Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

花屑積もりて

職場の建物玄関がちょうど吹きだまりとなって、
桜の花びらが舞い込んでいる。
これが川面であれば、優雅な花筏(いかだ)が出来るのだろうが、
切なく花屑となって片隅に積もっているのが淋しい。
いつもより1週間も早く咲いてしまい、もはや葉桜になりかけ。
そんな桜の花を見上げながら、新しい1週間が始まる。


今更ながら大勢の人間を迎える入れ物、ハコモノ
建物の構造に慣れぬまま右往左往。
しかし、さすがに似た構造を知っていると覚えも早い。
それでもふとここはどこだろう、
どうして私はここにいるのだろうと、
納得できないような物思いに囚われる。


何かの間違いではないのだろうか。
どうしてここに来なければならなかったのか。
以前の転勤の時も、そういう思いはずっと残っていたのだが、
まあ、ここは仕事のモチベーションとしては上げやすい職場。
条件としてはまずまずということが、
何故ここに? どうして私が? という、
被害妄想にも似た落胆、落ち込み、幻滅を持たずに、
「違和感」の中にだけ納まっていられる分、気が楽だ。


それよりも、あれほどうんざりしていた前職場の桜を
片付けの合間に一生懸命撮り続けていたにもかかわらず、
新しい職場で咲き誇る桜たちを撮る気分にはなれなかった。
目で眺めて愛でることは愛でたけれど、違うのだ。
まだここの桜は自分の桜とは言い切れないのだという思いで、
一杯だった。どうしようもなくカメラに手が伸びなかった。


それを人は感傷というのだろう。
単なるセンチメンタリスムと思うのだろう。
それはそれで構わない。
自分の景色だと思えるようになるまで、もう少し。
満開ではなく、もう少し散りかけた桜ならば、
撮れるかも知れない。葉桜になってしまえば、
心置きなく撮れるかも知れない。
花ではなく。

サクラ・さくら・桜 (ブティック・ムックno.992)

サクラ・さくら・桜 (ブティック・ムックno.992)

桜の森の満開の下 (講談社文芸文庫)

桜の森の満開の下 (講談社文芸文庫)