Festina Lente2

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旗日を知らない世代

若い人と話していると、ぎょっとすることが増えてきたのは年齢のせいだろうか。
自分の子どもとは半世紀近く年が離れているから、諦めざるを得ない部分もあるが、
常識的に考えても知っていて当然と思うことを知らない人が増えてきて、
「異なる常識」を土台に別世界に生活しているような、そんな感じがしてならない。
それが世代間の断絶、ジェネレーションギャップというものだろうか。


連休が終わってみると、当たり前のように休日を教授し、休みを満喫し、
好きなことに時間を使っておきながら、何故カレンダーに赤い印が続くのか、
全く知らない若者が多いことに愕然とした。
彼らはゴールデンウィークという特別な1週間だから休めると思っている。
祝祭日がどのように設定されているか、何の記念なのか知らない。
万世一系天皇を崇め奉った戦前に戻れとは言わないし、
マンションが増えてしまい、国旗を掲げる金具を取り付けることさえ知らない、
「旗日」という言葉さえも知らない世代が増えた今、
何を根拠に祝祭日がカレンダー上にあるのか等、説くのもおかしなことなのだが。


職場で若い人と話していると、どうやら祝日の名前が頻繁に変わったことと、
国策で連休を増やして消費を活発にするなどというばかげた制度を取り入れ、
ころころ変わる祭日が出来てしまったために、きちんと覚えられないのか、
ゆとり教育世代の弊害なのか、今時の学校教育・家庭内教育力の低下なのか、
ゴールデンウィークにどんな祝祭日があるか知らない者が殆どだった。
驚くべきことだが、本当なのだ。


天皇誕生日とかつて記憶していた昭和の日、憲法記念日、こどもの日、
そして新しく加わっているみどりの日、これがいつどこなのかよくわかっていない。
「こどもの日」さえも答えられない者もいた。唖然。
そして、連休という言葉でひとくくりに記憶しているため、
その細部には全くこだわっていないこともわかった。
とにかく休めるか休めないか、そこだけが興味関心の一点で、
何故休みが設定されているのかということに対しては、全然知らない。
我が娘をもってしても、情けないことに5月3日が何の日か即答できなかった。


ついでに職場で更に訪ねるシルバーウィーク。
夏だからゴールデンウィークで、秋だから寒くなってシルバーウィークでしょうと、
真顔で答えられた日には、愕然。ちなみにこの期間の祝祭日も答えられない。
もっとも、連休期間を9月中心に考えるのと、11月中心に考えるのと、
双方の解釈があるから決めつけることは出来ないのだが、
要は問題は、連休にどんな祝祭日があるか知らないで平気な世代が増えている、
確実に存在しているということだ。


カレンダーの祝祭日はむやみやたらと多いとは思えない。
確かに昔より増えたかもしれないが、太陰暦を中心とした暦ではなく、
あくまでも太陽暦中心の日本のカレンダー上の祝祭日ぐらい、
思想的に偏る以前の問題で国旗国歌にこだわるのではなく、
かつて「旗日」として尊重された日がどんな日なのか、
常識的に知っておいて損はないのではないか、
知っていて当たり前ではないのかと、嘆くことさえもお局様の証拠なのか。

「国民の祝日」の由来がわかる小事典 (PHP新書)

「国民の祝日」の由来がわかる小事典 (PHP新書)


博識の同僚は昨年就職したばかりの者に、講釈を垂れている。
移動祝祭日ではなく、固定されている祝祭日の背景には皇室行事が絡んでいる。
戦前の祝祭日をそのまま取り入れて作り直しているのだと。
・・・確かに戦後生まれの私でさえも、父から聞き覚えた「紀元は二六〇〇年♪」だの、
「雲にそびゆる高千穂の・・・♪」といった紀元節の歌だの、
小耳に挟んで育っている世代は数少なくなってきているだろう。
それは仕方ない。
しかし、カレンダー上の祝日を知らないで、休みだけは平然と取る。
それはどうか? 知らないで過ごしていいのか。


火力発電水力発電を教科書で習った世代、発電所やダムを社会見学や写生会、
遠足で訪れている世代である私などは、原子力がオールマイティだと思ったことはない。
原爆の記憶が直接ではなくても間接的に教育の世界ですり込まれ、
広島長崎に旅をし、直接この目で見聞きした限りは、
原子力は手放しで安全だなどと絶対に信じることが出来ない世代だ。
だから、今使っている電力はどこから得られているかということを忘れたことはない。

黒い雨 (新潮文庫)

黒い雨 (新潮文庫)


小学校3・4年の頃に読んだ『いしぶみ』の衝撃。
広島からやって来た同期が「本当に被爆した人はその事実を隠して生きている、
表だって発言したりはしないで隠している人が殆どだよ」と言ったこと。
国語の教科書の『黒い雨』、TVドラマ『夢千代日記』の胎内被曝、原爆後遺症。
チェルノブイリの悲惨な事故、漫画では『はだしのゲン』や『夕凪の町桜の国』。
私がかつてブログ以前にアマゾンの書評で取り上げた写真集『ひろしま』と、
紹介した当時よりも今まさに問題にされている、『朽ちていった命』。

ひろしま

ひろしま

朽ちていった命:被曝治療83日間の記録 (新潮文庫)

朽ちていった命:被曝治療83日間の記録 (新潮文庫)


原子力は安全だ、原発は安全だというアピールや宣伝の前に、
その危険性を意識せぬようすり込まれてきたエネルギー政策。
共通一次世代、センター試験世代、ゆとり教育世代が受けてきた教育の背景、
政策の背景に、お上から頂いたものの背景を考えずに生活する、
それに何の疑問も持たない大多数がひしめいているのを一瞬垣間見た。


何のために休みがあるのか意識せぬまま、不況の中、消費行動に走れとせっつかれる。
意味もなくものを買ったり出かけたりする。
「もったいない」を優先するリサイクルよりも、利益優先大企業優先、
結果のみ重視で文化教育を切り捨てて行った、国民を疲弊させる政策。
何か不満が出てくれば、後先無く思い付きのようにばらまかれるお金、
適当に休みを増やせば事足りる(月曜ばかり休みになるのは困るのに)、
昼夜関係なく営業する眠らぬ町こそ都会の証拠と煽り立て、
オール電化が文化的な生活だと強調し・・・。


台風の停電を経験し、断水で水を節約した思い出。蝋燭と懐中電灯を常備し、
いまだプロパンガスの地域で生活、ケータイが日常ツールに組み込まれていない、
そんな生活をしている私は、パソコンだけが仕事絡みの文明の利器。
少々時代に取り残されているようなかーちゃんと暮らす娘には、
お休みの背景が何か、話し合えるような関係を、今一度。
旗日の向こうに埋もれていった、日本の歴史をほんの少しでもかいつまんで、
話題に出来るような生活を心がけねばと、改めて思った今日。

夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)

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すぐに役立つ366日記念日事典

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