海のトリトン』の第一回の再放送を見てしまった。
朝食時TVを付けたら、たまたまそのチャンネルだっただけなのに。
何という行幸。
今まで何度も再放送見てきているけれど、
思春期の頃夢中になったこの作品に、
いまだに惹きつけられてしまう自分が怖い気もするが、
どっと疲れていた気分が子供心に戻ってアップ。

最初の放映時、我が家のTVはまだ白黒だった。
後にカラーTVでオリハルコンの剣が赤く輝くのを見て、どれだけ感動したことか。
友達はファンクラブに入っていたし、
手塚治虫の原作も読んだし、何よりも主題歌をよく歌った。
カラオケなんて無かった当時、
遠足だの修学旅行ののバスの中でアニメソングを歌うのは、
本当に楽しかったのだ。（「マジンガーZ」もよく歌ったな）
そんな思い出に浸りながらも、体はばてている。

毎日仕事に行くオトーサン、御免なさい。
慣れぬ環境に弱い私です。
ついつい、京都にかこつけて歩き過ぎました。
足底筋膜炎の足、幾らインソールのいい靴でも疲れる。
娘がキャンプに出かけて3日目。やはり寂しい。
心がちょっぴり空白です。

京の町の景色も、色々お勉強も、チャージするのはいいけれど、
もとい本体、灰色の脳細胞以前に、
痛い足の裏、ふくらはぎ、体のだるさ・・・、
7月末からのプレッシャーの掛かった出張、
脳に刺激はあるけれど、出向く体が付いていかない。
知った道ならともかく、片道2時間以上掛かると、
往復は既に一日の睡眠時間並み・・・。疲れる。

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家人宅にはワンコインで診てくれる、気心知れた整骨院。
そこがお盆でお休みになる前に、自分の体のメンテナンス、
ついでに、初めてお顔もピーリングして貰う。
ここは姉弟で経営する整骨院。ねーちゃんは鍼灸師だがお顔のお手入れも。
弟氏はソフトカイロで診てくれる、駅前診療所。
よって便利なのと安価なので、よくお世話になる。
使い過ぎて緩々になっている足首には、テーピングを施して貰った。

あっという間に夏が過ぎて行く。
心と体が「若さ」を忘れて行くように、
仕事も仕事以外のことも、自分から剥がれ落ちる速度が増した。
興奮・熱中、そういうものはなかなか持続しない。
録音した講演内容を、往復の電車の中で早送りで聴く。
何度も繰り返し重要な所を聴く。

勉強している気分にはなるが、年を取るのが早くなるような気もする。
イヤホンを付ける生活をたまにしてみると、恐ろしい。
外界の音を遮断して生活している人の多さに。
音楽？　ゲーム音？　自分の世界に没頭するのはいいけれど、外のざわめきも噂話も駅の放送も聞こえぬまま、
イヤホン生活・・・。やっぱり私にはできない。

何度も巻き戻されて、繰り返される。
早送りされ、或いは遅めに再生され、自由自在の録音。
まるで意に染まぬ人生を切り刻むがごとく。
一期一会にならぬ講演内容の再生の中に、
何度聴いても素晴らしい「内容」ではなく、
何度聴いてもここに到達するかどうか危ぶんでいる、
思うように体も気持ちも付いて行きかねる「自分」を見出す。

早送り巻き戻し再生。その連続に疲れる。
『海のトリトン』の再放送は嬉しい。
子供の頃の気持ちが蘇る。
でも、私はあの頃の私ではない。
その、何十年ものブランクを乗り越えて、
いま少し心身ともに若やぐことができるなら・・・。
オリハルコンの剣の輝きで、生きてきた時間の年数の底に溜まる
澱のような苦いものを焼き切ってしまえるなら、
断ち切ってしまえるなら、明るい気分になれるだろうか。

整骨院でメンテナンスの後、せめて楽しい夕餉をと、
買い物をする私。それは少女ではなくて主婦の顔。
幾らピーリングして貰っても、一皮むけても、
思い出を再生巻き戻ししても、心と体は再生巻き戻しはできない。
あの頃の若い心と体には戻れない。
そんな諦めと苦笑いと共に歩く、夕暮れ。

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