Festina Lente2

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娘の呟き

あー、お父さん転勤。転勤かあ。
(・・・毎年、予想していたことだけれど、とうとう当たり)


せっかく土日はお父さんに会えるように、
土日の活動がないクラブに入ったのになあ。
(いやあ、体育会系の吹奏楽部の練習は土日夏休み無しって、
 そこから軟弱オタク系クラブでいいって思ってたでしょ)


まあ、仕方ないか。
(そう、お父さんの仕事には口出しできないというか、
 家族の意向なんて会社には通らないから、
 君が小学生の間、関西に居てくれただけ御の字なのよ)


この生活リズムになれていたのになあ。
平日はこっちで、土日はあっちで、行ったり来たり。
もう6年間このリズムになれてしまっていたのに・・・。

(そうだねえ、かーちゃんも週末はとーちゃんの家、
 御飯作ってみんなで朝ご飯、時にはパン屋まで散歩に行って、
 焼きたてパンを買ってきて貰って、午後から出かけてって、
 主婦しているの、楽しかったなあ)


電車乗って大阪に行くこともなくなるのか。

天王寺や梅田で待ち合わせして、あちこち出かけるのは
 本当に楽しかったよね。映画や美術館、スタンプラリー、
 贅沢な外食、お茶。君は少々のデートコースでは満足できない
 女の子に育っちゃったねえ。
 彼氏が出来ても同じ事要求しちゃ駄目だよ。)


関大前に散歩してカレーを買いに行ったり、万博公園に行ったり、
すみれの湯も行けないなあ。

(関大の桜は綺麗だったねえ。しかし、食べ物以外に無いか?
 サイエンスカフェも行ったでしょ。
 万博公園に行けなくなるのは辛い。こっちからだと片道2時間。
 京都に行くのと変わらないからねえ。
 すみれの湯は・・・まあ、似たようなのは探せばあるよ)


土曜日と日曜日何しようかなあ。

(かーちゃんが引っ張り出さないと漫画ばっかり読んでいる
 超インドア派のくせに、勉強しなさい、勉強。
 買ってもやらない問題集の山、ちっとも練習しないピアノ、
 英語だって数学だって・・・)

単身赴任―大阪おやじの東京暮らし

単身赴任―大阪おやじの東京暮らし


毎日父親が家にいる、そんな家庭生活を営んできた家では、
単身赴任家庭が生まれた時から続いている娘の気持ちは、
なかなか理解しがたいかも知れないけれど、
世の中には昼夜逆転の勤務体系で、家にいるお父さんはいつも寝ている、
もしくはお母さんは仮眠取って出かけているという家もあるはず。


すれ違い家族を嘆く人も多いだろうけれど、
すれ違いだからこそ、会う時の時間は密度が濃い。
いい所を見せたいと思う時もあるけれど、思い切り駄目駄目な時もお互い。
仕事に追われている40代からのの子育ては、
20代の時のようながむしゃらな体力も、30代の時のような溜められるパワーも、
何もかも手放した後で、乏しい気力体力をスライドさせていくような、
そんな毎日がひたすら続く。責任だけ重くなる仕事。
不況でじり貧になる家計。どんどんめちゃめちゃになる健康。


とーちゃんの抱えた爆弾は、かーちゃんとーちゃんの頭を真っ白にし、
かーちゃんをやさぐれた悲観論者にしてしまった。
心の中までがささくれ立って、ともすれば、無くしてしまった
「幸せだと思っていた日々」の幻影に苛立って、現実を放り投げてしまいたくなる。
受け容れることと忘れること、許すことと忘れることとは全く別の次元だ。


医療が幾ら発達しても、心の中の波風を穏やかに鎮めることは出来ない。
経済的にも仕事の面でも何もかも諦めて一つどころに集約して、
問題が解決するような、そんな世の中ではないから、
手に入れた仕事を捨てるわけにはいかない。
たった1人しか居ない君も、たった1人で働いているとーちゃんも。
家は、ずっと単身赴任家族の、
今までどうにかこうにかやって来た家族。


梅ちゃん先生』じゃないけれど、完璧じゃないけれど、
とーちゃんかーちゃんは不器用で、
少々物覚えが悪くなってきた世代だけれど、
君はもう少し器用になって欲しいとは思っているけれど、
世の中「何とかなる」でやっていくしかないことが多すぎてね。


君はまだとーちゃんとかーちゃんの娘で、中学生でいいけれど、
仕事して家に帰って、それは大変なんだぞー。
かーちゃんは君が居ないと、家に帰ってこられないよ−。
そして、とーちゃんはとーちゃんで大変なんだぞー。
かーちゃんはかーちゃんでもっともっと大変なんだぞー。

ラ・ロシュフコー箴言集 (岩波文庫 赤510-1)

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女のおっさん箴言集(しんげんしゅう) (PHP文庫)

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