Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

サントリー山崎蒸留所見学

昨年の暮れ、ナカノシマ大学で受けたウィスキーティスティング講座。
シングルモルトウィスキーセミナー →http://d.hatena.ne.jp/neimu/20101207
受講以来、必ず行こうと決めていたその日がやって来た。
もちろん、今日は大人の遠足、夫婦で大人の社会見学。
今日の予約は「It's Whisky Time.〜ウイスキーの世界は奥深い〜」
(→サントリー山崎蒸留所



暑い夏の真昼。阪急線山崎駅着。まずは町の資料館にて情報収集。
町の歴史と概略を予習。山崎は古来から開けた交通の要衝地。
三つの川に挟まれたここは、水がいいことで知られる。
いにしえのやんごとなき人々が愛でた風光明媚な土地柄、
確か後鳥羽上皇の水無瀬離宮があったはず。
何故、「水が無い瀬」なのか、謎掛けのよう。


    
  


集合時間の13時に間に合うように、かんかん照りの旧道を歩く。
京都に足を踏み入れたはずなのに、蒸留所は大阪は島本町
阪急山崎駅からJR山崎駅経由まで、歩いて10分から15分ほど、
線路向こう、緑美しい山を背にして絵になる景色、
有名なサントリー山崎蒸留所が見えてくる。


        


懐かしいトリス君の横でしばし休憩。
周囲にはいろんなグッズや希少価値のある品々、いっぱい。
あれこれ物色したいけれど、我慢我慢。ツァーガイドが始まる。
さて、場所を移して説明を受けながら工場見学へ。


    
  


昨年暮れの講座でもじっくり説明を聞いた、あの懐かしい形、
様々な形の蒸留釜が芸術品のように並んでいる。鶴首のような優雅さ、
磨き上げられた金属の色、蒸し暑い部屋の中に漂うその微かな香りに
うっとりと酔う。もう少しゆっくりここに居たい・・・。


      
    


そして、樽詰めされた部屋に見つけたものは・・・、
娘が生まれた年の酒樽! 思わず記念写真。
忘れられない20世紀、1000年とスリーナイン、1999年の酒樽。
(我が家は9に縁があるのか、娘の誕生月は9月)


  


親となって12年目。スイカのようなおなかで過ごした、あの夏。
娘が生まれる直前の暑い夏。実はその夏の暑ささえも、
母となる喜びと不安を胸に過ごしていたせいか、余り記憶にない。
(あの年は産み月の9月になっても残暑厳しく、
 とても暑かったと家人はよく言うのだが)
そんなことを思い出しつつ、天使の分け前で自然に減っていく樽の中、
熟成して色づく琥珀色の飲み物を、薄暗い倉庫の中で見せて頂く。


  


そこに並んでいるのは5種類の樽。下の三つはいずれも容量480リットル。
バーレル・・・容量180リットル。バーボンウィスキーの原酒を育む上品な木の香りの樽。
ホッグスヘッド・・・容量230リットル。バニラのような芳香を持つ華やかな原酒を育む。
シェリーバット・・・シェリー酒の貯蔵用の樽。赤く輝く深みのある熟成香の原酒を育む。
和樽・・・北海道産のミズナラで作られた樽。伽羅の香り原酒を育む。
パンチョン・・・山崎蒸留所の多くはこの樽。すっきりした木の香りが独特の原酒を育む。


  


静かに物思わしげにずらりと並んだ樽。どうやってこの重い樽を転がして並べたのか、
寸分の狂いもなく直線に並び、積み上げられた樽の描く均整の美に驚かされる。
「熟成」の言葉に胸が熱くなる。掛けられる時間、手間暇、技術、人手、その他諸々。
この原酒が人の手に渡り、実際に飲まれるまでの工程を思うと。
丁寧に作られ守られ、一流の味を目指して努力を重ねられた原酒。
工場の技術者達は、未来を見据えてどんな思いでこの原酒を育てているのか。


    


そして、工場を出ると目に痛いほど眩しい緑の鮮やかさ。
小さな滝と、小さなプレート。そこに「山崎の水」と題した文章。



―ウィスキー作りの生命は、水です。山崎峡ののあたり一帯は、
 万葉の昔から水生野(みなせの)と呼ばれた名水の里で、
 その清流の美しさは歌に詠み継がれて来ました。
   見渡せば 山もと霞む水無瀬川 夕べは秋と何思いけむ 
        (新古今和歌集 後鳥羽上皇


 天正十年、千利休もここ山崎の地に庵を結び、
 天王山の戦で天下を平定した秀吉のために茶を点てています。
 JR山崎駅脇の妙喜庵に今も残る茶室「清庵(国宝)が、それです。
 水無瀬川流域、後鳥羽上皇離宮跡に今も守られる「離宮の水」は、
 昭和六十年、環境庁hによる全国「名水百選」に選ばれました。


 日本の文化を育んできた山紫水明の地、山崎。
 その水は、北摂山系から天王山にかけた広葉樹林に涵養され、
 乙女の滝、水無瀬の滝となって渓流を下って水無瀬川をつくり、
 あるいは地に潜って見事な孟宗の竹林を育み、里に湧きます。
 ミネラルを程よく含み、ウィスキーの仕込みに理想的。
 山崎のこの水で、日本のウィスキーは生命を吹き込まれ、
 この山峡でサントリーへと熟成していくのです。―


サントリーがいかにしてこの地を選び、この地の自然を愛し、
その恵みの水を用いてウィスキー作りに専心しているか、よくわかる。
ついでに水無瀬が元々は「水生野」だったと知り、納得。
最初の文字の方が、この地のいわれをよく伝えている。
さて、やっと本日のメインイベント、有料(僅か1枚)楽しみならが学ぶ講座。

   


工場内を見学している間にセッティングされた、机の上の素晴らしいこと。
山崎10年、12年、プレミアムソーダ、ぶっかき氷、数種類のおつまみ。
ティスティング用のグラスには線が入っていて、ロックではなく、
ワンフィンガー分、水を足す目安がわかるようになっている。
指示と説明に従い、存分に氷を用いて自分で作るハイボール
香りや味を確かめながら過ごす、至福のひととき。
(美味しいハイボールの作り方はこちらを参考に


  
  
 

転勤、引っ越し連続で夫婦共々体を壊し、お互い大小の病気をし、
服薬の副作用なのかストレスなのかわからぬまま、
出産後に掛かった副鼻腔炎はその後何度か再発。歯も悪くし、
匂いに敏感だった私の鼻は昔のように鋭くはない。
それでも、馥郁と香る熟成したウィスキーの香りは、心地よく、
琥珀色の液体は昼下がりの渇いた喉を、静かに潤してくれた。
お酒の味にふさわしいおつまみ指南まであったが、教えられるまでもなく、
的確に食べていた自分の好みに笑えた。どこまで「食いしんぼ」なんだか。


    
  


というわけで、ナッツ類・おかき類・サラミやチョコなど、
様々な脇役と共に楽しむ山崎の味に加えて、更に豪勢に味わう本日。
新たに注がれるのは、バランタインファイネストとジャックダニエル
いいのかなあ、こんなに贅沢に飲んでしまって。
と思っていると、次のグルーのために席を立つ時間に。
もっとゆっくり味わいたかったなあ・・・。
というか、また来たい。


    
  


本日は欲張りな旅程を組んでいるため、試飲ではなく有料お代わり、
優雅にテラスでお酒を楽しむ時間もない。多くの銘酒を眺めるのみ。
お土産ばっちり購入。自分が二十歳の時の樽も確認。
お酒造りの様々な道具、珍しい収集物をじっくり観ていたいが、
時間が幾らあっても足りない。丸一日のんびりここで過ごしたい。


    
  


(残念ながら、本格的なレストランは無い)ひたすらグラスを傾けて、
あれこれ頼んで飲み比べ味比べをしたい気持ちを抑え、
次の目的地へ向かい、蒸留所を後にした。


    
    


まだまだ日は高く、空は青い。
目指すは・・・アサヒビール大山崎山荘美術館