Festina Lente2

Festina Lente(ゆっくりいそげ)から移行しました

知命+1歳

昔は年を取るという事は大きくなること、強くなること、賢くなること。
そんな風に思っていたのだが、何の何の。
何故子供の頃は、背が高いだけで立派に思え、
30以上はみんなおじさんおばさん、50以上はおじいさんおばあさん。
訳もなく年上を尊敬したくなるような、そんな気持ちを抱いていた。
だって、一つ上二つ上の先輩がとてつもなく大人に見え、
高校生の時は大学生は別世界の人、そんな風に思えていたのに・・・。


仕事に就いてからだ。年を重ねても? 自分より十も二十も年上でも?
こんな世界があってもいいものかと愕然としたのは。
長く生きていれば智恵も経験も重ねて大人になるのは当たり前、
普段から研鑽を積んで、学問や研究、指導や教育、人事に携われば、
人格的にも練れて、素晴らしい者になっていくのだろうなどと、
何故若い頃は無条件に信じていたのか。
本当に笑える、無知で人を信じ易かった若い頃。


よく言えば理想主義で、悪く言えば世間知らずのお子様。
悪意や妬み嫉みも、自分に非がなければいつかはわかってもらえる、
理解し合える、妥協や譲歩で仕事や世間を乗り切っていける、
自己主張で自分自身を表現できるなどと思っていた。
あの青臭い純真さそのものが、世間から見れば毒薬のように疎ましい、
そういう時期、年齢、存在そのものだったろうに。


あれから何十年も過ぎて、早世・夭折した偉人・賢人・有名人、
歴史上の人物よりも長生きしてみれば、世間は灰汁の中に浮島、
有象無象の汚濁の海の上の氷山の一角にのみ、
かろうじて息をつける場所がある。そんな様相を呈している。
心の中の「ともし火」だった娘の成長も、思春期を迎え、
日々子離れしていく毎日。それが正しい成長の仕方、
しっかり子育てした証しだと言われればそれまでだが、
心寂しいことが増え、仕事ではやるせない事が続く。



命令されて動くだけの兵隊、作戦の全体像を知らされぬまま、
目の前のことにだけ立ち向かっていればいい日々が懐かしい。
それで責任を果たしたとほっと一息つけた頃が。
兵隊でいるうちに年を取り、気が付けばトカゲの尻尾。
昔の人は偉かったな。「鶏口となるも牛後となるなかれ」
牛後ならば何も考えなくて済む。


与えられた役職はトカゲの尻尾。隙間仕事。
誰もしたがらない押し付け合いの中で、引き受けざるを得なかった仕事。
だから価値を認めてもらいにくい仕事。
いったんことが起これば矢面に立たされると、人が集まらない部署。
モチベーションを維持し続けること、業務内容を向上させること、
それはとても難しい。


世間でいう「やりがい」や達成感をどこに求めればいいのか。
とても難しい。
満足できないから悪い、諦めが悪い、理想が高いと、
切り捨てられていくものの大きさ。
それ以外に追われているから、誰もしない代わりに
引き受けざるを得ないことの背景の広大さに疲れる。


見て見ぬ振り、感じずに済む冷徹さと鈍さ、
加減はいい加減と、脱兎の如く現場から遠ざかる逃げ足の速さ、
そういうものが羨ましく思える。
物分り男いい同僚は呟く。「やればやったで目立つから、
やり過ぎないようにしないとね」出る杭は打たれる世界。
出るのは当たり前と出ずっぱりでいるほど若くない。
気力や体力が付いていかないと感じることが増えてきた。


30代前半で入院していた頃、今の私の年齢の人は店を持っていて、
「もう一旗上げて、一踏ん張りしないと」と夢を語っていた。
今の私に語れる夢があるか?
苦い思いばかりが広がる。


そんな今日、保険やが娘に持ってきたお土産。
誰も祝ってくれない私のバースデーケーキ代わりになった。
桜の味がほんのりする砂糖が掛かっていて美味しいのに、
娘は「こんな味、嫌だ」と食べないバームクーヘン。
私一人で食べている。寂しい誕生日。
このバームクーヘンはその名も「以心伝心バーム」
凄いネーミング。季節限定ものだろう。
お店は こちら→
美味しそうな写真は こちらで→


一緒に食べてくれる人もなく、たった一人で以心伝心、
・・・できるわけ無い寂しい誕生日。
(ちなみにエリザベス女王と同じ誕生日らしいので)

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