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スティーブ・マックイーン ラスト・イヤーズ

先週金曜日に新しい読書用眼鏡を買った。
(何のことは無い、「老眼鏡第一号」をどこかに置き忘れて、
やむを得ず、新しいものを買わざるを得なかったのだ)
新しいものを下ろす時、月初めから使うのは気持ちがいい。
しかし、全く忙しい一日だった。
せっかくの新しい眼鏡、お披露目一日目だったのに。
予定外の仕事がどんどん入った。


おまけにサブで動いている人たちの仕事がかち合って、
日程と場所の調整を、残りの人で大わらわという事態に。
(一番年長者が相手と場所の確認も取らず、
書類作成して出してしまったので、そのフォローにみんな走り回った)
ほっと一息、やっと帰ろうとすると・・・視界がおかしい。
読書用眼鏡を掛けたままだったので、運転ができない。
再び部屋に忘れた眼鏡を取りに部屋に戻り・・・。
行ったりきたり、どたばたじたばた。


・・・お陰で、娘の水泳のお迎えに行く時間に遅れ、
ガソスタでは給油トラブルがあり、図書館で本を借りようとすると・・・
貸し出しカードを忘れていて、身分証を提示を求められ不愉快だった。
これだけしょっちゅう借りに来ていて顔見知りなのに、身分証がいるとは。
杓子定規にも程がある。


帰宅し、食事の用意をして食べ終わると21時過ぎ。
BSではマックイーンの没後30周年記念番組。
当初見る予定ではなかったが、思い直してTVの前に陣取った。
初めて知る彼の過去を、観たこともない初老の女性が語る。
彼の妻にしては随分若い・・・それだけ年が離れていたということか。


ネグレクト家庭で育った不幸な生い立ち、母を捨てた父、自分を捨てた母。
親戚の家で農業を手伝いながら成長。しかし、荒れた心は生活を蝕んだ。
少年院から軍隊、職を転々、野心は満々。
その負けじ魂が、アメリカン・ドリームを創り上げた。
そしてあとは世の人が知る俳優の道をまっしぐら。

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知らなかった。マックイーンって50歳で亡くなったのか。
信長みたいだね。人生50年って。
(え、わたしは彼より長生きしちゃったんだ)
彼の死を知った時、私は大学生だったのに。
母はジョッシュ・ランダルが亡くなったなんて言っていた。

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荒野の七人、大脱走、タワーリングインフェルノ、パピヨン
アクションシーンがあっても無くても、マックイーンはかっこ良かった。
ポール・ニューマンを目指して頑張っていた彼。
ユル・ブリンナーの演技を凌いで目立った彼、
群像劇で目立たないのは嫌だと現場を脱走、結局監督が彼のために作った、
最後のバイクでの逃走シーンは映画史上有名な場面となった。
大脱走』の裏話に見え隠れする、彼の自負とコンプレックス。


その彼が、抱えていた様々な悩み。
たとえば『民衆の敵』は興行上の理由からお蔵入り。
共演者や演技が良くても、出資者の反対があれば作品は日の目を見ない。
興行主の意向に反する作品を創り上げても商業ベースには載せられない。
仕事上での憂さを晴らすように、危険な気晴らしと趣味。
レースにスピードに熱狂し、車を走らせ飛行機で空を駆け回る。

民衆の敵 [DVD] FRT-145

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美人モデルと恋愛し、最終的には1年以上も格納庫に寝泊りして
終(つい)の棲家となるべく生活の場としての牧場を探し・・・。
そんな彼の晩年の髭面姿に驚嘆。
まるで若かりし頃の面影は無く、殉教者のような別人の姿。
この頃、人を寄せ付けなかった彼は友人を作り、教会に通うようになる。
そして、自分にできる範囲で誰かを助けたいと思うように。


役者として上り詰め、アクションスターではなく、演技派として、
パピヨン』ではダスティン・ホフマンを静かな競演。
『トム・ホーン』を演じることで、自分の人生と重ね合わせた。
様々な人々と話し、アイデアを録音し、45時間分も記録を残した。
彼の熱意・情熱を注いだ時間、限られた50年に向かって練られた濃密な時間。



低予算で作ることはできない映画。通常の2倍もある脚本。
初稿3時間の映画。脚本を書き換え、当初の予定の後半から物語が始まる。
主人公の晩年の心の動きを描き出すことに専念。
余分なもの、描きたくても予算の面で無理な面をそぎ落として、
自分の生い立ちと似ているトム・ホーンを描き出すことに執着した。

トム・ホーン [DVD]

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砂漠で寝泊まりする夫を撮り続けた妻、バーバラ。
愛犬と妻とキャンピングカーで生活しながら、自然を体感し、
撮影に臨んだマックイーン。髭だらけの顔を撮影のため、
剃り落としてみれば、顔に刻まれた年月、キャリア、重み、威厳。
彼の人生そのもの。2年以上準備してきた作品へのこだわり。


ジェロニモと同じように捕まり、死を受け入れるラスト。
絞首刑のシーン。
荒野の七人で共演したジェームズ・コバーンが、絶賛した作品。
「彼は大人になって、肩の力が抜け、いい演技ができるようになった」と。
(『荒野の七人』でのマックイーンは負けん気一杯の若者だったわけか)

ハンター [DVD]

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遺作となった作品『ハンター』の撮影中に、特別な出来事。
挫折・栄光、全てを経験した彼が「若者のために」と
高校生新聞のインタビューに答えた。
しかし、撮影中から体は不調だった。中皮腫の宣告。
治る見込みの無いガンを知ってその後、彼は愛する人と生きようとする。
付き合い初めて2年半のバーバラと結婚。
残された時間は貴重だったに違いない。
幸福であるべきの新婚生活は、
闘病生活に取って代わった。

ブリット スペシャル・エディション [DVD]

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「神が病気を治してくれなくてもかまわない。
どこへ行くかわかっているから」そう言いながらも、
アメリカ国内では許されない治療を受けるために、
一縷の望みを託してメキシコへ行ったマックイーン。
帰国した彼のベッドサイドには弾丸の入った拳銃。
痛みに耐えかねて苦しんでいた彼。


1980年11月7日、午前3時50分、術後回復することなく、
彼は旅立った。50歳。早すぎる、若すぎる死。
遺灰は彼の愛した飛行機で太平洋に撒かれた。
遺言により遺産の一部は、ボーイズ・リパブリック少年院に贈られた。


アイダホ州ケッチャムにある「ラストチャンス牧場」。
楽しみにしていた自宅の完成を見ることなく逝った彼。
彼と共に表舞台から去っていたその妻が、近年出した写真集。
『ザ・ラスト・マイル』は彼に捧げるラブ・ストーリーとして出版したのだそう。


今日、心から見て良かったドキュメンタリー。
スティーブ・マックイーン没後30周年企画番組。
スティーブ・マックイーン ラスト イヤーズ」
素晴らしき名優のどたばたじたばた、素晴らしき一生を垣間見た。

THE LAST MILE (ザ・ラスト・マイル) 日本語版

THE LAST MILE (ザ・ラスト・マイル) 日本語版