五重塔(五十のとお)
「五十の塔」と言うのだそうだ。
親が50歳の時に子供が10歳なのを、仏教の塔、
有難い塔に例えて「五重塔」と。
不惑の初産、不惑の子育てと思ってきたが、
お年よりは仏の恵みの子宝を、
年を取ってから授かる子供を「五重塔」
「五十のとお」と言って寿いだそうだ。
有難いことである。
そういう風に言って貰えれば、
周囲から浮いた、多少違和感のある、
若い世代の保護者の中にあって気後れを感じ、
時として白髪を振り乱しての場違いな育児も、
親の身にとっては、年の割には気ばかり若く、
なかなか体が付いていかない子育ての日常も、
かけがえのないあり難いものと、
周囲の目は認識してくれているのだと、心丈夫。
それにしても、娘が10歳である時期はとうに過ぎたが、
今頃、そういう言葉を知ることができたというのは、
公私共々様々なことで落ち込んでいる自分にとっては、
一つの天啓、あり難い言霊、何かのお告げなのだろう。
家族の中で健康面で不安を背負っていないのは、
唯一最も若い娘、我が家の宝、わが娘よと心頼みに思って、
一人子の健やかならんことを願って生きてきたというのに、
それが紙切れ一枚で覆される。
親にすれば、「原因不明」でも「確立の問題」でも、
何故自分の子供にそういうことが起こったのか、
訳がわからない不安と不幸で一杯一杯になる。
そんな思いを、この言葉は少しでも軽くしてくれるだろうか。
実の親からも、周囲の人々からも聞いたことが無かった、
そんな言葉を、仕事の土台を覆すような人物から聞いて、
驚きを隠せないまま、日々動揺する職場にあって、
「神の為さることはいみじきこと」だと思うばかり。
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