Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

歴史か魔法か

昨日金曜日、仕事からTime Outして時間休を取った。
精神的にはボロボロだったので、その場を離れないと・・・。
体中が痛いのは危険信号。転勤後、鞭打ち事故の頃と変わらない
頸部・背部・腹部・腰部・膝・足首むろん頭痛で、難儀した状態。
登校拒否の子供の気持ちが嫌と言うほどわかる、体全体がイヤイヤ状態。


痛みの裏にあるのは怒り、本質的に怒りは2次感情。
怒りの大元は、信頼関係を根こそぎにされた、この所の仕事関係。
大きく傷ついた自尊心。孤独感。虚しさ。
怒りをコントロールするのは難しい。
癒しの元だった無邪気な幼児を脱皮しつつある娘は、
癒しと表裏一体の、災いの種のように問題行動を起こす。
問題の規模は小さいものの、何かとますます不安。


また、タイミングよく、『ちりとてちん』では、
若狭こと喜代美に失恋したうえ、師匠である父親を亡くし、
草若の名前を実力では継げないと、草々に劣等感を抱いて、
完全に負け犬状態の小草若。弟弟子だが小草若を見守ってきた四草は、
「今度こそ本当に(小草若)が死んでしまう」と泣いて心配。
頑張れがプレッシャー。
良かれと思ってする事も、プレッシャー。


ドラマを見ながら、現実の煩わしさが火を噴くような感じの週末。
コントロールしきれない痛みを抱え、苛々は続く。
こんな時だから、わずか2時間でも時間休を取ってタイムアウト
金曜日の映画は、今日で終わりの『エリザベス・ゴールデン・エイジ』

エリザベス:ゴールデン・エイジ (ソフトバンク文庫)

エリザベス:ゴールデン・エイジ (ソフトバンク文庫)

映画「エリザベス ゴールデン・エイジ」オリジナル・サウンドトラック

映画「エリザベス ゴールデン・エイジ」オリジナル・サウンドトラック


私の世代は、結構歴史に強い。漫画に熱中した人間は特に。
世界史を必修にするかどうかなんて馬鹿馬鹿しい論議以前に、
日本史も世界史も、物理化学生物地学、全て必修の世代だ。
むろん古文漢文だって当たり前。高校進学受験勉強とは
そういうものだった時代。選択以前に学ぶ事が当たり前だった世代。
ハードな受験生にとって、歴史はロマンチックな科目で息抜きに等しい。
ストーリー仕立てにできず、無意味な単語の暗記に走る奴は、
冷たい白い目で見られたものだ。


漫画は池田理代子ベルサイユの薔薇』でフランス革命はばっちり。
木原敏江『あーら、わが君』で新鮮組、幕末・明治維新は勿論。
山本鈴美香『7つの黄金郷(エルドラド)』や、
青池保子『七つの海七つの空』『鷹(エル・アルコン)』で
スペインとイギリスの海戦・確執は、ハードロマンとして刷り込み。
少女マンガの世界は、知的好奇心を満たす歴史漫画も多い。

七つの海七つの空

七つの海七つの空

そういう意味では今回の『エリザベス』は、
生身の女性として生きられないジレンマを描く事に集中していたので、
歴史的な政治劇としての迫力に欠けたと言わざるを得ない。
女性としての当たり前の生活が許されない場面では、強く感情移入できる。
石女(うまずめ)売女(ばいた)という罵声にも、胸が痛んだ。
しかし、しかしだ・・・。


肝心の海戦、古式にのっとった融通の利かない巨大な軍艦、
スペインの財政破綻の元凶、無敵艦隊アルマダに対する、
キャプテン・ドレーク率いる小型で小回りの効く海賊船の活躍が、
焼き討ち船のシーンだけとは・・・。がっかり。
神がかり的な女王と、大義名分に走った斜陽の王の対比のみ。
これには満足できなかった。
エリザベスのファッションショーだけは、見ものだったが。


翌日娘と家人と共に、吹き替え版で『魔法にかけられて
これは、文句なしに面白くて満足した。封切り直後なので、
ネタばれし過ぎると申し訳ない。字幕でもう一度見たいくらい面白い。
ナルニア国物語』よりも遥かに、ディズニーらしい映画。
ディズニーがディズニーたる所以、面目躍如、
従来のお姫様ファンタジーのいいとこ取り、
換骨奪胎が見事に成功している、アニメと実写の両刀遣い。
かえってアニメがイマイチなだけに、実写が美男美女に見える。


『黄金の羅針盤』でもそうだが、映画や舞台の鉄則、
子供と動物には勝てない。そう、そこにお姫様が付いて来る。
結構、最強路線。毒林檎に舞踏会、ミュージカル仕立て、
ダンスシーン、ラブロマンス、すれ違う恋人たち。
ブコメの王道を行ってましたねえ。
気分転換したい方にはお勧めです。『魔法にかけられて


胸が痛くなるような台詞は、「あなたは自分の事が好き?」というもの。
自分で自分の事が好きかと言われたら、胸を張って「はい」と言えない
大人に対して、ぐさりと来る一言。
デートって何? どんなもの? 運命の人って?
人を幸せにする魔法が、子供のみならず
大人にもちょっぴり魔法をかけてくれる、そんな映画。


ピザ屋のシーンでは、『月の輝く夜に』で使われていた音楽が
さりげなく流れているあたり、上手い演出。
結婚するはずの相手が、「輝く月の魔法」で入れ替わる、
かのストーリーを連想させてくれますからね。
あちこちにディズニー映画の薀蓄が隠されている、
魔法にかけられて』の前売り券に付いていた、
毒林檎ストラップも楽しい。触って楽しいストレス解消林檎。
柔らかくて、ぷにょぷにょ。赤い林檎ストラップ。
それを白い書類鞄につけて、肩凝りで目をしょぼしょぼさせながら、
寝不足で電車に乗っているのは、私です。


ささやかに別世界にトリップ。お手軽映画でほんの一瞬、
憂さを忘れて過ごす。歴史でもいい、魔法でもいい、
この体の痛み、気鬱から救ってくれるものであれば。
しばし、現実を忘れさせてくれるものであれば・・・。
赤い毒林檎が、手術用の麻酔薬のように一瞬で痛みを忘れさせてくれる、
そんな優れものだったらすぐ齧りたい、そんなふうにさえ思う私です。

魔法にかけられて (竹書房文庫)

魔法にかけられて (竹書房文庫)